「ねぇねぇ、アリムラさん。僕のこと好きですか?」
「・・・・・・どう・・・かな・・・」
「僕はアリムラさんのこと大好きですvv」
「うん・・・ありがとう・・・・・・」

出会って、まだほんの数週間。
肯定の言葉を期待するって方が図々しいというものだ。
だから、答えは急がない。
今は、拒絶されないだけで十分すぎるくらいだから。
自分の想いに気づけただけでも嬉しいから。
こんな自分でも、心の底から「愛している」と伝えられる存在に出会えたことだけで幸せだから。

「今はまだ・・・自分の気持ちは分からないけど、でも・・・いつか、君がくれる気持ちにちゃんとこたえるからね」

それが肯定か否定かはわからないけれど、と言って、少し照れくさそうに笑うあの人をどうしようもなく愛しいと思ってしまうあたり、もう自分は重症らしい。


僕が与える気持ちに、一生懸命に向き合おうとしてくれるあなたの気持ちが嬉しいから、今は一方通 行で十分なんだよ







「人を愛するって・・・・・・どういうこと?」

苦しげに問うてくる瞳が痛い。

「アリシラ・・・・・・知ってるなら教えて・・・?」
「それ・・・は・・・・・・」

この人が人を愛せない理由は知っている。
だからこそ、自分の気持ちを押し付けたりしないし、この人の答えを待とうと思った。
傷つけたくないし、泣かせたくないから。
だけど・・・・・・・・・

「正直、僕にもよく分かりません・・・・・・」

守りたいと思う、傍にいたいと思う。
他の何をさしおいてでも、目の前のこの存在だけは手放したくなくて、きっと、この気持ちが人を愛する気持ちなんだろうと思っていたけれど・・・

「でも、これだけは言えるよ」

はっきりと、あの人の目を見て。

「あなたの傍にいたい。あなたにも、僕の傍にいてほしい。あなたに、僕のことだけを見つめていてほしい。これが、今の僕の気持ち。あなたの持つ呪いも宿命の重さも、全部受け入れる。あなたのためなら、どんなことだってする。なによりも、アリムラさんには、ずっと笑っててほしいんだ・・・」
「・・・・・・・・・」
「僕は、きっとこういう気持ちが、『アイシテル』だと思うんだけどな・・・」

それは本当。
人によって、「愛」のカタチなんて様々だろうけど、僕にとっての一番の「アイシテル」は、この人の笑顔を守ることだから。
なのに、目の前のこの人は、さらに苦しそうに表情を歪めて。
まるで、今にも泣き出しそうなくらいに。

「もし・・・それが人を愛するという気持ちの答えなら・・・・・・僕には、君を愛することはできない・・・」
「・・・・・・・・・」
「愛せない・・・よ・・・・・・」

明確な否定の言葉。
まるで金縛りにでもあったみたいに、体が動かない。
声も出ないし、意識しなければ呼吸を忘れてしまいそうになる。
何か言わなくてはいけないのに。
こんなにも苦しそうなこの人を、なんとか助けてあげなくちゃいけないのに。


アリムラさん・・・・・・


「君のこと・・・いっそ嫌いになれたら楽なのに・・・苦しまなくていいのに・・・・・・」
「・・・・・・・・・アリ・・・ムラさん・・・?」
「嫌いになれないから・・・苦しい・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「この紋章の呪いさえなければ、きっと・・・・・・きっと・・・」

本当に苦しそうな、絞り出すような声。
アリムラさん・・・苦しまないで・・・悲しまないで・・・・・・
あなたの笑顔のためなら、僕はどんなことだってするんだから。
それがあなたのためになるというのなら、僕自身の苦しみなんて・・・・・・

「アリムラさん・・・別にいいんです、それで・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「僕もやめますから。お互いに苦しいだけの想いなら、いっそ僕も捨てます」
「アリシラ・・・・・・・・・?」
「ほんの少しの間だったけど、あなたのこと愛してるって思えただけで幸せだったよ・・・ありがとう・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「でも・・・・・・もう、さよならだよ・・・」

背後から聞こえてくる声を振り切って、走り去る。
頭の中で、いろいろな考えや思いが交錯して、もう何がなんだか分からない。
ただ一つはっきりしているのは、今僕が泣いているということ。
ほんとのほんとに好きなんだよ?
苦しいから、この気持ちを捨てるなんて嘘。
本当は、どんなに苦しくても苦しくても捨てることなんかできない、忘れられない。
だけどもう・・・・・・終わりなんだ・・・






「なぁ・・・アリシラの奴どうしたんだ?」
「ここ数日、やけに大人しいな」
「それがねぇ・・・どーもアリムラさんにフラれちゃったみたいなのよね〜」

すっかり抜け殻になっている軍主を心配したのか、アリシラの部屋の前には、わらわらと人だかりができていた。
このところ、アリシラは珍しくも執務をサボらず行っている。
とはいえ、いつもの覇気がまったく感じられず、今戦争が起これば、間違いなく同盟軍は陥落するであろうと思われるほど、ダメ人間になりきっていた。

「ふられたねぇ・・・あのアリムラがアリシラをか?」
「何か怒らせるようなことでもしたんじゃないかとは思うんだけど・・・あの子、何も話してくれないのよねぇ・・・」

閉ざされたままのアリシラの部屋の扉の前で、ビクトールとナナミが、ぶつぶつと会話をしている。
部屋の中からは、一切の物音もしない。

「あのアリムラがアリシラをふるとは、ちょっと考えづらいがなぁ・・・」
「そう?」
「ずいぶん、アリシラのことかわいがってたの、お前だって知ってるだろ?」
「でも、あれは弟みたいな感じでじゃないの〜?」
「それは、どうだかな・・・」

ビクトールは意味ありげな笑みを浮かべていた。

「これでも俺は、お前らよりは、あいつとの付き合い長いからな・・・」






「坊ちゃん・・・いったいどうなさったのですか?」
「・・・・・・なんでもないよ・・・」
「しかし・・・ここ数日おかしいですよ?どこか具合でも悪いとか・・・」
「そんなんじゃない・・・・・・」

トランの自宅に戻ってきて、はや1週間。
帰ってきてからというもの、様子のおかしい主人を心配してかグレミオはしきりに心配げに声をかけるのだが、当のアリムラは、てんで上の空。
いつも適当な返事をかえすだけで、何を思い悩んでいるのかさえ聞かせてくれない。
今回も、ぼんやりと窓の外を眺めていたかと思えば、グレミオの問いに軽く首を振り曖昧に答えるだけで、自室へと戻ってしまった。
グレミオは、必死に思い当たるかぎりのことを考えてみるのだが、まったく分からない。
第一、あれだけふさぎこむこと自体、ここしばらくにかぎっては珍しいことなのだ。
トランを旅立って以来、あまり明るい表情をアリムラは見せなかったが、あの少年に会って変わった。
人を避けるようにして生きていたアリムラも、少しずつではあるが、かつての彼の姿に戻りつつある。
ようやく、彼本来の明るい笑顔が戻ってきていたのだ。

「坊ちゃん・・・このグレミオが何をさしおいてでも、お救いしてみせます!!」

使命感に熱く燃える青年一人。
しかし、それが空回りするのも時間の問題なのだろう・・・






「坊ちゃ〜ん!!お客様ですよ〜!!!」

階下から響いてくる間延びした声。
一人考えにふけっていたアリムラは、のろのろとした動きで振り返り部屋を出て行く。
今は人に会う気分じゃないと思いながらも、あれだけ大声で呼ばれれば、居留守を使うわけにもいかないだろう。
ゆっくりと重い足取りで階段をおりていくと、聞き覚えのある大声が玄関の方から聞こえてきた。

「・・・・・・・・・?ビクトール・・・?」
「よぉっ!久しぶりだな、アリムラ!!」
「う・・・ん・・・・・・久しぶり・・・今日は一人なの?珍しいね」
「なんだよ、俺が一人でお前に会いにきちゃいけねぇみたいな言い草だな」
「そういうんじゃないよ・・・会いにきてくれるのは嬉しいんだけど・・・・・・いつもならフリックあたりがいっしょにいるはず・・・」
「お前、アリシラと何があった?」

話の腰をおるように、ビクトールは無精髭の顔をアリムラに近づける。

「え・・・・・・?」
「そこでフリックの名が出てくる方がおかしい」
「どうして?」
「確かに俺もフリックもここに来てたが、それより先に思い当たるのは、まずアリシラなはずだ」
「・・・・・・・・・」
「あれだけ大騒ぎして迎えにくるのは、いつだってあいつが首謀者だってことくらい、お前分かってるだろ?俺たちは、単に軍主様の護衛のためについてきてたってことも」
「それはそうだけど・・・・・・」

アリムラは、しばらくうつむいて黙り込み、もう一度顔をあげた。

「せっかく来てくれたんだから、あがっていってよ。こんなところで立ち話ってのも、なんだから。アリシラとのことも・・・ちゃんと話すから・・・・・・」

グレミオに、ビクトールを中へ通すように伝え、アリムラは階段をあがっていく。
困ったように頭をかくビクトールに、グレミオは興奮気味に詰め寄った。

「ビクトールさん!まさか・・・まさか坊ちゃんがアリシラくんとケンカでもしたと!?」
「ケンカっていうより・・・多分痴話げんかの類だろ、あれは」
「痴話・・・・・・っ・・・まさか坊ちゃんとアリシラくんが、そういう仲だと・・・」
「はぁ?お前、今更何言ってんだよ。城の方じゃ、アリシラの奴、アリムラにべったりだぞ?」
「・・・・・・・・・最近坊ちゃんの様子がおかしかったのは、恋煩いだったんですね!?」
「どーでもいいが、お前・・・・・・年のわりにじじくさいこと言うよな・・・」






「アリシラとは・・・もう会わないから」
「はぁ・・・・・・」
「・・・会わないっていうより・・・・・・もう会えないから・・・そうしたのは、他でもない僕だから・・・」
「・・・・・・・・・」

ビクトールは、相変わらず困ったように言葉を探している。
アリムラとアリシラとの間に何かがあったのは明白だが、2人ともそれが何なのかはっきり話そうとはしない。
むしろ、その話題に触れることを避けている。

「なぁ、アリムラ・・・お前アリシラのこと嫌ってるのか?」
「っ・・・・・・ちが・・・」

ビクトールの言葉に、アリムラが過剰なほどに反応する。
苦しげな表情で即座に否定の言葉。

「なら、なんで会えないんだよ」
「それ・・・は・・・・・・だって・・・」

うつむき、また黙り込んでしまったアリムラを見て、弱り果てた様子のビクトールが言葉を選びながら話し始めた。

「あとから後悔しても遅いってのは・・・お前よく知ってるはずだろう?」
「・・・・・・・・・」
「まぁ、お前がアリシラに会いたがらないのは、その紋章のせいだってのは俺にでも分かるさ。アリシラが、ソウルイーターに喰われちまうのを危惧してるんだろ?でもな・・・その紋章がなくとも、死ぬ 奴は死ぬ」
「・・・・・・・・・」
「アリシラは、仮にも一軍の将だ。まして、同盟領は、今戦争が激化の一途を辿ってる。戦の中でアリシラが死ぬ ことがあっても不思議じゃない。もしそうなったとき、お前は後悔しないと言い切れるか?」
「・・・・・・それ・・・は・・・・・・」
「自分が傍にいてやれば、と思わないと言い切れるか?お前のことだから、後の後まで引きずりまくるだろう?」
「・・・・・・・・・」
「自分にとって大切な人間がいなくなってから・・・死んじまってからじゃ、何もかも遅いんだ。それは、お前自身が一番よく分かってるはずだろ?」
「・・・・・・うん・・・」
「それにフリックを見てみろ。愛した女に先立たれて、その影を追って苦しんでる。あいつにとっては、自分自身が一番許せない存在なんだ。あいつが自分の中のオデッサの笑顔に苦しんでいるのは、お前も知ってることだよな」

答える代わりに、こくりと頷く。
それを確認して、ビクトールは、ひとつ溜息をついた。

「あいつは、その苦しみを受け入れるだけの度量も心の強さもある。お前はどうだ?自分の心の強さに自信が持てるか?」
「・・・・・・・・・」
「もう一度よく考えてみろ。お前自身の本当の気持ちに、ちゃんと向き合え」

それだけ言って、ビクトールは部屋を出て行く。
静かに閉められた扉を見つめ、アリムラは大きく息をついた。

「紋章があってもなくても・・・死ぬ人は死ぬ・・・・・・」






「お疲れ様です、アリシラ殿。本日は、ここまでにしておきましょう」
「うん・・・・・・」
「明日には軍事予算会議があります。連日の執務でお疲れかとは思いますが・・・」
「分かってる。ちゃんと出席するよ・・・」

挨拶もそこそこに、アリシラは執務室にシュウを残して部屋へ戻った。
ふらふらと廊下を歩き、エレベーターのボタンを押そうとして、指を止める。

「急いで戻る必要なんかないんだっけ・・・・・・」

もう部屋で帰りを待っていてくれる人はいないのだから。
エレベーター横の階段へ足をはこぶ。
ゆっくりと階段をのぼりながら、なぜか無性に悲しくなった。
あんなにも大切だった人は、もういない・・・・・・

「・・・・・・・・・」

部屋の前で足を止める。
ほんのわずかな淡い期待を抱かずにはいられない。
そうして、もう何日も絶望をかみしめてきたのだ。
それでも願わずにはいられなかった。
この部屋に、あの人が戻ってきてくれたのなら・・・・・・






扉をあけた瞬間視界を覆ったのは、鮮やかな赤。






「アリシラ・・・・・・」

一瞬・・・幻かと思った・・・・・・

「アリ・・・ムラさん・・・・・・?」

部屋の中に、ずっと焦がれていた人の姿。

「久しぶりだね・・・」

少し照れくさそうに微笑む、その表情。

「・・・・・・はい・・・」

もう会えないかと思っていたのに。
きっと・・・触れれば壊れる幻なのだろう・・・・・・

「アリムラさん・・・・・・」
「会いたかったから・・・今更とは思ったけど、でもやっぱり・・・会いたかったから・・・・・・だから・・・」

震える手で、そっと頬に触れる。
確かなぬくもりが、指先から伝わってくる。
幻なんかじゃない・・・・・・

「アリムラさん・・・・・・」
「気持ち・・・・・・自分の気持ち、ちゃんと伝えたくて・・・・・・」
「気持ち・・・?」
「偽りなんかじゃない・・・本当の僕の気持ち」

一度目を伏せたアリムラは、腕をのばすと、そのままアリシラの身体に抱きついた。

「っ・・・!?ア・・・アリムラさん!?」
「あんなこと言っておいて・・・君のこと愛せないだなんて言っておいて・・・・・・自分勝手だっていうのは分かってる。もう、君に嫌われたって仕方ないって思ってる。だけど・・・僕は・・・僕はね、君のこと・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「心の底から・・・・・・大切に思ってる・・・これが正しいのかなんて分からないけど、それでも僕は・・・君のこと愛してる」
「・・・・・・・・・!!!」
「本当は・・・許されるかぎり、傍にいたい・・・・・・いさせてほしい・・・離れたくない」
「アリ・・・ムラさ・・・・・・」

照れ隠しなのか、それも想いの表現なのか、アリシラの胸に顔をうずめてくる。
アリムラの表情は見えないけれど、しっかりと抱きついてくる腕が何よりの証。

「愛してる・・・・・・」

再び、しっかりと囁かれる言葉。
しかしアリシラは、アリムラの身体を抱き返すわけでもなく、いつものように大騒ぎするわけでもなく、完全に固まってしまっていた。
わずかに体が震えている。

「アリシラ・・・?」
「ア・・・アリムラさ・・・・・・」

その態度を否定ととったのか、アリムラが少し寂しそうな表情になる。

「やっぱり・・・もう僕のことは嫌いになった・・・・・・?」
「ちがっ・・・違います!!!そんなんじゃないです!!絶対に違います!断じてありえませんっ!!!」

アリムラの沈んだ声にアリシラは、慌てて否定する。

「あなたのこと嫌いになるなんて、絶対にできないことなんですから・・・あなたへの想いを捨てるって言ったのだって、ほんとは嘘です。諦めきれなくて、ずっと苦しくて・・・・・・」

その言葉に、アリムラがわずかに微笑んだ気がした。
それを見たアリシラは、慌てて顔を上向ける。
それを不思議そうに見つめたアリムラのあたたかい右手が、ふとアリシラの頬をとらえて、自分の顔へと近づけた。

「アリムラさん?」
「・・・・・・・・・」

いつになく赤く染まっているアリムラの頬。
少しためらう素振りを見せて、決心したかのように瞳を閉じると、アリムラの方からアリシラへ口付けた。

「っ・・・・・・・・・!?」

見ている方が気の毒なほどに、アリシラはうろたえていた。
まぁ、今まで不毛な一方通行の片想いであったことを考えれば、至極当然な反応なのかもしれないが。
アリムラにしても、決して慣れた行為でないことは、そのぎこちなさから、すぐに分かる。
それでも必死に想いを伝えようとしているのか、目の前のアリシラの身体を抱きしめたまま放さない。

「アリムラさ・・・ちょっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「お願・・・・・・も・・・離れて・・・っ・・・」
「アリシラ・・・?」

アリシラは、慌ててアリムラから顔を遠ざけると、また上を向いた。
体が小刻みに震えている。

「もう限界だから・・・っ・・・」
「限界・・・・・・?」
「これ以上ガマンできそうにないから・・・っ・・・・・・あんまり刺激しないで・・・」
「が・・・我慢って・・・・・・アリシラ・・・?」

しかし、時すでに遅し。



ぶっ



「ア・・・アリシラッ!?」

アリシラは、顔を覆ってうずくまる。
顔を覆った指の隙間から、ぽたぽたと鮮血が滴り落ちていた。

「アリシラ・・・アリシラ大丈夫?しっかりして!?」

アリムラが慌ててアリシラの身体を抱き起こして顔を上向かせる。
アリシラは鼻から見事に大出血を起こしていた・・・

「アリシラ!?」
「アリムラさっ・・・・・・い・・・意外と肩も腰も細・・・う゛っ!?」

今まで、これだけ至近距離で触れ合うこと自体が少ないだけに、アリシラには刺激が強すぎるらしい。
まして、あの告白とキスの後。
アリシラの(鼻からの)出血は止まらない。

「ちょっ・・・上向くのも危ないかな・・・喉につまるよね・・・えぇっと・・・・・・」
「き・・・気にしないでくださ・・・大丈夫ですから・・・っ・・・」
「でも・・・・・・」

心配げに見つめてくる瞳。
今さらながらに気がつく。



アリムラさんって・・・ほんと色白・・・・・・



またも勢いよく鼻血が噴きだした・・・

「アリシラ!?どっ・・・どうしよう・・・・・・(滝汗)」
「目が・・・かすんできます〜・・・・・・」
「とりあえず、これで鼻押さえて・・・ホウアン先生の所に連れていってあげるからっ!?」

アリムラがアリシラの身体を支えて立ち上がらせようとするが、出血多量 で身体がいうことをきかないアリシラは、アリムラを巻き込んで床に倒れこむ。

「アリシラ、大丈夫?・・・・・・どこか打った?」
「・・・・・・・・・・・・う゛っ・・・!!!」

倒れ込んだ体勢が押し倒したような状態になったらしい。
不穏なことを考えたのか、再びアリシラは勢いよく血を流し、そのままがっくりと意識を失った。

「アリシラ!?しっかりしてっ!!!アリシラ!?(汗)」
「なんだぁ?何の騒ぎだ?」
「アリシラ、どうしたのー?・・・・・・・!!???アリシラッ!!!」

騒ぎを聞きつけたビクトールとナナミが部屋に駆けつけてきた。
・・・・・・・のだが。
2人が見た光景は、血を流し顔面蒼白で倒れたまま死んだように動かないアリシラと、白い肌をアリシラの(鼻からの)返り血で赤く染め上げ、押し倒されて狼狽しているアリムラ。
どう見ても、これは・・・・・・

「アリシラっ!!!バカな考えはよせっ!!!」
「そうよーっ!!!!!いくらアリムラさんにフラれちゃったからって、無理心中なんてーっ!!!」
「はぁっ!?ちょっと何言ってるの、2人とも!?(汗)」

アリムラは慌てて否定しようとするのだが、アリシラの身体をどけるだけの力はない。
第一、この2人には、よもや床や壁までをも赤く染め上げた血の正体が鼻血だとは気がつかないし、言ったところで信じてはくれないだろう・・・

「おいっ、衛兵っ!!!なんとかしろっ!力ずくでも、無理心中なんてやめさせるんだっ(汗)」
「はっ!!!」

扉のあたりに待機していた兵士に命じるビクトールと敬礼を返し、アリシラとアリムラを引き剥がす兵士。
完全に気が動転し暴走するナナミは、「アリシラ死なないで〜っ!!アリムラさんと無理心中なんてやめて〜っ!!!お姉ちゃんが、なにがなんでもアリシラとアリムラさん結婚させてあげるからっ!!!!」などと叫びまくり、城中を走り回っている。
とんでもない騒ぎになってしまっていることに焦ったアリムラだったが、もはや事態は収拾がつかなくなっていた・・・






「もー、びっくりしましたよ〜。目が覚めたら、集中治療室で延命装置つけられてたんですから〜」
「・・・・・・・・・」

ようやく血も止まり、それなりの血液量が回復したアリシラは、のんきに笑っていた。
アリムラは疲れきった様子で、城中の人達がお見舞いだといって持ってきてくれた品物をあさる。

「確かそこにトニーさんが差し入れてくれたとれたてのりんごがありましたから、むいてくれると嬉しいですvv」
「うん・・・・・・」

アリシラが(鼻血を出して)倒れたことを自分の責任だと感じているらしく、できるかぎりのアリシラの頼みをきいてやることにしたらしい。
器用に皮をむきながら、ひとつ溜息をつく。
あの騒ぎで、自分とアリシラとの仲は、城中周知のことになってしまったらしい。

「まぁ・・・隠すような後ろめたいことじゃないし、いいけど・・・・・・」
「?なんですか?」
「なんでもない・・・・・・はい、できたよ」

ぽつりと呟いた言葉をアリシラは聞き逃さなかったらしいが、適当にはぐらかす。
きれいに切りそろえたりんごを、アリシラに差し出した。

「あ、アリムラさんvvはい、あ〜んって食べさせてくださいvvv」
「・・・・・・・・・はい・・・」

責任を感じているせいか、逆らいきれない。
小さ目のものをアリシラの口元に運んでやる。

「あ〜・・・なんか新婚さんみたいでいいです・・・ね・・・!?」
「っ!?アリシラ!?」

学習能力のない軍主は、再び鼻から血を流し、倒れた。




それからしばらくアリシラは、免疫がつくまで、アリムラに必要以上に近づくことをホウアンから禁じられたらしい・・・・・・

 
カウンター6974(ゴロ→ろくでなし)ゲットの陸海月様からのリクエスト。
「坊ちゃんの接近に鼻血を噴く2主」
シリアスにみせかけて、ギャグ〜・・・みたいな・・・ちっ、この能ナシ管理人めが。
てめぇにやる気と書く気はあるのか!?・・・・・・・・・ないです・・・(めそめそ)
これでも頑張ってはいるんですけどねぇ・・・(T_T)文才ないので、つらいです・・・
文中のビクトールがフリックのこと話すあたりは、今鈴鳴の中でフリオデに飢えているからです(笑)
ってか・・・情けねぇよ、アリシラ・・・・・・あんた、それでもカナタ師匠の弟子!?
アリシラ「い・・・一応自称はそうですけど・・・(汗)」
本当に毎度こんなんばっかで、すみません海月様・・・・・・(T_T)
いらないとは思いますが・・・よろしければ、もらってやってください・・・