むか〜しむかし、あるところに、それはそれは美し・・・くもありませんが、かわいらしいお姫様がおりました。
王様とお后様にとっては、目の上のたんこぶ・・・もとい、胃痛の原因・・・いえいえ、たいそうご自慢の世継ぎなのです。

シュウ(王)「今日も城を脱走か〜っ!?・・・・・・うっ・・・」
アップル(后)「シュ・・・シュウ兄さんっ!?しっかりしてくださいっ!!!」





「あーっ!もうっ!!城にいたって、シュウさんには長ったらしいお説教と厄介払いとばかりにお見合い写 真をたっぷり見せられるわ、アップルには社交辞令教習受けさせられるわ、あんなんじゃ気が狂っちゃうよ」

お姫様は、宮殿を抜け出し、立ち入り禁止の塔の長い階段をグチりながらのぼっていました。
お姫様は、王族の堅苦しいしきたりが大嫌いなのです。

「第一、政略見合い結婚なんてごめんだね!!!僕には、きーっと素晴らしい王子様が現れるはずなんだから。身長は今の僕よりもほんの少し高いくらいで、きれいな黒髪と白い肌で〜・・・それから瞳は赤。決まり」

一人ぶつぶつとつぶやきながら、お姫様は塔のてっぺんへとたどり着きました。
お姫様が生まれた時から立ち入り禁止となっていたにも関わらず、床には埃ひとつ落ちておらず、壁には痛んだあともありません。
お姫様は、つかつかと窓に近寄り、そこから外の景色をながめました。
そういえば、遠い隣国では、お姫様よりも1つ年上の王子様がいて、蝶よ花よと育てられているとか。

「男に蝶よ花よはないよなぁ・・・・・・」

ぼそりと禁句をつぶやき、お姫様は、ふと振り返りました。
視線の先には、糸繰り機が置かれています。

「・・・・・・・・・なにこれ・・・」

不審に思い、お姫様は糸繰り機に近寄りました。
手を触れようとしたとたん・・・・・・

「ようやく、このときが来ましたね・・・・・・」

どこからともなく女性の声が聞こえ、空間の一角に光が集中したかと思うと、白いローブを身に纏った長い黒髪の女性が現れました。
その隣には、薄い茶色の髪の少年が不機嫌そうに立っています。

「誰?」
「私はレックナート・・・・・・バランスの執行者・・・」
「・・・といえば聞こえはいいけど、自分好みの少年に過酷な運命を背負わせて、徹底した不幸っぷりにもがき苦しむ姿をのぞいて楽しむっていう悪趣味の持ち主でね」
「余計なツッコミはけっこうよ、ルックvv」

ほほほと優雅に笑いながら、レックナートがルックに言い放ちます。
ルックは、ひとつ大げさな溜息をついて、レックナートの後ろに控えました。

「さぁ、アリシラ。あなたにも運命を背負ってもらいますわよ」
「はぁ!?」

おおかたの予想通り、お姫様とはアリシラという名前なのでした・・・






カラカラカラカラ・・・ぷつんっ

「うぅ〜・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・予想以上の不器用っぷりね・・・」

レックナートに促され糸を紡ぎ始めたお姫様ですが、糸繰り機によって細くなっていく繊維は、糸になる前に切れてしまいます。
いつまでたっても、紡錘に糸は巻きついていきません。
ルックは退屈そうに柱に寄りかかり、ぼーっと外を見ています。
はじめは気長に見守っていたレックナートも、しまいにはキレた・・・

「あぁっ!!あなたは、この紡錘で指をさして眠り続ける運命にあるのよっ!!糸が巻けなければ、意味がないのよ!!!ここに巻いたものがあるから、まずはこれで!!!」

レックナートは懐から糸巻きを取り出すと、お姫様の手を取りました。

「少し痛いけど我慢するのよ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!やめてっ!痛いのはイヤ〜っ!!!」

お姫様の叫びもむなしく、指にちくりとした痛みがはしりました。

「さぁ、ルック!早いところ、紋章で眠らせなさい!!!」
「はいはい・・・・・・」

うんざりした様子で、ルックは紋章が宿された右手をかざす。

「君に恨みはないけど、この人には逆らえないんでね。悪いけど・・・」
「はぁっ!?ちょっと待ってってばっ!?素敵な王子様と出会う、僕の人生設計は一体・・・」
「そんなもの知らないよ・・・」

こうして、哀れにもお姫様は、ながいながい眠りについてしまいました・・・






「あのバカ軍主・・・いや大馬鹿姫は、眠りについただと〜っ!?」
「シュウ兄さんっ!!!あんまり興奮なされるとっ!?」
「今すぐたたき起こせ〜っ!!!・・・・・・うっ・・・」
「シュウ兄さん!?」

王様は、お姫様が眠りの呪いにかかってしまったことがショックで寝込んでしまいました・・・






トニー「あぁ・・・ここは静かで、農作物がよく育ちそうですね・・・特にひょうたんは」

お姫様も王様も大人しくなった城は、まるで廃墟のようになっておりました。
そして、いつの間にか、城はひょうたんの蔓に覆われ、いつしか「ひょっこりひょうたん城」と呼ばれるようになったのです。






かくして、物語は、一気に200年の時が経過します・・・






「も・・・もう・・・追ってこないよね・・・」

ひょっこりひょうたん城の前に、一人の少年が現れました。
全力疾走で、どこかから逃げてきたようで、全身汗びっしょりです。

「ったくもー・・・レパントが余計な遺言なんてのこすから・・・」

乱れた息を整えながら、少年は後ろを振り返ります。
少年は、200年前、隣国で世継ぎとして育てられていた王子様でした。
少年のもとにレックナートと名乗る女性が現れたのは、約200年前。

「あなたは200年後、運命の重さを思い知ることになるでしょう・・・」

そう言われ、無理矢理真の紋章を宿されてしまったのです。
歳をとることも許されず、周囲の人間達は自分をのこして、みんな死んでしまいました。
そう、余計な遺言をのこして・・・

レパント(かつての王)「私が死すとも・・・心配ない・・・次の王は・・・・・・アリムラ殿だ!!!」

公然と、永遠の17歳(爆)を指名し、高血圧で倒れたまま逝ってしまったのです。
こちらもお約束通り、王子様の名前はアリムラといいました・・・

「僕は、王様なんてごめんだって言ったのに・・・」

大きな溜息とともに、空を見上げる。
王様の遺言に従い、国の重鎮たちは指名手配者扱いで、王子様を200年もの間探し続けているのでした。
しかし、王座につくことを断じて拒む王子様は、ひたすら逃げつづけているのです。

「そういえば、200年後運命がどうとか言われてたんだっけ・・・」

王子様は、ふとすぐ近くにあった、ひょっこりひょうたん城に視線を向けました。
一面ひょうたんの蔓に覆われ、入り口さえも見えませんが、そんな中に、ひときわ高い古びた塔が見えます。

「・・・・・・・・・?」

奇妙な感覚に、王子様は首をひねりました。
何かが、あの塔にある・・・
根拠もなくそう思いますが、この蔓をなんとかしなくては、城の中にもはいることもできません。
きっと気のせいだろうと思い直し、王子様はその場を立ち去ろうとしました。
しかし・・・・・・

「!?」

葉のこすれ合う音が響いたかと思うと、今まで蔓が覆っていた入り口が姿を現しました。
不思議に思いましたが、王子様は中へ入ってみることにしました。
200年前に聞いた、運命という一言を信じて。
しかし、はじめに見たあの塔に近づいていくごとに、言いようのない不安と重苦しい雰囲気にされていきます。
あの塔に一体何が・・・
どんどん帰りたい気持ちにさせられるのですが、まるで何かに引き寄せられるように王子様の足は塔のてっぺんへと向かっていきました。

「この城・・・絶対に呪われてる・・・・・・(泣)」

泣き言を言いつつも、王子様のはいつの間にか塔のてっぺんへと到着していました。
震える手で扉を開けると・・・・・・

「・・・・・・・・・」

そこには、一人のお姫様が高いびき・・・もとい、静かに眠っていました。






「起きないなぁ・・・・・・」

お姫様のそばに歩み寄った王子様は、お姫様の頬を軽くたたいたり、つねったりしてみますが、まるで起きる気配はありません。
幸せそうに眠っているお姫様を見ていると、なぜか優しい気持ちになってきます。
王子様は、お姫様のすぐ隣に座り込みました。

「200年後、運命の重さを思い知ることになる・・・か・・・・・・」

ぽつりと呟くと、ふと空間の一角に、覚えのある光が集中し始めました。

「あ?」
「ふ・・・とうとう、この日がやってきましたね・・・」
「レックナート様・・・そのビデオ、電池切れランプ点灯してますよ・・・」

どこからともなく、あのレックナートとルックが現れたのです。

「やぁ、久し振り。君も、とことん不幸な人だね・・・同情するよ」
「ル・・・ルック・・・?」

無表情で王子様に話し掛けるルックに、王子様は不安をかきたてられます。
そう・・・レックナートが現れるときには、ろくなことがありません。

「さぁ、アリムラ・・・アリシラにかけられた呪いを解いてあげるのよ・・・」
「は・・・ぁ・・・?」
「アリシラの呪いは、あなたにでなければ解けないわ。さぁ!」
「さぁって・・・だから何をどうするって・・・・・・」
「呪いとか言うけど、そいつが眠りつづけてるのは、この人の命令で僕が魔法をかけてるせいだよ。呪いを解くっていうのも、単にこの人のシュミでね」

困り果てた様子の王子様に、ルックが冷たく言い放ちます。
仕える主人を間違えたとでも思っているのでしょう・・・

「呪いを解くって・・・どうしろっていうんです・・・・・・?」
「姫にかけられた呪いを解く方法など、古今東西1つに決まっているでしょう」
「・・・・・・・・・」
「王子の愛のキスよ!!!」

一瞬にして、その場は静まり、異様な緊迫感に包まれます。
王子様は、無言で塔を立ち去ろうとしました。

「ちょっと待った」
「ルック?」

しかし、出口をルックがふさぎます。

「僕としても、自分の身がかわいいんでね。悪いけど、あいつの呪い解いてやってよ」
「ルックの薄情者〜っ!!!」

塔に、王子様の叫び声がこだましました・・・






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

いくら、これがレックナートの言っていた重い運命とやらだとしても、王子様には荷が重過ぎるようです。
いくらなんでも初対面の姫相手に、しかも好奇の視線にさらされながらキスするというのは、無理というものでしょう。
王子様は、尊大な溜息をついてみせました。
姫の顔はすぐ間近にあるものの、どれだけ時間を費やそうとも決心がつきません。

「思っていた以上に強情ね、あの子も・・・」
「もともと、頑固で強情な奴なんですよ」

レックナートに適当に相槌をうちながら、ルックはぼけーっと窓の外を見つめています。
早く用件すませて帰りたいとでも思っているのでしょう。

「レックナート様・・・こればかりは無理です・・・僕ではなくて、他の人を探し・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

さんざん悩んだあげくに、王子様がレックナートに断ろうとした時。
それまで、ぐぅぐぅと眠っていたお姫様が突然目を開けました。
そして、すぐ目の前にいた王子様と目が合います。

「・・・・・・・・・」

身長は、自分よりも少し高め。
きれいな黒髪と、それとは反対に白い肌。
赤い瞳が、じっと見つめてきます。

「・・・・・・・・・・・・ようやく会えました〜っ!!!僕の王子様〜っ!!!!!!!」

お姫様は叫びながら、がばっと起き上がると目の前の王子様の身体を抱き寄せて、口付けました。
焦った王子様が必死に抵抗しますが、お姫様の腕ががっちりと抱きしめているために、満足に動けません。

「あら・・・意外な展開になったわね・・・」
「どうでもいいじゃないですか、もう・・・帰りますよ、レックナート様・・・」

いつの間にか、レックナートとルックは消えていました・・・






「ずっとずっとず〜・・・・・・・・っとあなたに会いたかったんです〜っ!!!」
「そ・・・そう・・・・・・」
「助けにきてくれたんですね〜っ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま・・・ぁ・・・」
「嬉しいです〜っ!!!」

目が覚めてからというもの、お姫様は、ずっとこの調子です。
がっちり抱きしめた王子様の身体を、かたときも離そうとはしません。
王子様も、はじめは戸惑っていたものの、何百年もひとりで眠りつづけていたお姫様のことを思うと、寂しかったんだろうと不憫に思い、好きにさせてやっています。

「王子様!!!」
「は・・・はい・・・・・・(汗)」
「名前教えてください!!!」

意気込んで何を言われるかと思えば、目の前には子供特有の無邪気な笑顔。
なぜか、その笑顔を見ていると、あたたかな気持ちになってきます。

「アリムラ・・・アリムラ=マクドール」
「アリムラさんっていうんですね?僕は、アリシラです!」
「・・・じゃ、よろしくね、アリシラ」

くすくすと笑った王子様が、右手をさしだします。
お姫様は嬉しそうに、その手をとりました。
しかし、「よろしく」の意味をどうはき違えたのか・・・

「はいっ!では、今夜は早速初夜ですね・・・・・・」
「はぁ!?」






りーんごーん
教会の鐘が大きく鳴り響きます。

「これが、僕の花嫁さんです〜っ!!!きれいでしょ、きれいでしょ!?だからって、手出しする奴は容赦なく打首獄門ですからね」
「アリシラ・・・・・・・(汗)」

まぁ、そんなこんなで、王子様とお姫様は幸せに暮らしたそうです・・・
めでたしめでたし・・・・・・でもない

 
カウンター8100(キリ番)ゲットの陸海月様からのリクエスト。
「呪われるアリシラ」
なーんでしょうねー・・・この話は(爆)
童話パラレル・・・・・・しかも、姫はアリシラって・・・・・・
結局、オチはどこなのですか、この話・・・
まぁ・・・結局「王子様はお姫様に押し切られるかたちでありながらも、結局は好き」ってことでvv(爆)
しくしく・・・申し訳ありません、海月様・・・
っつーか、全然呪われておりませぬ・・・・・・しくしく・・・
書き逃げます・・・めそめそ・・・