「アリムラさん・・・・・・本っ当〜・・・に帰っちゃうんですか?」
「うん・・・今日ばっかりはね・・・・・・大切な用事があるから・・・」
「僕よりもですか!?」

詰め寄ってくるアリシラに、アリムラは曖昧な笑みを向ける。
もうずいぶん前から、2人は同じ問答の繰り返しだ。
帰る、帰らせない、帰りたい、どうしても帰る?

「アリシラ・・・・・・本当に悪いけど、今日は・・・・・・」
「だって・・・今日はいいけど、明日は・・・・・・」

それまでの強気な言葉とは裏腹に、アリシラが急に静かになる。
それを見て、アリムラはさらに困ったようにアリシラを見つめた。

「明日までには必ず帰るよ。いっしょに行くって約束したよね?」
「・・・・・・だけど・・・トランから、どうやって1日でここまで戻ってくるっていうんですか?」

拗ねた子供のように俯いてしまったアリシラの頭を撫でながら、アリムラは必死に考えた。
明日は、ゲンカク老師の命日なのだという。
墓碑のあるキャロの街は、今はハイランド領内ということもあって、さすがに墓前に手を合わせるというわけにもいかないが、せめて近くの国境の村まで行って黙祷だけでも捧げようと約束した。
とはいえ、その前日・・・つまり今日は・・・・・・

「アリシラ・・・・・・君が、ゲンカク殿の命日を大切にするのと同じようにね、僕にも大切にしたい日があるんだ・・・」
「・・・・・・・・・」
「ルックにでも迎えにきてもらうから」
「あの性悪が、快く了承するなんて思えませんけど」
「そんなことないよ。ねぇ、ルック?」

意味ありげに笑ったアリムラが見つめる先にアリシラも視線をうつす。
わずかに空気が揺れた。

「人を性悪呼ばわりとは、ずいぶんだね、君も」

いつも石版の前で聞く不機嫌な声。

「ルック・・・いつからそこに・・・・・・」
「君がそいつにわがまま言いにくるよりも、だいぶ前から」
「ってことは・・・僕とアリムラさんとのことを始終見てたってこと!?」
「人に気づかずにいる君が悪い」
「くぅぅぅぅぅぅぅっ!!!さては、僕とアリムラさんとの仲を覗き見ようと・・・っ!?」

アリシラの言葉に、アリムラが顔を伏せる。
しかし、ルックは開口一番侮蔑の一言。

「悪いけど、僕にはどうでもいいことだからね。いちいち覗く趣味はないよ。第一、覗きや隠し撮りは、君の趣味だろうに」
「趣味とは失敬な!!!覗きも隠し撮りも、師匠直伝の『愛を深めるための崇高なる手段』・・・」
「アリシラ・・・・・・?」

あくまでとり合う気のないルックに向かって一人激昂するアリシラに、アリムラが不審な瞳を向ける。

「師匠って・・・・・・何の?」
「・・・・・・・・・」

いったん黙り込んだアリシラは、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
そして、アリムラを振り返る。

「アリムラさん・・・愛は次元をも超越するんですよ・・・・・・」
「は・・・ぁ・・・・・・?」
「あなたとの愛のためならば!たとえ会えるはずのないあの人にだって、教えを請うために『愛を勝ち取る会議』に出席し、交換日記を書いたりだってするんです!!!」
「は・・・はぁ・・・・・・?(滝汗)」
「すべては、あなたに振り向いてもらうた・・・・・・!?」

突然アリシラが何もない空間を見つめた。

「師匠から召集の知らせですっ!!!会議ですね!?」
「なに・・・・・・?」
「今向かいます、師匠っ!!!」

アリシラは、なぜか討ち入り覚悟のような険しい顔で、長い廊下を走り去っていった・・・
アリシラのお師匠様、そして会議の内容の詳細は、主坊☆MAMにて。(爆)

「アリシラ・・・・・・どこ行ったの・・・?」
「僕が知るわけない」

訳もわからず、アリシラが去っていった方を見つめるアリムラに、ぶっきらぼうな声が重なる。
相変わらずのルックの調子に、アリムラも苦笑するしかなかった。

「ルックもね、もう少し愛想よくしたら?僕は君のこと知ってるからいいけど、きっとアリシラなんかは・・・」
「別にアレに好かれようと思ってるわけじゃないから問題ない。君こそ、ちょっと甘やかしすぎなんじゃない?」
「・・・・・・そうでもないよ・・・」

アリシラのいなくなった空間を見つめて、アリムラが曖昧な笑みを浮かべる。

「アリシラ・・・僕の前では子供だけど、実際に表立った場に立つ時には、そういう子供らしさをすっかり捨ててるでしょ?誰にだって、一人くらいは甘えられる存在がほしいと思うから」
「だからって、それが君である必要があるわけ?」

過保護な義姉がついているのに、と付け加えるルックに、アリムラはまた苦笑する。
そして、意味ありげに彼を見つめた。

「少なくとも、僕ならあの子の立場の苦しさを少しでも理解できるしね。そういう意味でも、僕ならあの子も遠慮なく甘えられるんじゃないのかな。それに・・・・・・」
「何?」
「僕の時には、顔に似合わず心配性でおせっかいな性悪魔道師がついててくれたしね」

思い出したように肩を震わせて笑う。
それを、うんざりした様子でルックが睨みつけた。

「よく言う・・・見てる方が苛つくくらいに腐って、ヘコんでたのは、どこのどいつだか・・・・・・」
「だから、感謝してるってば」

ルックの言葉に、アリムラがくすくすと笑う。
ルックの言うとおり、あの頃の自分は背負ったものの重さに耐え切れず、ずいぶんな状態だったから。

「君のわがままに付き合わされる身にもなってほしいもんだね」
「・・・・・・いつもいつも、ありがとう」

アリムラの言葉は、嘘偽りのない本心からの感謝の気持ちらしい。
なんだかんだいっても、結局アリムラには甘いルックは、ひとつ大きなため息をつくと右手をかざした。

「まぁ、今回は事情が事情だから仕方ない。送ってやるよ。グレッグミンスターまででいい?」
「うん。頼むね」

紋章の光が2人を包み込んだ瞬間・・・・・・

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!?アリムラさんっ!!!僕、まだ帰っていいとは言ってな・・・・・・」

大声とともに近づいてきた足音も、2人とともに城から消えた・・・






どしゃっ

「っ・・・・・・痛・・・」
「わぁぁぁぁぁっ!!!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい〜っ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・君、どこからわいて出たわけ・・・?」

グレッグミンスターには無事到着したものの、移動直前、突然アリムラに向かってアリシラがタックルしたせいか、アリムラは着地に失敗したらしい。

アリシラの下敷きになって、倒れている。
ルックはルックで、突然出てきたアリシラに多少なりとも驚いているようだ。

「こんなところまでついてくるとは、ずいぶん懐かれてるもんだね・・・」
「う・・・うん・・・・・・」
「じゃぁ、明日の朝に迎えにくればいいんだね?」
「え・・・あの・・・・・・」
「何?」

呆れたようにアリシラを見て、そのまま帰ろうとするルックを、アリムラが何か言いたげに呼び止めた。
ルックにも、彼の言いたいことは想像がつくらしいのだが、面倒はごめんだとばかりに睨みつけてくる。

「あの・・・・・・アリシラ・・・連れて帰ってもらえない・・・かな・・・・・・」
「僕は、そいつの子守りなんかごめんだけど」
「誰が子守りだっての!?ってよりも、アリムラさん、僕といっしょはイヤなんですかーっ!?」
「や・・・あの・・・・・・・そういう意味じゃなくて・・・」

ぎゃぁぎゃぁと騒ぎながら、アリシラがアリムラに泣きつく。
アリムラは、困り果てた様子でアリシラを何とかなだめようとするが、こうなった時のアリシラはアリムラ以上に頑固で強情だ。

「痴話ゲンカなら、勝手にやっててよ・・・僕は帰るからね」
「ちょっ・・・ルック!?」
「とっとと消えろ、邪魔者・・・(ぼそっ)」

アリムラの願いもむなしく、ルックは、とっとと退散していた・・・

「アリシラ・・・最後の一言ってどういう意味?(汗)」
「なんでもないです〜vv」

アリシラは、すっかりゴキゲンになっていた。
ルックさえ消えてしまえば、自分が城に戻る手段もなくなる。
少なくとも、明日の朝迎えがくるまでは、ここにいられるだろう。

「・・・・・・弱ったね・・・」
「アリムラさん・・・ひょっとして、僕迷惑でした?」

それまでの勢いはどこへやら、アリシラはすっかり落ち込んだ様子で俯く。
アリムラは、ひとつ溜息をついて、アリシラの方を見た。

「そんなこと・・・ないけど・・・・・・ただね、アリシラがいてくれても、アリシラには何もしてもらえることないから退屈だと思うし・・・」
「僕、ここにいても迷惑じゃないですか?」
「うん・・・・・・」

面と向かって、迷惑だとは言えない。
人数がいていいということはないが、1人部外者がふえるくらいなら問題はないだろう。

「とりあえず、ウチにおいで。明日の朝まで迎えは来ないし、今日は泊まっていけばいいから」
「はい」






「アリムラ様・・・遅かったですね」
「ただいま、クレオ。ごめん・・・ちょっと手間取っちゃってね」
「準備できていますが、すぐ出かけられますか?」
「うん。あ・・・それからね、悪いんだけど、アリシラにお茶出してもらえる?できるだけ早く戻ってくるようにするから」
「今日くらいは、あちらでゆっくりされてもいいんじゃないですか?つもる話もあるでしょうに・・・」
「ううん・・・はかりにかけられるものじゃないってことは分かってるけど、それでもアリシラとくらべたら、今は・・・アリシラの方が大切だから・・・」
「そうですか・・・」
「ごめんね、ほんとにすぐに戻るからね」
「いってらっしゃいませ」

家に着くなり、アリムラはクレオとほんの少し会話をしただけで、アリシラを置いて一人で慌てて出かけていった。
日ごろ、あまり見られないほどの慌てようで、アリシラは驚いたようにアリムラの後姿を見つめる。

「クレオさん・・・アリムラさん、どこ行ったんですか?」
「あぁ・・・アリムラ様にとって、懐かしい方の所へね」
「懐かしい・・・?」
「いつでも会えるんだけど、今日という日は特別だから・・・」

クレオの言葉が、さっぱり分からない。
アリシラは、どこかそわそわした様子で、アリムラの帰りを待っていたが、数十分もたたないうちにシビレをきらしたらしい。

「クレオさんっ!!!」
「・・・・・・・・・どうしたの・・・?」
「アリムラさんの所に行ってきます!」
「えっ・・・ちょっ・・・・・・アリシラくん!?」

クレオが慌てて呼び止めるのも聞かずに、外へ飛び出す。
クレオは、呆然と開け放たれた扉を見つめた。

「アリムラ様がいる所・・・知らないのにどうやって・・・・・・」






「ごめんね・・・すっかり遅くなっちゃって」

街はずれの墓地にアリムラは、ひとりで来ていた。
ひときわ大きな墓碑に向かって、花を手向けて、手を合わせる。

「あれからずいぶん時間がたったように思えるけど・・・最近ようやく、あの頃のことちゃんと思い出せるようになったんだよ・・・」

数年前、確かにあった現実。
今日は、父と戦った日・・・つまり、父の命日。

「クレオはね、父さんは最期まで赤月帝国の将軍として死ねたこと・・・他の誰でもなく、息子の手にかかって死ねたこと・・・幸せだっただろうって言ってくれたけど・・・ほんとのところはどうなのか、僕には分からないよ・・・父さん・・・・・・本当に幸せだった?」

どこか甘さの残っていた父の剣。
恐らく、本気で立ち向かってこられたのなら、自分がここにいられるはずなどないのに。
殺されていたのは、自分の方のはずなのに。

「父さん・・・僕ね・・・・・・父さんと殺しあわなきゃいけないことは、すごく悲しかったけど・・・つらかったけど・・・だけど、一対一で、父と子という関係ぬ きで父さんと戦えることは、純粋に嬉しかったんだよ・・・でも父さんは・・・さいごまで、僕のこと息子としてしかみてくれなかったんだね」

いつかは越えたいと願っていた父とも、もう手合わせすることさえできない。
結局は、勝ち逃げされたようなものだ。
そのすぐ後に、家族も同然だった親友まで亡くして、ずっと苦しんでいた。
立て続けに家族を失って、人が死んでいくのを目の当たりにしながら何もできない自分が情けなくて、悔しくて、半分自閉気味になっていた時期さえあった。

「どうせ、男はそんな軟弱じゃいけないって言うんだろうけど、半分は父さんのせいなんだからね。だけど・・・ようやく見つけたんだよ」

どん底に沈んでいた自分にさしのべられた、あたたかい手。
なくしかけていた、近い存在のぬくもり。

「もう少し落ち着いて、何もかも片付いたら・・・きっと、あの子もここに連れてくるから。父さんに、会ってほしいんだ。きっと、驚くよ。・・・・・・テッドが・・・帰ってきたみたいで・・・」

そこまで言って、アリムラは静かに目を伏せる。

「でも・・・でもね・・・僕は、あの子のことをテッドの代わりとして見てるわけじゃない・・・父さん・・・・・・僕・・・アリシラのこと・・・・・・」

わずかに頬を染めて想いを口にしようとした瞬間、アリムラの背後に尋常ならぬ 気配が、化け物じみた速さで近づいてきた。
思わず振り向くと、こちらに近づいてくる砂煙。

「アリムラさん〜っ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「よーやく見つけました〜っ!!!!!!!!」

すさまじい勢いで猛ダッシュしてきたアリシラは、そのままの勢いでアリムラに飛びつく。
よければ、父の墓碑に彼が激突するであろうことを予測し、アリムラはそのまま身体を抱きとめた。
どちらを守りたかったのかは、謎だ。

「アリシラ・・・・・・」
「アリムラさん、家に着いたとたんにどこか行っちゃうんですから〜っ!!!僕、寂しかったんですよ?」
「う・・・うん・・・・・・ごめんね・・・」
「で、僕がどうとか言ってませんでした?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

さすがにアリムラも閉口する。
言えるはずがない・・・・・・

「・・・・・・アリシラ・・・戻ろうか・・・・・・」
「え?でも、あの・・・・・・・・・」
「知らない人のお墓参りは、つまらないでしょ?」
「・・・・・・誰のお墓なんですか?」

アリシラに悪気がないことは知っている。
第一、行く先も告げずに客人を待たせた自分にも非はあるだろう。
アリムラは、苦笑しながら答えた。

「僕の父の墓。何年か前に・・・僕が殺した・・・・・・」
「・・・・・・・じゃ、クレオさんが言ってた、いつでも会える懐かしい人って・・・アリムラさんのお父さんのことですか?」
「うん。今日は、父の命日だから、どうしても帰ってきたかったんだ。お墓参りは、いつでもできるけど、今日という日は特別 だから・・・」
「・・・・・・・・・・・・・僕がいちゃ、ジャマですよね・・・」

急に、アリシラは気まずくなったように小さな声で聞く。
特別な日。
父親の命日だというのなら、2人きりで話したいと思うのは当然なところだろう。

「う〜ん・・・正直驚いたけど、でも全然いいよ。どのみち、アリシラにも、そのうち来てもらいたいと思っていたから・・・いつかは、父にも会ってもらいたいって思ってた。もう少し先になるかと思ってたから、ずいぶん時期が前倒しになっちゃったけどね」

くすくすと笑いながら、アリムラが言うのを見て、アリシラがほんの少しだけ、ほっとしたように表情を緩める。
そのまま墓石に向かって一礼した。

「お義父さん!ふつつか者ですが、よろしくお願いします!!」
「・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?」
「これで、 僕らも親公認の仲ですね!!!」

こぶしをグッと握り締めて力説するアリシラに、アリムラは大きな溜息をつく。

「父に会ってほしいって・・・・・・そういう意味じゃ・・・」
「似たようなもんです。気にしちゃだめです〜vv」

ごろごろと懐いてくるのに嘆息して、アリムラは、もう一度父の墓碑を見つめた。
確かに似たようなものなのかもしれない・・・・・・恐ろしく大きな捉え方をするのならば。

「もう・・・帰ろうか。せっかく来たのに、お墓参りだけじゃつまらないよね」
「お義父さんに挨拶できたんだから、つまらないなんてことないです!!!」

相変わらず熱のこもった答えを返すアリシラに、アリムラは苦笑する。
自分も結局は、彼のそういうところも全部ひっくるめて好きになってしまったのだから、仕方ないだろう。
飾ることのない、素直な明るさに惹かれたのだから。

「父さん・・・この子に逢えた偶然に・・・感謝しなきゃいけないよね・・・・・・」
「なんですか?」
「なんでもないよ・・・」

微笑みながら首を振って、アリムラはアリシラを連れて墓地を出た。
亡き父との時間を大切にしたいとは思うものの、今傍にいる人とそうでない人とを比べれば、どちらの存在が重いかなんて、歴然としている。
一度墓碑を振り向いて、また来るからと小さく呟いた。
なんとなく申し訳なさそうにしているアリシラに苦笑しながら家につくと、そのままアリシラを客間へと通 す。

「ごめんね。帰ってきてから何も仕度とかしてないし、着替えだけでもしてくるから。少し待っててくれる?」
「あ・・・はい・・・」
「すぐに戻ってくるからね」

静かに扉を閉めて、アリムラは自分の部屋へと向かった。
正直、久しぶりの家だから、一人で静かにしていられるかとも思ったが、そうもいかないらしい。

「まぁ・・・退屈しないでは、すみそうかな・・・ねぇ、テッド?」

壁にかけられた親友の絵と、そして確かに彼が眠っているだろう右手とを見て笑う。
いつでも、静かで平凡な日常を壊してくれるのはアリシラだったりするのだが、無意味な時を流すことが多くなっていた自分には、そういう非凡な毎日というのも必要なのだろう。
毎日父親相手に稽古をつけてもらったり、母親代わりの付き人にいたずらしたり、大好きだった親友と笑い合ったり、そんな当たり前だった平凡が今では手の届かない、遠いものになってしまったのだから。

「今夜は・・・にぎやかになりそうだね」

くすくすと笑いながら、窓の外に視線をうつした。
すっかり日も暮れて暗くなった空。
闇の中で光をはなつ星。
ずいぶん古く懐かしい記憶の中で、母親が歌ってくれた懐かしい歌を口ずさむ。
彼らは死んでしまっても尚、自分を見守っていてくれる、と。






「アリムラさんっ!!忘れてました!僕、今日まだ一回もキスさせてもらってな・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

あまりにもどうでもいいことのために、アリシラはアリムラの部屋の扉を予告もなく開け放つ。
しかし、アリムラにしてみれば、これこそ迷惑もいいところ。
着替えの真っ最中・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリムラさん、誘ってるんですか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

仏の顔も三度まで。






「・・・・・・・・・なに・・・君ひとり?アレは、どこ行ったわけ?」
「さぁ・・・少なくとも、しばらくは帰ってこないんじゃない?」

翌朝迎えにきたルックを不機嫌な面持ちで待っていたのは、アリムラひとり。

「まぁ、いいけどね。早いところ、送ってくれる?ジャマなのが来ないうちに・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった・・・・・・」

ルックは背筋に冷たい汗が伝うのを感じる。
アリムラの放つ気配は、尋常ではない。
いつも曖昧な笑みですべてを適当に受け流している彼が、非情冷徹な解放軍時代の彼の気をまとっていた。
こういうときの彼には逆らわない方が身のため・・・

「じゃぁ、行くよ」
「あぁ、頼むね」

そして、グレッグミンスターから、性悪魔道士と冷酷無比な英雄の姿は消えた・・・






「うぅっ・・・アリムラさん、やっぱり怒ってたんですね・・・・・・」

アリムラの家で、アリシラはベッドの上に寝ていた。
真っ白な包帯を全身に巻き、ミイラ状態で。

「はぁ・・・そりゃ怒るよなぁ・・・・・・昨日丸一日、一回もキスしてないんだから」

ちなみに、こいつの理屈は確実にズレている。
ぶつぶつと呟きながら、アリシラは窓の外を見つめた。
今日はゲンカクの命日。
いっしょに国境近くの村まで行こうと約束した日。
なんだかんだいっても、最後は戻ってきてくれるはず。

「帰ってきてもらったら、即効キス。それで機嫌直してもらえるはずだし」

相変わらずズレた発想をしながら、アリシラは、アリムラを怒らせた自分の行動を見返ることなど一度もないのだった・・・






そして、約束を果たそうと戻ってきたアリムラをアリシラが再び怒らせたことは言うまでもない

 
カウンター8400(キリ番)ゲットの陸海月様からのリクエスト。
「間が悪い時に乱入しまくり、迷惑をかけまくるアリシラ」
訳分からなさ大爆発〜♪意味のない話炸裂〜♪
はい、これなんでしょうねぇ(汗)
らぶらぶシリアスに見せかけて、ギャグオチ。しかも、オチてない(爆)
なんというか・・・アホで本当にすみません・・・頭使わない話は書きやすくて好きですが、あまりにも脳みそ使わなさすぎです・・・
最近、ルックのツッコミが妙にツボだったりするので、先日のひょうたん畑に続き、またもルック登場・・・
アリシラ「奴は、僕らの愛の邪魔者です・・・(ぼそり)」
アリムラ「だから・・・どういう意味?それ・・・」
まぁ、所詮は、このバカリーダーたちのしでかすことと大目にみてください、海月様・・・(反省しなさい)
適当にしゅー●っはにでも食わせてください・・・(おい)