彼と彼と彼の事情〜至難編〜
色々あったというか、
紆余曲折があったようななかったようなというか、
―――現在ロイは、絶賛半片思い中だった。自分でも何故そうなったのかはわからないものの、この軍のリーダーかつこの国の王子であるカルムに告白し、何故かOKをもらえた。
―――そこまではいい。
しかし、それはカルム(裏)の人格、一方のものであり、まだ肝心のカルム(表)には、何のアプローチも出来ていなかった。
そう、相手は紛れもなく二重人格者…。告白するにも2度の挑戦が必要だ。振り出しに戻ったロイは、もう一度改めて告白することになったのだが…。
その難しさに、ぶらぶらと城内をぶらついていたりした。
…ちなみに、人はそれを気分転換だとか、現実逃避と言う。「あ〜…どうすっかなぁー」
そんな中だ。
「もーっ!待って下さいよ〜〜〜!!」
「うおっ!?;」
思わずビクリとなる。
遠くから物凄いスピードで近付いてくる聞き覚えのある声と足音に、ロイは本気でビビった。
どうにも妙な迫力を持つ(というか、城の女性陣は大概そうだが)ミアキスを見ると、反射的に身構えるクセがついているらしい。
―――しかし、今回は別にロイが何かしでかして狙われ…もとい、追いかけられている訳ではない。「待ってくださいよぉ〜王子ー!」
「や――っ!!;」いやぁああっ!とばかりに何故かカルム(表)が追いかけまわされていた。しかも、何か大きな板状の物を担いでいる為、大変不利そうだ。
(えええええええええ!?;)
何だこの状況!とロイが固まったのも束の間。
カルムが、曲がり角からロイの前に飛び込んで来た。―――そして、目が合う。
「た、助けてっロイ…!」
「巻き込まれたーー!!?;」ヒィッ!!;とたじろいだものの、身の危険を感じてカルムごと手近な空き部屋に飛び込んだ。
「はーっ!;」
扉が閉じた瞬間に、「どこに行かれたんですか〜!?」と部屋の前をミアキスが通過していくのが分かる。
思わず2人は同時に床に崩れこむ。
かなりの恐怖だ。「あっ、ありがとうロイ…っ」
「…はぁ、…あんた何で女王騎士の女に追われてんだよ?」頭をガシガシ掻き毟りながら、ロイはそう問いかける。
照れ隠しだ。「それが…ミアキスが、コレを僕の部屋で見つけちゃって…」
「…………………………………………それ、あんたの妹だよな…?」
「うん?」どこで手に入れたのか(※某貴族の家かららしい)、物凄いサイズのリム姫の肖像画がそこにはあった。
よく抱えて走れたものだと感心するくらいのサイズだ。「飾ってあるのを見つかっちゃって、どうしてもミアキスが欲しいって…」
「やりゃあいいだけだろ!」
「そんなこと出来ないよっ…!(泣)」シスコンだ。
間違いなくシスコンだ。
しかし、涙で瞳を潤ませる姿は、間違いなく薄幸の美少女(?)だ。「あーもうアレだ。とりあえず見からねえ場所にでも隠せよ、」
オレの部屋以外で。と、ロイは(裏カルムなら提案しだしそうな事を先手取って)言った。
「うん…そうする」
こっくりと頷くカルム(表)の姿に、庇護欲がそそられたりしつつも…心のどこかで、好感度upを意識していたりした。
「場所くらいなら、その、一緒に考えてやってもいいぜ、」
「! ありがとうロイっ…」嬉しそうな声に気を良くしつつも…こんなかさ張る代物をどこにどうやって隠すかに頭を悩ませてしまう。
「えへへ…最近のロイ、優しくて嬉しいな…」
「――――…」ぽそっと言われた一言と、初々しい少女のような表情に、――え?脈有り?と、心臓が跳ねる。
「あ、あのさ、王子さん…あんたオレのことどう思って――…」
「え?」
「見つけましたよ〜〜王子ぃ〜…?」
…。
ぎぎぃ…と、部屋の扉が開かれ、そこに立っていたのは壮絶な笑みを浮かべたミアキスだった。
「…うわーーー!!;」
「ひわーーーっ!!(泣)」
思わず会話の内容も頭から吹っ飛び、2人して悲鳴を上げてしまった…。
その後、「姫様の絵を私に下さい!」「やーっ!;」という壮絶な争いの末、一週間ミアキスの元に貸し出される結末になった。(と、言う事をロイは後からカルム(裏)から聞いた。)