彼と彼と彼の関係。〜観察編〜

 

 

カルム(裏)の行動は、カルム(表)の為だけにある。
その姿勢は、どこかリオンのカルムに対する態度にも似ており…
彼の意思がどこにあるのか、少し気になった。

 

 

 

「あー…すっきり…!」

「おー…」

また派手にやらかしたなぁ、とロイは相手が破壊の限りを尽くした残骸を見つめる。
普段は温厚な性格で知られるカルムの、その別人格…。
そんな相手のキレっぷりを見るのは、(自分に被害がないと分かってからは)小気味良く思えるものだった。
妙な噂を流されるくらいなら、こっちから見張りをしてやると(敢えて自分がやらかした事も忘れ)張り付いて暫く。
特にこちらに非のない限り、八つ当たりの的にされることはないと近頃理解した。

「今に見てろ…ギゼルの××野郎がっ鼻の穴から上下に裂いて××に××を突っ込んでやる…!」

くっくっく…と笑って夜空に宣言する姿も、見慣れたものだ。…いつも通り、聞くだけで××が縮まる…。
そして当り散らした後は、機嫌よさそうに湖の上の桟橋でくらくらと回っている。
口はともかく、品はある為かどことなく舞のようにも見える。

「だいぶ溜まってんなぁ〜」
「…ナニが?」
「王子がそんな品のねぇこと言ってんじゃねえよ!」

クツクツ笑いながら、少しイントネーションを変えた単語(下ネタだ)を口にする相手に思わず突っ込む。ロイ自身もそんな卑猥なネタを好んで口にするとは言え、まるっきり美少女にしか見えない(自分と同じ顔だと思えない)顔でそんな事を言われては、止めるしかない。
というか、言った本人もわざとそんな返事をしただけだったのか、すぐにあっさり頷いた。

「――まあな。 コイツが怒れない時に、こうやってオレが怒ってんだから、まあ適当にバランスはとれてるぞ?」
「…別に、王子さんだって怒る時には怒ってんじゃないのか?」
「王子じゃ許されない事のが多いんだよ。例えば、ギゼルのクソが脳みそぶちまけておっちんだとしても、諸手を上げて喜ぶのは出来ないだろうし」
「人としてそれはどーだよ…;」
「オレは嬉しい。」

―――そこがオレとカルムの違う点。
クルクル回る。

「………」

…妖精か何かかと連想してしまうのは、あの中身を考えると自分の頭はイカレてるのかもしれない。

「…やっぱ髪の色か?」
「あ?」
「オレと王子さんの大きな相違点だよ。」

この目の前の人格の時は、相手の方が粗野な振る舞いとやらをしているというのに、この違いは一体なんだと言うのだろう。

「結局別人なんだから、外見が似てても真似なきゃ似ねぇよ。 …後、コイツに髪とか目のことは言うなよ。コンプレックスなんだから。」
「こんぷれっくすぅ?」

なんだそりゃ。

「オレは別にいーと思うんだけど、色素が薄い感じが嫌なんだと。こう、色素が濃い太陽っぽいのが好みらしい。ちなみに、好きなタイプは可愛くて明るい奴。ランとかシュンとか。」
「ランはともかく、シュンって誰だよ」
「初めての男友達。」
「男かよっ!」

思わず突っ込む。

「いや、好みのタイプの傾向ってだけだ。後、そうだなぁ…お前の目の色も好みらしい。」
「―――はあ?」

一瞬何を言われたのか分からなくなった。
好み?
突拍子もない言葉に頭が麻痺してしまう。
…しかも、それが何故か嬉しいような気がしたのは――気のせいだと信じたい。

「そりゃあどうも…」
「おー」

 

ぼりぼり頭を掻き毟るロイを尻目に、カルムはまったく気のなさそうな返事を返す。

 

(何だってんだ、まったく…)

 

 

 

(何かの始まりとかそんな方向。)