彼と彼と彼の事情〜切欠編〜

 

 

妙にある1人の事が胸を占めていたり、
ふと気が付けば、ソイツの事ばかり考えていたりする。

 

「はあ…;」

ついでに、日々順調に溜め息も増えつつあるロイだった。

「…なぁ〜んか、最近ヘンっつーか…どっかでこんな感じの症状聞いたことある気もすんだよなぁ?」
「何がですか?」
「――うわあっ!?;」

にょきっと唐突に現れた(ように感じた)女王騎士の姿に、ロイは驚いて悲鳴を上げた。
全く気配を感じなかった。
さすが女王騎士と言うべきなのか…このミアキスという相手は、見かけに反して心臓に悪い存在だった。

「どうしたんですかぁ〜?ロイ君、似合わない溜め息なんかついちゃったりして〜」
「べ別に、」

アンタには関係ないだろうと、(どもりつつ)言い返そうとしたが…

「よければ話してみませんかぁ〜?」

すっきりするかもしれませんしぃ〜とニコニコ笑うミアキスのその瞳は…
うふv気になるんでとっとと吐いちゃってくださいね〜?
…と、物騒かつ問答無用な色を湛えていた…。

…堪えなければヤられる…ッ!;

そう判断したロイは、しぶしぶと口を開くことに決めた。誰だって命は惜しい。

 

 

「あの王子さんの事だよ。」
「王子ですかぁ〜?」
「そー最近あの王子さんのことばっか考えてるし、気が付いたら溜め息が出るし…ただそんだけの苦労話だよ。」
「……………。」

それは、次は何をされるのか、または何をしでかされて被害を被るのか分からないという不安からの事情だと思われる。

「…ロイ君、他に胸がドキドキしたりしませんか?」
「…おー、まあな、それもするなぁ」

いつあのほんわかした生き物が、凶悪な生き物へと変化するのかと考えると、ドキドキする。…胃が痛くなるでも当たっている。

「―――ロイ君、」
「あ?」

「それはズバリ恋ですよ!」

「………………………………………………はあ!?」

 

出てきた結論、
ロイはそれに…

 

 

「……………………ま、マジかよ…;」

 

納得してしまった!

 

 

人はそれをつり橋効果と言う。
…しかし、始まってしまったものは何にせよ、坂道を転がるがごとく止まらないものだったりするのだ。

 

 

 

(勘違いだろうが間違いだろうが、
始まってしまったものは仕方がない。)