「…クソッ!」
「…」

結局、テッドは押し切られるようにしてカイカを自分の部屋に入れていた。
もう放って来てもよかったのだが、(それは寝覚めが悪いし、)余計に面倒が増えそうなので、こうなったのだ。どうせカイカの世話係はテッドに押し付けられているのだし…

「………」

…じぃっと、テッドは睨み付けるように相手を見る。
カイカは、猫のようなまるっきり不可解な仕種で宙を眺めているばかりだ。何を考えているのか、全くわからない。

(いや、それはいつも通りとして; …キス、か…)

嘘臭い。
本気で眉唾ものの話だ。
大体、その王子様というのは何なのか。施政者の息子の数はこの世界の何パーセントになるのか、知れたものじゃない。

「………」

が、ジーンの言った事が気にかかるのも事実だ。
する、しない、の二択が目の前でちらつく。
一応少しでも可能性があるのなら、した方がいいとは思う。…しかし、そう考えてしまう事自体何かの言い訳のように思えて、腹が立つのだ。

「〜〜〜カイカ、」
「に?」

既に何だか意識まで猫化しているような気がするカイカは、しっぽを一振りしてテッドの方へと4つ足で近づく。
そんなカイカの姿に覚悟を決め、テッドは近くまで来た顔を両手でガッシ!と捉らえる。
ここまで来たら、藁にも縋る思いだ!
ベットに腰掛けたまま、顔をカイカの方に近付けると――――カイカはぷるぷる首を振って、逃れようとした。

「にぁにぁ…」
「動くなっ!;」

どうやら、殆ど猫の意識と化してしまっているらしい…。獣が突然顔を掴まれたなら、それは嫌がるのも当然だろう。
しかし。今のテッドにそう考える余裕もない。
折角、恥ずかしいのも我慢して、万が一の方法を実行しようとしているのに、相手が嫌がる…。それは、プチッときても仕方がない。

「このっ…!(怒) 大人しくしろッ!!」
「にぃにぃにぃっ」

ベットの上を転がりつつ、猫ぱんち猫きっく猫ひっかきを繰り出すカイカを取り押さえ、馬乗り状態になって顔を寄せる。
………強●のような状況だ。我に返ったら、憤死しそうである。(テッドが)

「にっ…」

むぐっと口を唇で塞がれたカイカは、息苦しいのかテッドの肩に手をかけ、爪をたてるような仕種をした。
顔を背けようともがくカイカを押さえ付け、勢い余って舌まで入れてしまう。

(何か…ちょっとザラッとしてる、か??;)

いつもよりも少しざらついた舌先が、カイカの猫化が進んでいる事を伝える。
勿論、これ以上進行すれば、剃刀並の威力を持つだろうが…何だかいつもよりも感触が違う舌触りに、テッドはついつい興味をそそられてしまう。
逃げる舌先を捉らえて、なぞるように味わうとカイカの抵抗が弱まって小さく身体が跳ねさせているのがわかる。
その反応と舌触りに、ついこれでもかというくらいに深くキスを与えた為、ハッと気が付き口を離した時には………

「に…ぃ……〜」

くたんとしたカイカが、とろけた表情をしっぽを揺らめかしていた…。
―――――やり過ぎたーッ!!;
しかも、戻ってねぇッッ!!;、とテッドは心の中で叫ぶ。
思わず頭を抱えたくなるが、そんなテッドの目の前には誘うように不規則に熱い呼吸を繰り返し、しっぽを揺らすカイカがいる訳で………

「に…ぃ」

…何だかマニアックな感情が目覚めてしまいそうだ。
落ち着こうと深呼吸をするテッドの腕に、誘うようにしっぽがふにふにと当たる。

「……〜〜〜」
「に…ぃ〜…」

咽をぐるぐると鳴らそうとするようにシーツに顎を擦り付け、落ち着かない様子で小さく身じろぎ続けるカイカ………
辛うじて人の瞳孔のままの瞳が潤んでいるのも、開いた口の端から濡れた液体が零れているのも自分が原因と言えば原因の訳で…………
この場合獣●になるかならないかと言えば、判定待ちという訳で……………
こんな状態のカイカが、自力でどうこう出来る訳もなく………………

(いや、いつも通りでも、自分でどうこう出来ないかもな…;)

現実逃避気味にそう考えつつ、カイカの頬に手をやり、撫でてやると、相手はふにゃんっと一声鳴いた。

「にぃ…ぃ…」

ザリザリと舌で指先を刺激してくる相手は、誘っているのかいないのか……

「っ〜〜〜あーくそッ!;」

テッドは指をカイカの頬から外して叫ぶと、ていっ!とばかりにカイカの上に覆い被さり、怒ったような照れたような顔で呟いた。

「…元に戻ったら文句ぐらい言わせろよッ…!」
「ふ、に…」

上着を剥ぎ取り、ぐにゃりと力の抜けた体を裏返してズボンまで脱がそうとする…と、腰の付け根からしっぽが生えているのが目視出来た。

「………(ホントに生えてるな…)」

形のいい臀部から伸びているしっぽを、(さりげなくその下部分から)ふにっと触ってみる。

「にゃ!」
「………」

…びくりとしっぽと身体が跳ねた。
再び、ふにふにと触ってみる。

「にぃぁ!」

本物の猫にすれば引っ掻かれるような行為で、カイカは反応を示している。
それにつられて、更にふにふにふに…。

「ふにゃぁ…!」

真っ赤になってフルフルする姿は、いつもとはまた一味違った反応で…何か可愛かった………。

手から手袋を外し、尻から太腿にかけてのラインもなぞると、ピクピクと小さくしっぽと身体が跳ねる。
男ではあるものの、異様に色気のあるそのラインは、…口に出して言った事はないが…かなり気に入っている箇所の為、うっかり触り続けてしまう。

「ふ…に…」

触られただけで、敏感に反応を返す所は変わらないが、…やはり舌っ足らずに自分を呼ぶ声はない。その事に、僅かに感情が波打つのを感じたものの、露になった形の良い尻――日に焼けていない部分と、焼けて色のついた部分との対比で、相変わらず妙な色気を感じる――…の狭間に誘われるように指を入れてみる。

「にぃ…ぁ、」

(てっど…)

潤んだ海色の瞳で、拙く自分の名前を呼ぶ声がないと、…何だか無性に落ち着かない―――同意でヤっているのかそうでないのかがわからない。
…訳がわかっていない相手を誑かしているような気分になり、妙に焦る。…一応、普段では同意の上でコトを運んでいる。

「…くそっ!;」
「にぃッ」

中に異物が入り込んだ感触で、カイカは暴れようとしたものの、それを無理矢理背後から押さえ付けて阻む。

「――〜〜―〜っに〜〜〜…っ」

にぃにぃとしか鳴かない口を口で塞ぎ、はからずともキスを繰り返す事になった。
―――それで、耳やしっぽが消える訳でもなく、性器や生殖器替わりの器官がヌルヌルと濡れそぼった時には、くったりと力無く垂れて下がっている状態だった。

「に…み…〜〜っ」
「は…っ」

力の抜けた身体を表返し、相手の上にのしかかり…内側へ入り込む。

「―――にっ…ぃいいいいっ…」
「っつ…」

心持ち尖った爪先で背中を刔られ、痛みを感じたものの、――小さく主張を見せていた――胸の突起を吸うと、「みっ」と一声鳴いて縋り付く動きに変わった。

「みっ…ぁみっ…に、」

海色の瞳が動物的な欲求に従い、潤んだ色に変わる。
欲求のまま、腰を擦り付けて来るカイカに促され、テッドも自分の欲望通りに動き続けた。
にゃあにゃあ鳴き続ける口は、噛み付くように塞いで揺さ振ると、テッドの腹に熱いものがぶち撒けられる。…しかし、相手の動きも中の締め付けも変わらず、自分も律動を止めない所が妙に動物的だと自嘲する。

「カイカ…っ」
「にぃアッ…!」

こんな時に触った覚えのない、ふわふわの毛並みの耳に触ると更に内側が締め付けられ、身体の横で揺れているしっぽを下から上へなぞると、ビクリと震えて耐え切れず這って逃げようとする。

「―――――ッ」

再び鳴き声が洩れないように口腔を蹂躙し、(いっそ開き直って、)普段はないそれらに愛撫を加え、収縮を続ける中に精液を吐き出した。

「にっ…みぁっ……みっ…ぃ」

鳴き声と荒い息を吐き続ける唇に、一縷の願いをかけて何度も口付ける。
…そして、自分の脇腹をなぞり続きを促す薄茶色のしっぽに誘われ、再び腕の中の身体を犯し始めた―――。









で…。


結局、そんな爛れた夜が過ぎて朝が来た後…奇跡が起こってカイカが元の姿に戻った――――訳もなく、カイカには新たにヒゲが生えていた。
不精髭などではなく、猫のヒゲらしいピンと立派な透明のものである。

「にぃ。」
「……〜〜〜〜;」

ガックリと頭を抱えたテッドは、もうどうするべきかと悩みへこんでいた…。
この調子では、近々猫だかネコボルトだかに変わってしまう事だろう…。
手で頬を拭い、猫が顔を洗う様子を見せているカイカは、すっかり猫そのものの様子だ。

「はぁ…;」
「にぁ?」

テッドが溜め息をついたのに反応して、首を傾げてみせる仕種に、無性にやる瀬なさを感じて泣きそうになってしまう…。

「…カイカ…」
「み?」
「………万が一っお前が猫になったら…オレが責任持って飼ってやるからな……」
「…」

暗雲を背負って呟いたテッドに、カイカは―――


ぺろっ


「っ!?;」

親愛を示すごとく、不意に口の端を舐められたテッドは、ギョッとして顔を上げる。その先には………変わらず…いや、ある意味大きく変化を見せたカイカがいた。

「カイカ…」
「?」
「…オレの名前を呼んでみろ!」
「てっど?」

――――――戻った!!

耳やらしっぽやらヒゲも消えて、すっかり猫らしさが消えている。
不意打ちに起きた出来事に、喜ぶ事も忘れて、テッドは固まってしまう。
―――一体どうしてカイカが元の姿に戻ったのか………。
キノコの効力切れも考えられるものの、直前の行動は『カイカからのキス』…………………ふと思い出すキーワードは、『王子様からのキス』……………―――――いつか立場逆転にッ!?

「ッッッ……!!!!!;」
「てっど??」







 

 

 





「おう、ホントに元に戻ってるのか!」
「…(こっくり)」
「くぅー残念だ!もう少し早く帰って来れてりゃな〜!」
「…」
「お前は俺の息子みたいなもんだからなぁ、そんな晴れ姿(?)が見たいと思うのも当然―――と。テッドはどうしたんだ??」
「部屋から出て来ない。」
「どうしたんだまた?」
「「…暫く考えさせてくれ。…人生について、」って。」
「は???」



答.『王子様』『から』のキス

 

 

この(分かりにくい)オチだけがやりたかっただけの話だというのに…
何故だかこんなにも完結に時間がかかってしまったり…(遠い目)
アレですね。エロスなシーンを、時間を置いて書いちゃいけませんね。
何がしたかったのか自分でもわからなく…(吐血)
しかもまた生温くっ…!;クッ;どうやったらドエロな話が作れるのやらっorz
めげない逃げない羞恥心を棄てろー!>ダッシュ

…しかし、時間を置くと見直しすら出来なくなる罠…