ふわふわの白い毛並みの耳が、緑の草花の中からひょこりと覗いていた。
風に煽られるまま、草と花と白の毛並みは揺れ続ける…。


(またアイツか…!)


短い丈の草の中で、全く隠れるつもりもないその呑気な兎の様子に、森の狩人である狼はピキリと青筋を立てた。
それもその筈で、その耳の持ち主であるヒエラルキー底辺の兎は、無防備にも腹を晒して昼寝をしていたのだから!

「おい…!起きろッ!」
「…」

ピクリと耳が動くが、まだその耳の持ち主は起きようとはしない。
年齢以上にあどけない寝顔を見せながら、天敵とも言える肉食獣に腹を見せているだけだった。
狼――テッドも、この兎が野生ではなく、どこかの金持ちに飼われていた飼い兎で、森の掟に疎い事は知っていたが、ここまで無防備だと生き物としての本能が欠落しているとしか思えない。

「カイカ!!起きろッ!無防備に寝るなって言ってるだろうがッ!!」
「…てっど」

そこまで狼が怒鳴り付けて、ようやく兎はゆるゆると瞼を開き、海の色をした瞳を覗かせた。

「…おはよう」
「おはようじゃないだろッ!」
「…こんにちは?」
「違うッ!」

尻尾を逆立て、再び怒鳴り付けてからテッドは脱力する。
(自分ではそうは思ってはいないものの、)面倒見の良いこの狼は、カイカを見掛ける毎に度々注意を促しているのだ。
…肉食獣である為、周りを遠ざけて(狩りの罪悪感を減らそうと)過ごしているテッドにも、この兎の危うさには黙っていられなかった。人に飼われて生きるというのは、こんなにも危機感を無くさせてしまうものなのだろうか?

(それでも捨てられたんだよな…コイツ)

ある時、飼い主である金持ちに捨てられ、森の中にいたこの兎は―――捨てられた事にあまりショックは受けていないらしく、最初からぽやぽやと森の中で過ごしていた。本人は気にしていないのだろうが………
テッドの向ける視線に、その話題の兎は無表情ながらも子供っぽい仕種で片耳を折った。どうやら「なに?なに?」と聞いている様子だ。

「…別に。というか、お前好い加減こんな見晴らしの良い場所で無防備に寝るなよ(怒)」

「てっど」

兎はまだ寝転んだままテッドを指差した。

「…? 何だよ?」
「大丈夫」

……………『テッドがいるから大丈夫』?
そう言いたいのだろうかと考え、カイカを見てみると相手は無表情な顔を珍しく笑顔にしてテッドを見ていた。

「〜〜〜〜っ」

途端、顔が熱くなる。
信頼を寄せてもらうのは嬉しいかもしれないが、自分は狼、相手は兎。狩る者と狩られる者なのだ、このままでいい訳がない。

「大丈夫な訳あるか!」

ガアッ!と吠えると、カイカの上に獲物を狩る時のごとく飛び掛かるが―――…

「…?」

いまいちよくわかっていないのか、獲物は耳をピーンと立てるだけで、特に抵抗もしなかった。

「……………(怒)」
「…??」

再び脱力する。
力なくしっぽをうなだれさせたテッドは、半ば八つ当たりにカイカの首筋に噛み付いた。…勿論軽く甘噛み程度だ。

きゅっ!

さすがにそれには驚いたのか、兎は鼻から空気が抜けた声を出すと、テッドにしがみついた。

――――あ。

マズイ。
そう気が付いたのは、今の自分の体勢に思い至ってからだ。
襲い掛かるというか…確実に押し倒している体勢だ。しかも相手からは抱き着かれている。

「……………」
「……………」

…何となく身動きが取れない。
しかもカイカが(無表情ながらも、)耳をピルピルさせているので、無意識に噛み痕を舐めてやったら、更にきゅうっと回された手に力が入った。ますます引っ込みがつかない。

「カイカ…」

妙に口の中に唾液が溜まってくる…。
食欲ではない別の欲が、直ぐさまカイカに噛り付きたいと訴え続けている。

「?」

しかし相手はよく理解出来ていないのか、目をしばたかせるばかりだ。
誘われるように、うっかりその目許をぺろっと舐める。

「、」

ぴくりと身体を跳ねさせ、兎はまじまじと自分の上にいる狼を見つめた。

(早く抵抗しろ…!)

今ならまだ理性が打ち勝つかもしれない。そう思い、相手からの拒否に一縷の望みを託したのだが……

「てっど」

ちゅっと頬に、鼻というか唇をつけられる。

「すき」

無表情ながらも、相手はまっすぐ透明な視線を注いでそう言った。
………もう親愛だろうが、そうでなかろうが、狼だろうが兎だろうがどうでもいい。
テッドは素直に開き直った。(ただプッツン来ただけかもしれないが。)

「…ああ」

オレもと、ひとりでに口が動き、何かに押されるままカイカを押し倒した。…改めて、そういう意味で。




獲物に対してではなく、親愛の意味を篭めて舐めると、カイカはビクリと身体を跳ねさせた。

「ん、…ふ、??」

拒否するつもりはないのは確かだったが、それでも戸惑ったように潤んだ海色の瞳がテッドを見つめていた。
更にその白い太腿を腕で捉らえて、そのまま舐めると、ますます「どうすれば良いかわからないです」といったように瞳が揺れる。
そんな様子を見ながらもカプリと太腿の付け根に歯を立てる、するとピルピルと尻から覗くしっぽが震えるのがわかった。
――…全身を舐め回したい。
そんな気持ちを押さえ、カイカの身体を裏返してのしかかる。

「ん、きゅ…、ふぅ」

重たいのか鼻からきゅうと洩れる音がしたが、口を舌で舐めてると別の甘い音に変わった。目を細めて、舐められる感触を与えられるままになっている。
ついでに触り心地がいい、白い尻尾の生えた尻から太腿のラインを、無意識の内に撫で回してしまう。

「ふ…ぁ…、ん…ん?」
「………」

…一応雄だというのに、この色気は一体なんだ?
瞳を熱で潤ませ、熱い吐息を漏らすカイカに、また二三本テッドの理性が切れた。
そのまま、つい反射的に尻のすぼみへと指を入れてしまう。…と、カイカの耳がビーン!と立った。

「ぴ!!!?」
「こら動くなっ…!;」

尻尾の毛並みまで逆立った所を見れば、予想すらしていなかったことは理解出来る。
―――理解出来るが…我慢は出来ない。
猫科の動物のように獲物を嬲る趣味はないものの、抵抗をされると本能的に押さえ付けたくなってしまう。
力一杯カイカにのしかかったまま、こちらを向いた顔に噛み付きいて口の中を舐め回す。

「……!………、…!!」

入れたままになっていた指を、更に中まで入れると、カイカの抵抗は少なくなった。
…代わりに、ぴるぴると耳が震え、何かを訴えるように視線を注いで来ているのを感じる。

「……………;」
「けふっ…!」

その至近距離からの訴えに負け、顔を離すと、タラリと唾液が糸を引いて、カイカは軽く咳込んだ。

「…カイカ」
「…」

何々?と耳が動く。警戒する様子はない。
テッドは素早く説明しようと考えた。

「今から、」
「…」

寧ろ、進行形の筈だ。

「ここに、」
「…、」

既に指が入っている。

「これを、」
「…。」

カイカの視線を股間部分に向けさせる。

「入れる。」
「…(ふるふる)」


…カイカは首を横に振った。


沈黙。

「……………今更止められるかッ!!(怒)」
「…!、…!!!!!」

じたばたじたばたたた!と、カイカももがくものの、肉食獣に草食獣が適う訳もない…。
後ろ脚キックをしようとも、中途半端な動きになり、既に中に指が入っている為逆に刺激的な動きになっている。
しかも、もがいた事で前立腺にでも当たったのか「きゅッ!」と鳴き声を上げて、カイカの抵抗が一瞬止まった。
――その隙を逃さず人差し指も捩込むと、カイカの背筋がきゅうっと反り返る。そこに舌を寄せて、舐め上げる。
…感度は良い様で、カイカは震えて刺激に反応を見せた。
犬科の本能のまま、ぺちゃぺちゃと音を立てて舐め続けると、ますます相手はぷるぷると震える。
カイカの性器自体も勃っているのがわかる為、繁殖行動(いや、繁殖は出来ないが)として身体は理解出来ているようだ。
折角二本指が入っているので、内側を拡げるように動かし、中まで舐める。

「ひぅっうぅ…」

鳴き声のような喘ぎ声が断続的に聞こえるが、敢えて無視して気の済むまで舐め続けた。
いい加減、限界なのだ。
しかし、雄同士のこと…繋がる部分を何とかしなければどうしようもない。

「ひ、……ふ…」

多少狭いものの、何とかなりそうなくらいに唾液に塗れさせた後、ようやく顔を上げる。
カイカが少し気が抜けたような声を発したのと、尻尾の毛が逆立っているのがわかったが…肉食の雄として、ここは引けない。
ぴるぴるしているカイカを仰向けにひっくり返し直し、触り心地の良い太腿を掴んで引き寄せると、―――一気に興奮した性器を準備したそこに押し込む。
内側から拡がっていく、あられもない音が聞こえた。

「ふ、ぃいぃ―――っ」
「くぅっ」

締め付けられる刺激に、本能がそのまま突き上げたいと叫ぶが…、そこはぐっと堪えた。
何故なら、カイカの耳はこれ以上ない程に垂れ下がり、瞳は混乱と不安と無理解を伝えていたからだ。

「あ、のなっカイカ…」
「ふ、ふぅっ…て、と…?」

正直、辛い。が、このままでは強●のままだ。

「…ツガイなら、繁殖行動をとるよな?」
「…」
「その、ツガイになる…り、たい…意志表示、だ!!」

しかし、繁殖は出来ない。種族ではなく性別的に。
テッドはやけくそ気味にそんなことを叫んだ。
この段階で言う羽目になるのが、とても彼らしかった…。(つまりヘタレだ…)

で、カイカだが、さすがの彼にも、ツガイの何たるかは知識にあったらしい。
しかし、うすぼんやりとだ。
今のこの行為は、嫌なことや痛いことをされている訳ではなく、大事なツガイになる為の行為だと理解した。(…多少不正解である。)

「てっど。」
「、」

嬉しい。嬉しい。
一緒にいられる。
ずっといられる。

…そんな意志が伝わる笑顔だった。
そして、更にテッドの心と下半身は撃ち抜かれることになった。

後は、野性の力が大暴走だ。



「ぅっひゅ、て、どっ、てっ…!ふぁあぁあっ…!!」
「うっつ…ッッ!」

接合部からはびゅくびゅくと精液が溢れ、
下腹部は白濁塗れ、
絶えず…いや、たまに絶えつつも…身体を打ち付ける音が響き、

………合体が解かれた後は、カイカの内から実る筈のない子種が大量に溢れ出た…。

「………」
「だ、大丈夫かカイカ…ッッ!!」

テッドも腰がガクガクになっていたが、内側から精液が溢れるままに、地面の上から動かなくなっているカイカの方が重体である…。


かくして、森には狼と兎という(異色な)一組のツガイが生まれたという…。



 

 

物凄い時間をかけて書いた割には、ラストで逃げた。
友人に見てもらった所、廃と腐とショタの塊だと評される。
…うん。自分でもそう思う!(笑)
まあ、とりあえず狼兎パラレルを希望された人に捧げます。(いらねえ!;)