「―――と、言う訳でお前ら罰掃除な☆」
にこやかーに言い切ったのは、この学園の権力者(というか生徒会長)カルナだ。
つい先日、カナタが大型バイク(無免許)を暴走させ、学内を荒らし回った事件で『彼ら』は呼び出しを受けていた。…器物破損諸々の罰が掃除というのはかなり甘い方だろう。
「カイルさんがいるなら僕は問題なく掃除しますよー♪♪」
「……………(汗)」
「何で俺まで…(怒)」
「…」
カイルはカナタを止め切れなかったから…;と納得の面持ちだが、後者2名はただ現場にいただけの巻き込まれた側の人間だ。…納得出来ないのが当然である。(カイカはよくわかっていないようだが)
「まあ、カイルがいないと主犯者が大人しく罰を受けないだろ?」
「当然ですね!」
「後はまあ…ついでだ!」
「ついでで済むかッ!;(怒)」
激怒するテッドの反応はこれもまた当然の事だったが、そんなもので怯むような生徒会長様ではない。
「じゃあ任せたぞ☆」
と言って、あっはっは☆と去っていくカルナを止められる者はこの場にはいなかった…。(止められるのは副会長のサナくらいだ。)
…結局4人は、貴賓室を掃除する事になった。
4人は、割とシンプルな造りになっているが、貴賓室というだけあって高そうな器具ばかりが陳列されている場所で、掃除道具と共に並んでいた。
「よーし!雑巾かけますよー!絨毯の上とかを!」
絨毯!?;とツッコミが入るのを待っていただけなのか、カイルが止めに入ると少年はあっさり卓上を拭きに行った。…色々と高そうな割れ物が並んでいる為、かなり心配な様子だが。
「…」
「あ☆カイカさんもこっちですか〜?」
そこへカイカが加わったものだから、不安は倍増だ。
(大丈夫かアイツら…;)
見ているテッドが心の中で心配していたが、これ以上拭き掃除担当が増えても仕方がない為、大人しく掃除機を手に掃除を始めた。それに、意外にもカイカは慣れた手つきで花瓶を磨いている。
「テッド、」
「ん?」
「巻き込んでごめんね;」
「いいって、気にすんなよ(お前は)」
カイルに全く罪はない為、テッドはあっさりと頷くとチラリと背後を振り返った。
「カイカさん、この間まんじゅう50個食べたって噂聞きましたケド本当ですか〜?」
「…(こくっ)」
(反省してねェ…ッ!)
喋りながら掃除をするカナタに、反省の色は窺えなかった…。
「…ごめんね、カナタが…;」
「〜〜〜〜〜;」
その謝罪に対しては何ともコメントのしようがないテッドだった。
「よし!バッチリです!」
「…(こっくり)」
「終わったな…」
「うん…」
掃除の途中、『壷お手玉』なるものを披露して血の気を引かせた後輩に、虚ろな視線を注ぎつつ、2人は頷きあった。
「そんな訳でカイルさん!テッドさんとカイカさんを二人きりにするべく僕とデートで帰りましょう!!」
「え??」
「何だその唐突な流れはッ!!?(怒)」
「え?気をきかせたつもりなんですけど〜♪?」
露骨過ぎる。
「じゃあ後は若い二人に任せて〜♪です☆(笑)」
「え?カナタ?;」
恋愛問題に鈍いカイルを無理矢理引っ張り、カナタはデート帰宅に乗り出した。
残された二人(というかテッドのみ)は当然気まずい訳で………
「……………」
「…」
「…帰るか;」
「うん」
こっくりと頷くカイカは、何も気にした様子はなかった。
(というか、テッドはカイルの家に下宿している為、帰宅場所は同じなのだが…)
まずは放置された掃除用具を用具室に戻しに行く為、二人は帰宅準備をした後並んで校内を歩いていた。
「…………(汗)」
「…」
気まずい。
先程の露骨過ぎる気の使われ方に、カイカが何かを悟ったという事はなさそうだったが…。(何せ無表情な為、判断を付け難い)
…ほんの少し前に自覚した感情は、自分でどうこうする前に、周り(カナタ)に煽られて本当に恋愛なのかどうなのか判断がつかなくなっている。
「……………」
「?」
チラッと隣を見つめれば、(視線を感じたのか)カイカは箒を持ったまま首を傾げた。
……………可愛い。――――――――――ガンッ!
反射的にそう思ってしまったテッドは、そんな頭(割と末期)を何とかしようと、自ら用具室の前の壁に頭を打ち付けた。
「てっど」
「…気にするな;」
奇行をとった自覚のある彼は、そうカイカに言い渡した。
そうして足を止めた為、用具室の中から話し声がする事に気が付いた。当番の学年が掃除用具を取りに来ているのか、と思いテッドはドアを開けるか迷い中の様子を窺うと…。
「ナナミちゃん!ナナミちゃん!スクープよ!この間吸収されたラズリルの学校!校長先生と生徒がデキてる現場が見付かって潰れたそうよ!――ほら、この間来たあの無表情だけど綺麗な人と!」
「え〜っと、それってカナタがこの間友達になったカイカさん??」
「名前はわからないけど!多分その人よ、」
「え?え?『デキてる』って付き合ってるって事なの??」
「そうよ!教師と生徒の恋愛は有りって事!私もフリック先生と頑張るわ…!そういう訳で協力してねナナミちゃん!!」
問題はそこなのか!!――――という突っ込みも思い付かない程、自分の頭が凍り付いているのをテッドは自覚した。
それでも、確認しようとゆっくりと口を開く。
「…今の……」
「?」
聞こえなかったのか、カイカは首を傾げた。
「…噂、本当なのか…?」
「………」
無表情に、それでも睫毛をしばたかせるというしぐさを見せ…
「…」
―――暫くの沈黙の後、カイカは頷いた。
「そうか…」
ドス黒い何かが身の内から溢れるのを感じつつ、この感情が前途多難である事を知った。