実験

 

 

赤い紐がまだ子供っぽく見える指の上を、綺麗に絡まりあい、何かの形をとっている。

それを今度は、細くともしっかりした指が拙い動きで取ろうとしている…。

 

…で、何をしているかと言えば、

 

「…何してるんですか?」

「あやとり!」

きっぱり!と、呆然としたフッチの問いかけに、カナタは答えた…。どうやら、フッチはカイルのお見舞いに来たようだ。

…そのお見舞い相手はと言うと、そう。あやとりをしていたりしたのだ。(しかも、していると言っても指先に紐をもつれさせて遊んでいるだけだ…。)

それをカナタはうふふ〜♪と悦の入った笑顔で見つめていたりする。

確かに、少年にとってはおいしい状況な訳で、紫の上計画…v等と企んでしまってもまあ、仕方ない事だろう。…かなり、呑気だが。普通 、記憶喪失でこんな状態になっていたら、もっとパニックだというかなんというか…とにかく、危機感と言う物がこの城主様には欠落している。

「それで、カイルさんの様子は?」

「見ての通り………とてつもなく可愛いデスヨ」

最後のセリフを、スルーする事で、フッチはなんとか平常を保った。

なんにしても、カイルの様子は相変わらずなようだ。何もかも忘れた様で、ただニコニコと満面 の笑みを見せている。

「………」

どうする事も出来ないが故の困惑の視線を、カイルに注ぐが、それに対して返されたのは、にこっと可愛らしい笑顔で、思わずフッチは釣られて笑みを返してしまった。

…。

「はっ!;」

そう、カナタの目の前で、

「………(怒)」

…かなり、視線と沈黙が怖い。

かなり怖い。

 

そして、見舞客は、嫉妬で暴走したリーダー様に、シャットアウトされた。

 

 

 

 

 

 

「………」

二人っきりになると、自然とため息が洩れた。

肩にそのまま凭れ掛かるような体勢で、眠そうにしているカイルに声をかけてみる。

「ねえ、カイルさん。」

「?」

首をことんと傾げる。

「今言ってもわかんないでしょうけど、ほんとに忘れたかったんですね。…試してみた僕も僕ですけど、」

「?」

目の前で、眠そうに、しかし楽しそうに微笑む姿は、以前からは考えられない程、自然な寛ぎがある。

『嫌な想い出でも忘れてみましょうか、』

 

 

苦しかった過去。

しかし、それと共にある幸せな記憶。

そして、今。

今の、自分と得た想い出。

 

比べて重い方、どちらを選ぶかの実験。

 

 

「…もう暫くは、このままでいさせてあげます、」

「……」

 

カナタは珍しく見せる、慈しむような表情で、カイルにそっと口付けると、既に眠り始めてしまったカイルを抱き上げてベットへと運んだ。

 

 

 

後、少しだけ、

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