昔の貨幣

 

 

俺の名はナッシュ=ラトキエ…平たく言うと、スパイだ。

「あっちですーーー!!絶対捕まえるんですよーーーー!!!!!」

「おーーー!」

…そして、今の状況を更に平たく言えば、―――――命の危機だ。

 

 

同盟軍本拠地、ぼっちゃんラブ城。

そこは、本拠地と言うだけに、規模は大きく、商業も盛ん、人の出入りも多い為、もはや都市と言っても通 りそうな場所であった。戦争時でこの活気であれば、戦争終了後(良い方向に、)がとても楽しみな様子だ。

…しかし、そうまで人の出入りが激しいと、幾ら警護の者がいると言っても、細作が闊歩するのにも丁度いい事となるだろう。

そう、そう考えたナッシュ=ラトキエ氏も、この城に侵入して来たのだ…そして、その時の話が…

 

 

何故だ…

何故俺はこんな目にあっているんだ!?

荒い息を堪えながら、壁の影に隠れる。

そう、確か俺は城の商店街を、旅人を装って歩いていただけのはずだ。

そして、偶然にもこのオレンジドラゴン軍リーダーとぶつかり…

「ひっ捕らえるんですーーー!あはははは〜〜〜♪」

 

ドンッ、…チャリーン♪

「あ、ごめんなさいですー」

カイルと城内を散歩していた途中、カナタはすれ違い様に人にぶつかってしまった。ぶつかった相手の男も、(多少慌てた声だったが、)「こちらこそ…っ」と謝罪し、それはそれで話は済んでいたのだが、不意にカイルが気付いた物があったのだ。

「あ、落とし物…」

「え?あ、本当ですー。」

ひょいっとカナタは地面にしゃがみ込み、一枚のコインを拾った。銀製のようだが、少し古びた色をしている。

「――――見た事ない絵柄ですね〜…」

「?」

一応貨幣のようなそれを眺めて、首を傾げる少年の手元を、カイルが覗き込む。

「あ、」

「えっvカイルさんわかりますかー♪」

「…多分、ハルモニアの記念硬貨だと思う、昔の…」

「って言う事は…」

てんてんてん…。と2人の間に間が空く。

「――――スパイです〜〜〜♪久々にスパイ狩りですよーーーー!!」

「まだそんな命知らずな奴がいたんですか!?(汗)」

「信じられませんっ…!」

「あ…カナタ(汗)まだそうと決まった訳じゃ…」

コイン収拾の趣味の人かも知れないし、後は何となく貰った物を持っていた人かも知れないし…というカイルの意見はカナタには届かなかった。所詮は、戦争中と言う事なのだろう。(違。)

 

 

「追い詰めましたよ…ふっふっふ!」

「〜〜〜〜〜っっ!!;」

俺は植え込みに上半身を仰向けに減り込ませつつ、俺よりも一段高い所にいる少年を見上げていた…。

間違いなく俺は殺られる…!(しかも何故か鍬を手に持っているし…)

「…(僕はした事ないですけど、)子供が良くやる遊びにカエルに藁を突っ込んで、膨らませて遊ぶって言うのがありますよね?」

いきなりなんだ?;

確かにそう言う遊びはあるが…それは間違って膨らまし過ぎて、内臓ごと爆発する場合が…

目の前の少年は、にこ〜っと無邪気、いや、邪気に塗れた笑顔を浮かべた…。

「実は僕、最近『トード』の呪文を覚えたんですよね〜♪」

「ひぃぃいぃぃいいいいいいぃいいぃいい!!!!!;」

なんだかよくわからないが、カエルにされる事(と内臓を破裂させられる事)だけはわかった。

どっ…どうすればっ…!

どうすれば逃げ切れる!?

 

がしいっ!

 

「!?」

「逃げてください…!;」

「あっv!か、カイルさん!!カイルさんから抱き着いてくれるなんてっ!!」

誰だか知らないが、助かった…!!

俺は植え込みから起き上がり、脱兎のごとく逃げ出そうとする。

「これも忘れずに…ッ」

投げられたコインを俺は反射的に受け取った。

見てみるとそれは、以前誰だかから受け取った古い貨幣だった。

これはもしかして全ての原因なのか!?

 

俺は一体なんでこんな目にあったのか、まったくわからないままに、ラッキー(不幸)ポイントを増やして、その場から逃げ出したのだった…。

一体この話に何の意味とオチがあったんだ!?←永遠の謎。

 

end