魔法
「恋の呪文はスキトキメキトキス〜♪」
「…」
グラグラ煮えたぎる鍋の前で、カナタは何やら鼻歌まじりに作業をしていた…。
ツーン!と鼻の奥を刺激する異臭も漂ってくる。
カイルはさり気なく視線を手元の本に戻した。…何故止めないかと言うと、あまりの雰囲気にさすがのカイルも声をかけるのを躊躇ったからだ。
「るー♪るりら〜♪トカゲのしっぽーネコのヒゲ〜☆ムササビの毛〜」
「…」
ペラット本をめくる。
「ひいらぎの実に、星の砂、乾燥鬼ヒトデ〜♪イモリの黒焼き〜♪ハリセンボン〜☆」
「…」
「そして、鳥インフルエンザに感染中の卵〜♪ニコチン〜☆青酸カリー☆」
「!?;」
さすがに驚くカイルだ…。
「最後に秘密のエッセンスぅ〜♪」
振り向いたカイルの視線の先には、カナタが『バニラエッセンス』と書かれた瓶から数滴液を垂らしている姿だった。
「完成ですー♪これで魔法のおまじないが出来ますよ〜!」
「………?」
何だかわからないが、またカナタが何かをやっているらしいと、首を傾げるカイルだったが、その視線を気にせずに、カナタは出来た液体を細長い針の先に塗布していた。
そして、次の瞬間、
「は!」
「!?」
大分距離があったのにも関わらず、一瞬でカイルの目の前まで移動し、カナタはカイルに針を突き付けた。そしてカイルも、反射的にその針を持ったカナタの手を掴み、寸前で攻撃を止める。
そして、肉迫する…
「カ、イ、ルさ〜んっ!止めちゃダメです〜〜っっ…!!」
「理、由は…?」
「この、魔法のおまじないは、射止めたい意中の人☆の心臓に直接薬を打込まないと効かないんです〜っっ!!そして、永遠にカイルさんは僕の物に〜♪」
「『裁き』」
どかん。
「ううっ…カイルさんに怒られた…(泣)」
「ファイトよ!カナタ!!でも、お姉ちゃん魔法のおまじないより『惚れ薬』の方が聞くと思うわ〜」
「え〜それはなんか、邪道な気がするし〜;」
毒殺(魔法のおまじない)も充分邪道だ。