「はい、カナタ」
「ありがとうですーvvv」
今年も今年とて、前日の更にまた前日、そのまた前日から頼み込んでカナタはカイルにバレンタインチョコを貰っていた。
今年の手作りチョコは、チョコマフィンらしく、甘い匂いが手元から漂って来ていた。匂いからしておいしそうである。
「♪♪♪〜」
受け取ったシンプルな包みを、大事そうに抱えていたカナタだったが――――…ふいにその背後から声がかけられた。熊さんだ。
「そう呑気に毎年してると、バレンタインじゃなくてお歳暮みたいだぞ、(笑)」
ボトッ…!
…ビクトール的には特に意味のある言葉ではなかったのだろうが、カナタはぴしりと凍り付くのには充分な物だった…。
「カナタ?;」
「うっ…」
落としたプレゼントをカイルが拾い、しゃがみ込んだまま少年を見上げたのだが…カナタの目にはみるみる漢の汗が溢れ出ていた。
「うわーーーんっっ!!(泣)お歳暮じゃないんですーーーーーー!!愛の結晶で愛の証なんですーーーーーーーー!!!!!」
「あ。;」
そう言ってカナタは泣き逃げした…。(その愛の証を置いて走り去ってどうすると言うのだろうか?)
―――――そして、城内に異変が起こったのは、このすぐ後の事だった。
「うわーーーーっ!!俺のチョコレートがっ!!!!!;」
「オレのもだっ!!」
「俺のもッ!;」
受け取ったプレゼントとは、まったく姿の変わってしまったその物体を抱えて、兵士達は泣き崩れていた…。
まさか、こんな事になるなんて…!
…そして、その苦情は全てフリックの元へと集まるのであった。
「「「この怪事件をなんとかしてくださいっ!(泣)」」」
「どうにかしてくれと言われてもな、;俺には何がなんだか…」
と、たじろいで言うが、本心はこんな事には関わりたくないと言うのがみえみえだ。
「決まっているじゃないですか…っこんな事をできるのは…!」
「というかしでかすのは…」
「う;」
一番認めたくない現実を突き付けられ、フリックは絶句した…。
と、その時実にタイミング良く悲鳴が聞こえて来たのだ。
「キャーーーー!私のチョコが〜〜〜〜〜っ!!」
…その声の主はニナだった。
変わり果てた姿になった自分の手作りチョコに、涙を零して…いや、とても怒っていた。
「どうした!?ニナ!」
「あ、フリックさん!!せっかくフリックさんに渡そうと思ってたチョコが…味海苔の詰め合わせになってたのっ…!」
「…味海苔?(汗)」
まだ、バレンタインプレゼントに異変があったと言う事しか聞いていなかったフリックは、目が点になった…。
「しかもお得用パックだったんですっ…!」
「それは…;」
「あはははははーーーーーー!!みましたか!このバレンタインに浮かれ騒ぐ幸せカップル達ーーーーー!!(怒泣)」
…。
高い所からの声に、フリックは呆然と上を見上げた。そこには、やはり高笑いをしている少年の姿があったりした。
「カナタ…;」
「…復讐ですっ!!世の中全てに対して復讐兼八つ当たりをしてやるんですっ!(怒)」
「ひどーいっ!その為にチョコを味海苔に!?」
「あ、ちゃんとバレンタイン済んだら返却しますから。」
「意味がないじゃないっ!」
「世界の為なんですー!!(怒)」
ぎゃーぎゃー!わーわー!と騒ぐカナタとニナ…。
フリックはそれを見つめていたのだが、ふいに踵を返した。
そう、彼はとてもよい選択を選んだのだった…。
「おい、誰かカイルを呼んでくれ〜…;」
…。
…。
…。
「カナタ…(汗)」
「ああっ!!;カイルさん!!;」
世の中のバレンタインで幸せな時間を過ごしている恋人達の平和を守ったカイルは、手に先程のバレンタインチョコを持っていた。
「あぅーーだってカイルさんーーーーっ!!(泣汗)」
「…お歳暮じゃないから、」
「え?」
言い訳じみた事を口にしようとしていたカナタに、カイルはぽつりと呟いた。
「…本当ですか?」
「…、」
小さくカイルは笑んだ。
「〜〜〜〜っっカイルさんーーーー!!」
「はい、」
そっと差し出されたチョコを、今度は何の邪魔もなく、カナタはカイルごとしっかと受け取った…。
「チョコ回収部隊、無事にチョコを回収し終えました!」
「じゃあ撤収してくれて…;」
「フリックさーんっ!わたしのチョコを受け取って下さ〜いっv!」
まさに、幸せ絶好調な少年は、後ろのやり取りもまったく耳に入っていないらしい。
…しかし、ここで2人の中の誤解が一つ。
カイル→ お歳暮はこの時期送らないだろうし、バレンタインチョコが欲しいと言われて作ったので、お歳暮じゃなくてバレンタインチョコ。
カナタ→ 愛があるからお歳暮レベルの義理ではなく、ラブラブファイヤーナ本命バレンタインチョコv
…。
「カイルさん〜vvv本当に好きです〜〜〜vvv」
「…うん(でもちょっと場所が…>汗///)」
…しかしまあ、そんな誤解も、互いが気付かなければ幸せなのだろう。きっと…。
END