バレンタイン戦線

 

 

バレンタインという物…。

それは少女らにとっての祭典ではあるが、決してそれだけに留まる物ではなかった…。

 

 

 

「そんな訳でナナミ、今年は堂々とカイルさんにバレンタインのお祝い(?)を渡そうと思うんだッ!」

「よくわかんないケド、カナタカッコイイわよっ!!―――あれ??でもじゃあカイルさんからチョコもらわないの?? お姉ちゃんはちゃんとあげるからねっ!」

「ふっ…vそれはもちろん…」

カナタが渋く(?)決めた時、ちょうどカイルが歩いて来た。

「あ、カイルさん♪」

「?」

 

 

―――――チョコくれないと、カグツチ塔打ち立てて、そのてっぺんから飛び降りて首括ってやります!(断言)

―――――カグツチ塔って何ッ!?;

 

 

言うは易し…その典型的な例である…。

 

「だってーーー!!欲しい物は欲しいんですよーーっっ!!(泣)カイルさんの愛の結晶ーーー!!手作りーーーッッ!手作りの愛のこもったチョコレートーーッ!!手作りとかこだわりませんけどッ!形になった愛がーーーッ!!(泣)くれないと泣きますよっ!?この場で泣き崩れてやりますよーーッ!?」

ギャースギャースと泣き騒ぐ姿は、まるっきりだだっ子のそれである。

プライドを捨てたカナタ程恐ろしい物はないかもしれない…そう思う今日この頃であった。

しかし、いつまでも放っておく訳にも行かず、カイルは…

「カナタ、あげるから…!;だから…」

「やったーvv約束ですよーvvv僕も渡しますからーvv」

「あvカイルさんも作るなら、いっしょに…」

「デートの気持ちを味わいたいんで!外で待ち合わせって事で!!バレンタインデートです〜〜〜♪♪」

 

ちょっと早まったかもしれない…

そう思いながら、チョコレート製作の為に、一時帰宅をするカイルだった…。

 

 

 

 

 

バレンタイン当日。

 

「…………」

グレミオに見送られながら、カイルは手にしっかりとバレンタインのチョコを抱えてグレッグミンスターの街中を歩いていた。

…待ち合わせ場所は、広場の噴水前である。

 

――――――地元でデート(多分)…。

 

…妙に、いたたまれない気持ちになるカイルだった…。

噴水の横のベンチに座り、意味もなく空を眺める…。

…飛ぶ鳥と、どこからか香って来る薔薇の香に、ふと今日がバレンタインだと言う事を思わず忘れてしまう…、そんないい天気…。

―――――そんな中、どこからかヒシヒシと伝わって来る視線。

「――――…(汗)」

待ち合わせ時間、五分前にカイルがここに座ってからずっと感じる視線があった…。

初めは、カイルが帰宅した事に気付いたレパントが、密かに部下に様子を窺わせているのかと思ったが、…どうも視線に感じ覚えがあった。

「………(汗)」

 

視線を感じながらの5分は、非常に長かった――――…

 

 

「カイルさ〜んvvお待たせしましたー!!これバレンタインですー☆」

「ありがとう…;」

その言い方でいいのか!?というような言い方で、ドーン!とカナタは、大きな箱をカイルに渡した。…カイルは、「これは家に置いていこう…」と思った。

そして、それよりも…

このストーキングの犯人に、理由を聞かなければならなかった…。

「これ…チョコクッキーだけど、…それより」

「ぎゃーーーーvvv♪ありがとうございますーーーーーッッ!!!!!」

奇声をあげて喜ぶカナタだ。それに、また一瞬言葉を飲み込む羽目になったが、カイルはもう一度息を吸い込んで口を開いた。

「…なんで、(来てたのに)ずっと見てたの…?;」

「ああっ!!ばれましたー☆愛の力ですか!?なんかこーv待ち合わせーッvって感じのカイルさんを見たかったんですーvvしかも、バレンタイン仕様ですしーッv!v!」

ぷちストーカーは無事摘発された。(自白)

というか、今日の少年はいつもよりテンションが上がってしまっている。

…そんなカナタに文句を言っても、ますますテンションを上げさせるだけだとわかっているカイルは、その件については、聞かなかった事にしてあげた。

「………この後、どうするの…?;」

「バレンタインデートですからーッv薔薇屋敷でバラもらってー♪堀の魚と鳥にパンやってーv噴水前で昼ごはん食べてー♪トランの英雄像のコーナー見に行きましてー。その後、意味もなく交易場とか武器屋とか見たりの、街中ぶらぶらをしたいですーーー☆それで最後にグレミオさんに夕飯作ってもらいます!!」

「…トランの英雄像だけは除いて、」

「ラジャですvv」

ツッコミ所はそこしかないのかと言われると困るが、そこだけは少年に突っ込んだ。

 

―――…そして、カイルは毒気を抜かれてしまった事で気付かなかったが、カナタ以外にもまだ視線を送り続けている者達がいた…

 

 

 

「バラ〜vバラー♪カイルさん棘取りますから、頭に挿して下さい〜♪」

「なんで?;」

「見たいですからーv―――ギャ!!;プスッと棘刺さりましたーーー!!;痛いですー!!」

「カナタ、暴れないでっ;」

「…棘吸い出してくれます?」

「………;」

 

「堀の魚〜♪鳥〜♪餌を食べろー☆」

「………♪」

「所で、これって平和な時はいいですけど、危ない時は非常食用なんですか??」

「………………一応。」←何も今言わなくても…という顔。

「じゃあ丸々と太らせてやりますー☆」

「カナタッ!!(怒)」

「冗談ですよー;」

 

 

とりあえず、デートは順調かつ平和に進み、二人は再び噴水前で仲良くカイルの手作りクッキーをデザートに食べたりしていた。

「おいしいですーっv」

「うん…」

お茶など飲みつつ、仲良くカイルの横にくっついている姿は、普通の人から見ると微笑ましく、ちょっとでも邪な心の持ち主から見ると、歯ぎしりをしてしまうような物だった。

「♪〜♪〜」

機嫌よく鼻歌を歌うカナタ…

そんな周囲の思惑も知らず、カイルは「…そういえば、」とふと思う事があった。

「…ねぇ、カナタ」

「なんですか〜?」

「…どうして、グレッグミンスターで待ち合わせだったの?」

しかもこの場でデートだ。

あちらでデートは(無理矢理)何度もあったが、城下でのデートというのは今までなかった。…何せ、目立ってしかたがないからだ。

この状況は、不思議といえば、不思議な状態である。

距離的な問題やら、カナタの何か特殊なシュチェーションが理由かと思ったのだが…

カナタはにやりと笑った。

「――――フッ!敢えて言うなら宣戦布告でしょうか?」

「え?」

良くわからない事を言われ、カイルは聞き直そうとしたその時、―――周囲に妙な人影が現れた。

―――――それも、明らかに殺気を放ち、顔を隠し、手に武器を持った男らがだ。

「――――…」

瞬間、意識を切り替え、棍を堅く握ったカイルだったが…………………………………カナタの次の言葉に、一気に気勢を削がれた。

「そう!最近発足した『カイル=マクドールファンクラブ』の面々にです!」

「――――――…何?」

「最近出来たんですっ!僕も圧力掛けまくったんですケドッ!ついに出来ちゃって…(悔し涙)あんな人目につく所に記念像作るからなんですよッ!!…ちなみに、主催者兼名誉会長はレパントさんなんです。」

『許すまじ同盟軍…ッ!!バレンタインにまで我らが英雄を一人占め…!!』

『断固として我々は講議する!』

『ファンクラブの底力を嘗めるなよッ!?』

わざわざ声を変えての襲撃なさる、その手の人々ら…

「……………」

「僕のカイルさんです!!(怒)しかも会報まで作るなんて僕のカイルさんの人権侵害ですーー!!―――そんな訳で、こうしてれば相手を呼び出して壊滅させられる上に!カイルさんとイチャラブ出来て一石二鳥の作戦だったんですよ!!(後者の割合い大)」

カイルは再び棍を握りしめた…。

そう、もう城まで攻め上ろうとしたという…

…これが後に言う、血のバレンタイン事件である…(違)

 

 

まあとりあえず、仲良くバレンタインを過ごしたという…

―――でも、こんな騒動が起こるなら、バレンタインなんてなくして欲しいとカイルは思ったそうな…

 

 

 

 

夕食後。

 

「そういえば、この箱…何が入ってるの?」

「いいクリスタル掘りあてたんでーv写真立て作ってみましたー♪…しかもv中に僕とカイルさんの未来予想図を描いた絵画を飾ってみましたvvv」

「………;(開けるの恐いような…)」

恐怖新聞のような物をもらってしまったカイルだ。

 

 

 

…途中で訳がわからなくなりました…(遠い目)