エイプリールフール

 

 

視線を向けては外し、向けては外す。

何か言いたげに口を開くと、閉じてしまう。

頬は恥じらうかのごとく、薄桃色に染まっていて――――…

 

「カナタ…」

「何ですか?」

その様子を少年は、ドキドキ☆と胸を高鳴らせながら見ていたのだが、ようやくカイルは意を決したようにカナタの名を呼んだ。

そして、カナタが返事をすると、カイルはまたパッと目線を逸らし、何やら自分の手元を覗き込む。

また暫くして…

「…カナタ、」

カイルはキッと目の前の少年を睨むように見つめ、

 

きゅっ。

 

…抱きついた。

更には、小さくか細い声で言った事には、

「―――きょ、今日から明日まで…ずっと傍にいて…!」

「カイルさん!!」

恥ずかしそうにカイルはそう一息で言い切った。

「もちろんです!!――――――――――って言いたい所なんですケド。」

しっかりちゃっかりカイルに抱きつき返しながら、カナタは答える。

 

「エイプリールフールは絶対にやりますからv」

「………………(恥ずかしかったのに…>泣)」

 

同盟軍兵士らから寄せられた『打倒カナタ様 秘!口説き落とし足留め作戦脚本』(という名のカンペ)を握りつぶしながら、カイルは恥ずかしさに泣きそうになった…。

実に、エイプリールフール前日の話である…。

 

「さ〜♪今年はどんな嘘つきましょー☆ あ、約束ですからずっとこのままでいますね!」

「やめて…;(泣)」

 

 

 

 

はた迷惑この上ない企画、それがエイプリールフールではあるが…

――――よくよく考えてみれば、元々年中行事関連の企画で、迷惑を振りまかなかったためしがない。

「………(もう良くわからない行事は止めればいいのに…;)」

されど伝統行事。

無下に止める訳には行かない。

 

「いや、頼むから止めてくれッ!!(泣)それにエイプリールフールは伝統行事じゃない!!」

何があったのか、プスプスと頭を焦がしたまだまだ青いフリックが、男泣きに泣きながらそう言った。

「そうそうその通り、オレなんて城中に『シーナの口はでまかせ口〜常から口説き文句は嘘だらけー騙されるなーナンパ男に制裁を〜』(リズミカルに)って、言いふらされてナンパ連続失敗するしさ…」

「それは間違ってないんじゃ…?」

思わず正直に返答するカイルだ。

「大体、『このままでいる』って言った時に頷いて、一緒にいたら問題なくカナタの暴走を食い止められたんじゃないのか?(泣)」

「…ちょっと混乱して…;」

「せっかくオレがシナリオ書いたのによ〜」

「あっ!馬鹿…」

「シーナが?」

確か兵士らが泣きながら窮状を訴えて来て、短いシナリオを持って来たはずだったのだが?

だからカイルは頑張った訳で…

「ヤベ…ッ!;今のはエイプリールフールのウソって事で…グゲッ」

「しっかり馴染んでるんだから、カナタ止めなくていいよね?」

カイルは地味に、首を絞めてシーナを窒息させた。

しかも見事に気管を狙った為に、声も出せずに相手は白目を向いている。

「わーーー!!;その手を離してくれッ!!;」

「…………」

ギリギリギリ。

フリック以外、この修羅場を止めようとする者がいないのは、今日がエイプリールフールな為だ。(多分)ウソには騙されるものかと固く警戒している兵士達は、見てみぬ フリで目を逸らしている。

 

 

ドーーーンッ…

「あはははははは!実はそこに地雷があると言ったのは本当の事だったんですよーーー!!これぞエイプリールフール奥義の1つ!嘘ウソ返しの術ですーーー!!(?)」

 

…遠くからそんな声と音が響いて来た…。

「カナタ…(汗)」

「オレが引っ掛かった手か…」

これは本格的に何とかしないと、そろそろ死人が出そうだ。

派手な事が好きな少年は懲りもせず、火薬を使用したトラップをそこら中に仕掛け、エイプリールフール(の罠)に使用している…。

もはやここは戦場だ。

「どうしよう…?;」

「どうするも何も…」

どうしようもないだろう…(こうなってしまっていては、)

そう口には出さず、フリックは心の中で呟いた。

 

「こ…これ、を…読……」

「シーナ?」

絞める手が弛んでいた為、気絶寸前のシーナはなんとかそう言い、カイルに紙を握らせた。(…そして、その後気絶した。)

「? 何が書いてあるんだ?」

「さあ?―――『カナタ助けて犯される』…」

 

…。

 

カイルとそしてその周囲にいた人々の頭に意味が伝わったのは、5秒後だった。

…一応紙の最後には、「コレで誘き寄せた後、『エイプリールフールだったから』と言え」と指示があったが、そんな物が今のカイルの目に入る訳がない。

「!!!!?;(///)」

「な、なんて事言って…!」

フリックの上げた叫びに、顔を赤らめていた兵士らも、一気に色を青色へと変色させた。…それもそのはず。

 

「カイルさーーーーーーんッッッ!!!!!何があったんですかーーーーーーーーーッッッ!?!? ああッ!!今助けますーーーーーーーーッッッ!!うわーーーーーんっっっっ!!!!!;」

 

…何故だか巨大な日本刀を振り回しながら駆けて来るカナタ…。

――――――――部屋は血の惨劇と化した。

 

完!

 

 

―――――エイプリールフールは危険と言うお話…