エイプリールフール。
「え〜!本日はーおひがらもよくーエイプリルフール日和なんですが〜」
城の一番高い所で、カナタがメガホンを口に当て開会宣言のような事をしている…。
「――――今日嘘をついた人は閻魔サマに舌を引っこ抜かれちゃいますから、嘘ついちゃダメですよ!」
実に、エイプリールフール当日の事であった…。
その宣言を聞いた者の反応は、3つ。
完全に笑い飛ばす者、
苦笑いながらも、「カナタ様なら何かやらかすかも…」と半信半疑な者、
いつも通り関わるまいと黙殺する者…。
事件は、1番最初の反応を見せた者に起こった。
「そう言えば、今日は酒場でタダ酒が飲めるそうだぞ」
「どうせエイプリールフールの嘘だろ?」
あっはっは!などと和やかに笑い合う兵士Aと兵士Bの2人の前に、――――その平穏をぶち壊す物が現れたのだ…。
キュインキュインキュイン…!
「何だ?」
「オイ…!アレっ!;」
兵士Aと兵士Bが見た物は、―――――物凄いスピードでやってくる小さな樽だった!
いや、樽と言うのでは少し語弊があるかもしれない、何故なら樽にはアームとキャタピラがついていたのだから。
「からくり丸!?いや…違うッ!!;」
「オイッこっちに来…う、わあああああ!!;」
「Aーーー!!;」
兵士Aの名前を絶叫して、兵士Bはソレによって引き起こされた惨劇を呆然と見つめるばかりだ…。
「ああ…最初の犠牲者が出ましたか…」
兵士の耳にとても聞き覚えのある声が届いた。
それは、この城内において1番のトラブルメイカーかつ、1番の権力者(?)…同盟軍リーダーカナタの声であった。
まだ幼さを残すあどけない声ながらも、今はその声が悪魔…もとい、救世主のように聞こえる。
「カナタ様!」
「あれ程嘘ついちゃダメって言ったんですケドね〜………昼近くまで誰も言わないなんて予想より遅かったですね…」
ぼそりと付け加えられた言葉が真っ黒なオーラを出している。
「カナタ様!一体アレ…わあああああッ!?;」
「ふっふっふ…言ったでしょう、嘘をついちゃ閻魔サマに舌を引っこ抜かれると…!」
兵士の悲鳴を意に解さず、―――樽に羽(っぽいメカ)が生えた浮遊物体に乗った―――カナタは笑ってそんな事を言った。
何故樽が空を飛ぶ!と兵士Bは言いたかった。
「今年はカイルさんから先に嘘ついちゃダメって釘刺されちゃったんで☆この際全員巻き込んじゃえ〜♪って感じの作戦ですv
嘘ついた人には『閻魔サマ』1号〜???号が舌を引っこ抜きに来ますよ!!」
「カナタ様っ!;説明よりもッ早く救助を…!;」
兵士Aはあががががが!;と言いながら、樽のアームで舌をグリグリされている…。
「や。無理ですから♪」
「なっ…!?; まさか…!」
本当に舌を引っこ抜くまで…?
「さすがに舌を引っこ抜くまではやりませんけど♪ 嘘ついた人が気絶するまで離れません☆」
「Aーーーー!!!!!しっかりしろぉおおーーー!!いやするなーーーッッ!!;」
この2人の悲劇をきっかけに…城中で絶叫が響き始めた。
そう、誰もが気を緩ませるその隙に悲劇は忍び寄るのだ…。
「あははははは〜♪」
ブィ〜…と音を立てながら旋回する樽に跨がりつつ、少年はとてもいい顔で城の中を回っている。
そんな中、酒場でビクトールがほらを吹いた酒飲み友達を助けようと剣を抜いたのを見掛けた。
「こうなったらこの樽を壊すぞ…!」
「あ!ビクトールさん!!待って下さい!;」
カナタの制止の声も届かず、剣が樽を破壊する――――その寸前、
パカリと開いた樽の中から、炎の塊が吐き出された。
「何だーッ!?;」
「ああ〜だから危ないって言おうと思ったのにぃ…;」
さすがにビクトールも直撃は受けなかったものの、突然の炎に身体をあぶられては攻撃も出来ない。
「オイッカナタ!?何なんだこれは…!」
「『閻魔サマ』です。――安全対策の為に色々仕込んだ新アイテムッ!!アダリーさんとメグと僕とで開発ですよ!!」
組ませてはいけない組み合わせだ。
〜作業風景〜
『じゃあベースにはからくり丸の造りを使うとして〜』
『この紋章砲とかいうヤツの仕組みも使ってみるとするか!』
『動力には封印球使いましょう!!今在庫結構あるんです!!』
終了。
「てな訳で!ソレには火の封印球が使われてたみたいですよ!!ちなみにコレは風の封印球で飛んでます!」
どうでもいい解説だ。
現在、城中そこらかしこで、樽と格闘して「強ェエ!!;」などと絶叫が上がっている…。
しかしそこはそこ。
嘘をつくと襲い掛かってくるという道具な為、嘘をつかない限りは無害なのだ。
一部の被害者を見捨て…除けば、実害は自分達にはない。
そこはカナタにとって面白くない所だったが、少年は「嘘つかないならつかせるように仕向けてやります〜♪」とか企んでいた。
―――しかし、現実は少年が思うよりも少年にとって面白いものだったりする。
「ね、ね、カナタ、カナタ〜」
「何〜?ナナミ〜」
つんつんと近くにある『閻魔サマ』(カナタ命名)をしゃがんでつつくナナミに、カナタはまだ浮遊物体に乗ったまま答える。
「お姉ちゃん達は嘘ついても大丈夫なのよね?」
「うん。 何故なら僕は目指せフェミニストですからね!女性陣には無害ですよ〜!」
周りの樽は反応しない。
つまりは真実であるようだ。
「ふ〜ん。…! カナタ♪カナタ♪わたしの質問に答えてね♪」
ひょいっとナナミは樽を持ち上げ、カナタに向ける。
「カイルさんの事好き?」
「心の底から愛してます!」
「じゃあ、お姉ちゃんの事は?」
「もちろん大好きです!」
「シュウさんの事どう思ってる?」
「あのエセロンゲは絶対ヅラだと思ってます!」
樽は反応しなかった。
「わ〜v便利ね〜♪」
「あははは♪」
嘘発見機として使用して、ナナミはるんるん♪気分だ。
嘘発見機(しかも自分には無害)――――…
周りで姉弟の微笑ましいやり取りを見ていた女性メンバー達は、突然その瞳を野生の生き物のごとく輝かせた。
そして手近で動き回る樽をガッシ!と掴む。
「ねぇ!?コレ借りるわよ!?」
「え?まあどうぞ〜??」
鼻息も荒く詰め寄るニナに、カナタは首を傾げながら頷く。
「ニナちゃん、それ何に使うつもりなの??」
「決まってるじゃない!フリックさんに私のことどう思ってるのかを聞くの!」
恋する乙女はいつでも暴走スイッチオンだ。
「あ!それなら僕もヒックスに試してみないと!」
「おんし…たまには良い物を造るのぉ…妾はクラウス殿にv」
手に樽を取り走る乙女…
彼女らは、好きな相手が舌を引っこ抜かれそうになる姿を見たいというのだろうか…?はたまた、それでも真実を知りたいというのか…
「うーむ。乙女心って複雑なもんですね〜」
少年は感慨深そうに頷く。感想はそれだけのようだ。
ついでにふと、5、6人の集団で同じ目的の場所に行こうとしている女性らが目に入った。
「どこ行くんですか??」
「カナタ様、コレお借りしますね?」
「シーナさんの所に行くつもりなんです(笑)」
「シーナの??」
「ええ皆で、ね?」
「ねー?」
「いつもシーナさんがナンパしてくるんで、どのくらいの事をホンキで言ってるのか確かめようと思ったんです」
ねー?と更に全員で同意を示す女性グループ。
…確実にシーナは、舌を引っこ抜かれかけるだろう…(しかも5、6体がかりで)。
その華やかながらも、強く黒い結束に、カナタは少ーし距離をとった。
「(うーん…確かに、少しは痛い目みないと将来結婚しても浮気し放題な放蕩親父になって、アップルさん当たりが騙されちゃうかもしれませんし…)頑張って下さいね!」
「「「「「はーい♪」」」」」
宿星ではなくとも、この城の女性は強い。…そう実感させられる。
「いい傾向ですね☆」
「ねえねえカナタ!カナタはカイルさんに使ってみないの?」
うんうん。とイイ顔をしている少年に、その姉が無心に問い掛けた。
「え?」
「だって!ホラ!カイルさんに何でもホントの事言ってもらえるのよっ?」
『カイルさんッ(キリッ)僕の事結婚したいくらい愛してますか!?』
『カナタ…そんな事…今ここで言うの?(///)』
※イメージ映像です(実際の映像と異なる場合がございます)
「〜〜〜イイです!!物凄いイイですッ!!!!ああッ…!でも!カイルさんが万が一嘘をついちゃったら!無慈悲な鉄の塊(?)がカイルさんの柔らかな舌をやりたい放題にぃーーーーーッッッッ!!!!!見たいのか見たくないのか正直悩む衝動にかられますー!!」
周り樽はやはり動かない。
いつでも本音全開のようだ。
「カナタ…;そんな大声で何言ってるの?;」
「ハッ!カイルさん!;」
「エイプリールフールはしないって言ってたのに…何してるの?;」
これ…と、周りの樽をカイルは示した。
周りに被害者がいない為に、何故か樽が城中に置かれているようにカイルの目に映るのだろう。
「いや☆;何て言いますか〜別に何もしてませんよー?;こう、腹いせに周りを巻き込んで不幸にしてやろうとか〜暴れてやろうとかー;」
「カナタ…;」
カイルが溜息をついたと同時に、その場の樽が一斉にカナタを見た。
「何もしないって約束したのに…;」
「カイルさんとの約束破るつもりはなかったんですけど!;何て言うか、悪戯魂が暴走を…―――はぎゃあああああああ!!!!!!;」
「カナタッ!?;」
自分の乗っていた樽に取り押さえられ、周りの樽に集団で襲い掛かられるカナタの姿に慌てるカイル…!
「きゃーきゃー!;カナタしっかりするのよー!;」
「カナタ!?;コレ…っどうやったら剥がせるの!?;」
「ふへほーー!!はひーーッ!!!!;」
結局、自滅した揚句真相を知られたカナタはとくとくと説教を受け、もうこんな騒動を起こすくらいなら…と、軽いものに限ってエイプリールフールの許可が下りたという…。
(甘いカイルさん)