ハロウィンSS
大広間に入った途端、山のようなぶよぶよとした気味の悪い物が佇んでいた。
それはぬらぬらとてかり、気味の悪い透明の薄緑色をしていた。
一番異様だったのは、その全身に広がる目玉だった。
明らかに生きた眼球ではないものが、薄緑色の巨体の中でぶるりと揺れた。
「―――おまえのめだまもよこせぇえ…」
「ファーーーーッ!!!」
「は〜い。これで10人超えですねー。さすが僕の大作!」
SAN値が削れた兵士の悲鳴の反対側で、カナタが嬉しそうに『巨大ゼリー』をつつきながら、メモを取っていた。
「カナタ…;」
「ハロウィン仕様の巨大ぶどうゼリーですよ!もはや悪戯目当てなんで!トリックオアトリートをやる暇さえ与えません!」
威張っていうことではない。
というか、作ったはいいがこの巨大なゼリーをどう食べきる気なのだろうか?(ちなみに、味はぶどう味で美味しくはある。目玉はぶどうを剥いてそれっぽい様に一個一個加工したらしい。)
「ちなみに、このゼリーどうするの?;」
「残ったら、近隣の街にお持ち帰り予定です!まあギリ行けると思いますよ!」
確実にデザートではなく、主食で食べないと消費しきれないだろう。
ちなみに、話は変わるが今年のカナタの衣装は狼だ。なんとなく犬っぽくはある。
カイルは、カナタから「今年の衣装はどれにしますか!?これですか!?こっちもいいですよ!!」と期待に満ちた目で迫られ、黙って魔女の帽子のみを装着している。…なんとなく、カイルの対応も手慣れたものになってきている。
「カイルさんカイルさん♪」
「な――…?」
に、と聞く前に、カイルの首に何かかぷりと噛みつかれた感触がした。
「トリックアンドトリックです♪」
「―――――」
油断した。
カイルの背筋に戦慄が走った。
反射的に逃げ出そうとしたものの、その前に背後からしがみ付かれてしまい、身動きがとれなくなった。
「この場で悪戯されるか!部屋に行って悪戯されるかです!!今日の僕は本気ですよ!」
「え!?カナタっ!?;」
一体何のスイッチが入ったというのか…
その時、ふと巨大ゼリーの方から微かなアルコールの香りがした。
「………カナタ、酔ってる?」
「よってまへん!あぐあぐ!」
………どうやら、多量のぶどうを使用した為に、一部にワイン漬けになったぶどうが混ざっていたらしい。
首に甘噛みされつつ、カイルはズリズリとカナタを部屋の方へ引きずって行く…。
「わーい!部屋ですね!部屋ですねー!」
「………(一瞬でも隙が出来たら、棍で…;)」
仮にも付き合っているというのに、微妙な緊張感が漂っていた。
この後、どちらが勝ったか知るのは、何も知らない少年少女が「トリックオアトリート!」と部屋に突撃するのを食い止めた大人達だけである。