ひな祭り

 

 

朝起きたら身体が重かった…。

 

 

「―――?」

カイルは全身にかかる重さに違和感を覚えつつも、取りあえず身体を起こしたのだが――――…

「………。」

 

一瞬で固まった。

 

まず目に入ったのは、きらびやかな模様が折り込まれた赤い幾枚もの上着。そして、長く黒い髪に、長々とした赤の袴……

まさか…

と、カイルは嫌な予感を感じるが、その考えが肯定されるのは次の瞬間であった。

 

「カイルさ〜んvvvひな祭りですよーーーーー♪」

 

「…………(やっぱり…)」

何やら 悲しくなるカイルであった。

どうやら寝ている間に準備を終えられていたようである。

そう、ひな祭りの主役たる雛人形にさせられる準備を…。(どうやってこの十二単を全部着せたのかは不明だが)

長い髪は引っ張ってみた所、外れた為どうやら鬘である事がわかった。

「あーーー!カイルさん!鬘とっちゃダメですよ!」

「そんな事いわれても…(汗)」

鬘を改めて装着されながらカイルは呟くが、少年はまったく聞いていないようだ。しかも、カナタ本人もちゃっかり直衣姿でお内裏様をしている…。

「さー♪ひな祭りパーティー(?)です〜〜〜♪」

「………(汗)」

重さ(既に何枚着せられているのかわからない)の為に、カイルは抵抗も出来ないままにカナタに抱き上げられて運ばれてしまう…………もっとも、このずるずるとした袴では逃げる事は不可能なのだが…。

 

「カナタ…」

「なんですか?」

ぽつりとカイルは口を開く、

「直衣ってお内裏様の衣装だった?」

「さあ?どーでしょ?でもまあ、どうせお雛様メインで添え物なんですし、誰も気にしませんよv」

………取りあえず、諦めの境地まできているらしい。

 

 

 

 

桃の花が咲き乱れる大広間…

そして騒がしい同盟軍メンバー達の騒ぎ声…

更に溢れる酒の匂い…

その集団から隔離されるように作られた高い台座の上で、カイルはその光景を眺めていた。

「………(汗)」

本当にひな祭りってこんなのだったっけ…?と悩みながら、

しかしそんな事を言っても今さらな為、カイルは扇で顔を隠したまま溜息を漏らすだけだ。

「カイルさんvカイルさんv」

「?」

そんな時、不意にカナタから嬉しそうに声を書けられ、カイルはそちらを見た。

 

「なんか結婚式の披露宴って感じですよね☆」

 

「え?」

満面の笑みの少年に、反射的に声を漏らしたのが悪かったのだろう…。

「『え』ってなんですか!?『え』って!!(泣)はっ!カイルさん僕の事嫌いなんですかっ!?結婚してくれないってゆーんですかーーーーーー!!?」

「えっ…えっと…(汗)」

「うわーーーんっ!!こうなったら実力行使ですーーーーー!!」

「!?」

暴走した少年に押し倒されたカイルであった…。

「カナタッ!!(汗)」

「ヤですー!やめませ〜ん!」

幾ら幾枚も幾枚も重ね着している衣装とは言え、一枚も紐で止めていない為、一瞬ではだけられてしまう危険性がある。…いや、少年の狙い目はそれだったのだろうが、

 

「お、カナタがお雛様を押し倒してるぞー!」

いいぞ〜!やれ〜!などと無責任な酔っ払いのやじがとぶ。―――かなり、酔いが回っているのだろう…誰も止めようとしていない。

 

「っ…!(怒)」

さすがにカイルの堪忍袋の緒がきれる…。(というか、そろそろ本気で止めないとかなり際どい所まで来ている)

 

「『裁き』っっ!!」

 

台座は壊滅状態になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………それで少年が懲りると言う事はなかったりもする。

「カイルさ〜ん!まだまだひな祭り大会(?)はおわりませんよーー!!夜は4人くらいでひな祭り枕投げ大会やひな祭り怪談大会が催されるんですよーーーー!!」

「………(汗)」

ボロボロの衣装でなお張り切っているカナタであったという…。

 

一応ひな祭りは日が変わっても続けられていたらしい…。―――――すでに、ひな祭りと言う事は忘れられていたとしても、