平安パロ。
ネタ被ってたらすみません。(土下座)
そして、かなり適当です。雰囲気だけを楽しみましょう。
昔、男ありけり。
二条の辺りに屋敷を持つ、まだ初冠したてのような少年がいました。
身分も家柄もそれなりに高く、そこそこの人物だったのですが、少年は早くに両親に先立たれ、今まで面 倒を見てくれていた祖父も去年亡くなり、今は義姉と2人寂しく暮らす毎日でした。
――――しかし、この少年は貴族でありながら、踏まれて強く伸びるタイプの人物だったので、出世コースから外れようが、何があろうがバリバリ働いていました。
そんな男の、ある愛と情熱の物語…
* * *
1.
「は〜…なんで僕も一緒に行かなきゃならないんですかー」
目立たないすっきりとした直衣を着た少年が、牛車にゆられながらそう愚痴った。
そうすると、今度はその少年の前に座る同じ年頃の、しかし大人っぽく見える青年が苦笑しつつ、口を開いた。
「なんでってカナタ…(汗)せっかくのいい月だからって、楽の催しに誘ったんじゃないか…」
「だからって、毎回毎回ジョウイのお嫁さんちで催馬楽ばっか歌わされちゃ、ノドがもちませんよ」
「ノリノリで歌ってるクセに…(汗)」
「何か言いましたか?」
「いや、別に…;」
今を時めくはずの青年、ジョウイはカナタと呼ばれた少年に睨まれただけで言葉を濁す。
「それに遅くなると、ナナミが心配するんですよー…」
「そうか…あ、ナナミももう結婚すんだのかい?」
あのナナミが結婚してる姿は想像しにくいけど…と笑いを含んだ声でジョウイは言う。もともと、カナタとは殿上童している時に中がよくなり、その義姉のナナミとも家を行き来する間に仲良くなったのだ。いわゆる幼なじみであり、男女の中ではなかったが、
そして、カナタもそれに対して、少し悩んだ表情で口を開く。
「それなんですけどね〜…どうしようかと思ってさ〜。僕一人じゃ家を支えるのが精一杯ですから、東宮に嫁がせる事も出来ませんし〜」
「え!?後宮入り狙ってたのかい!?;(無謀な!;)」
「下手なトコに嫁がせるよりはいいって思ってたんですよね、でもやっぱ男親がいない事にはどうにも…それにお婿さん通 わそうと思っては見ても、やっぱりうちの家計じゃ出来ませんしね〜」
貴族が家計家計言ってていいのか?と思いつつも、ジョウイは取り敢えず突っ込まなかった。少年の家の財政が逼迫しているのを知っていたからだ。今まで姉を路頭に迷わせもせず、2人して出家もしなかったのは、ひとえにこの少年の頑張りによる事も…
「ついでにいうと、お姉ちゃんには妾として悲しい思いはさせたくないですから、正妻狙いですよ。もう内親王ジルさんを北の方にもらってるジョウイは間違っても通 わせませんから。」
「う”。;」
「入り婿は色々と辛いですね〜(笑)」
「な、ナナミの事はそれでいいとしてっ…!(汗)カナタの方はどうなんだい?」
「は?僕ですか?」
少しそれで少年は驚いた顔になる。
「君もそろそろお嫁さんの一人や2人くらいもらわないといけないんじゃないか?…色めいた噂一つ聞かないケド。」
「僕は今の所、そういう気持はないですねー。」
「そこそこの家の子をお嫁にもらって、家計を助けるっていうのは…」
「そーゆー不純な結婚はしませんっ!…こうv運命的な出会い方で、ラブラブvになりたいんですよ…v崩れかけた屋敷に寂しげに独りいる美しい女の人とか…☆」
「…カナタ、物語とか好きなのかい?(汗)」
「むしろ書いてますねっ!」
「ええっ!?(汗)」
それはともかくとして。
…とにかくカナタは、結婚する気もなく、ひたすら姉と家の為に働こうとしていたのだ。
「でも、ホントナナミに、いい嫁ぎ先ないですかね〜(汗)ナナミは結婚する気がないって言ってるケド…」
「そう言えばカナタ、」
ふいに思いだした顔でジョウイが言うので、いい嫁ぎ先があったのだろうか?とカナタが目で問うと、ジョウイは首を横に振り、
「そっちの話じゃないケド、そのあばら家に遺された姫君の方は心当たりがあるよ、」
「へ〜」
「故宮の忘れ形見で、三条辺りにある屋敷で一人棲んでるらしいよ、」
「へ〜」
「まだ誰も逢った事がないって話だけど、月の綺麗な夜なんかには、途切れ途切れに美しい琴の音が聞こえてくるっていう話が…」
「2へ〜」
「カナタッ!;」
聞く気の無いカナタが、時代考証をまるっきり無視したコメントをいうので、慌ててジョウイが止める。
―――まだ、この時少年は、自分がいかにその『姫君』に惹かれるようになるかという事に、気付く余地もなかった…。
2.
「お姉ちゃんね〜!思うのよっ!」
つい立てで辛うじて、間を隔てている物の、かなり興奮した声が向こうから上がっている。…ちゃんと扇くらいは持ってるのかな〜と、何げに心配するカナタだ。
「お姉ちゃんはともかくとして!カナタはちゃんと結婚相手を探さなきゃダメよっ!」
ビシリッ!と言い切られ、カナタはどうした物かと珍しく悩んだ。
昨夜、帰るのが遅くなってしまったお詫びも込めて、こうして朝から義姉の所に訪れたのだが、何故かそんな事を熱く語られてしまった。
「いやでもお姉ちゃんからのが…」
「お姉ちゃんはいいのっ」
「…何かナナミ、物語でも読んだ?」
「えへvいいわよね〜v継母に虐められてるお姫様をさっそうと助けたりv山の中で一人暮らしてる綺麗なお姫さまを自分の家に連れてかえってお嫁さんにしたり…v―――そんな訳で、カナタにもそんな恋愛をしてもらいたいのっ!」
大体自分の言っていた事と同じ事を義姉に言われてしまった…。
「そういう訳ならOKです!」
「じゃあさっそくジョウイの言ってたお姫さまの所に行って来てねっ!ジョウイからの手紙にちゃんと書いてあったのよ〜♪」
「じゃあ今日にも――――って!なんでジョウイから手紙がーッ!?(怒)」
…。
「―――って、なんでこんな事になってんでしょーか…」
薄様の、恋文用の紙を手に、困っているカナタ…。
庭に流れているやり水を眺めながら、ぼ〜っと放心している。
「ううっ…(汗)恋文書いた事無くて全然だめなんですけどねー…;」
とりあえず、手慰みに書き散らしてみる。
――――『ラブラブ愛してる☆ウォンチュベイベ♪ウォンチューラブ!』
「はっ!手が勝手に訳のわからない事をッ!!;」
とりあえず、カナタは文を出す事を諦め、筆を放り出してその場に寝転んだ…。
そして、ジョウイから蹴鞠の誘いが来るまでその場で昼寝をしていたと言う…。
…しかし、なんの因果が合ったのか、カナタはその日、そう苦労する事もなく噂の姫君と逢う事が出来たのだ。
「はっ!?僕がですかっ!?」
女房を通してかけられた言葉に、カナタは叫んだ。ジョウイもそれを困った顔で眺めるばかりだ。声をかけて来たのは、ジョウイのお嫁さんこと、ジル様だ。…御簾とつい立てごしだが、確かにそこには楽しそうに笑う気配があった。
「ええ、そうですわ、お兄様の代わりに三条の誰某さんの所に行って来て下さいなvお兄様、あまりにご乱行が過ぎて、今日はお父様に怒られていますの、しばらくは宮中から帰って来ませんわv」
「うわ〜…斬り殺し事件とか起こりそうですー…じゃなくて、何か約束があるんなら、断りの手紙出せばいいじゃないですかっ!?;」
「あら?おもしろくありませんこと?お兄様の代わりに通ってみるなんてv」
「…おもしろいですねぇ。」
困った事に、面白いのだ。
「じゃあいいじゃないですの、お兄様の遊びで来られるよりも、純愛ラブvの略奪愛の方がv」
「略奪愛って、そこまで…」
「フフフ…v」
意味ありげな衣擦れの音だけが響いた…。(そして、ジョウイは止めても無駄とわかっているので、止めなかった。)
で、
「そうは言ってもですね〜…微妙に気が進みませんー;」
「もうここまで来てるだろうが〜、」
そう、もう三条の通りをとことこと歩いている所だったのだ。そして、ジョウイの所から借りて来た随身のシードがその事を指摘する。何しろ松明の灯りだけが足下を照らしているので、2人の距離はとても近い。
「そりゃそうなんですけど〜(汗)」
カナタはいまいちノリ気になれないらしい。
―――が、その時だ。小さな琴の音が聞こえて来たのは、
「!」
あまりにか細く、そして短かった為に、何の曲なのかもわからなかった。しかし、この少年にはそれで充分だった。
「な、なんか今運命を感じました!行きましょうっ!さあ!!」
貴族にあるまじき動きで、狩衣姿の少年はダッシュした。「あ、おいちょっと待てよ!;」と言いながら、慌ててシードも続く。…この2人で来たのは失敗だったかも知れない。どう見ても、ルカ様お忍び歩きの様子に見えない…。
3.
「…坊ちゃん、どういたしましょう…今度の方はあの――家の…」
「………うん、大丈夫」
いつも通りに…
「きっ!緊張ーっします!!;」
屋敷は荒れ果て、女房も数える程しかいない中、カナタは通されていた…。
お忍びの通いにしては、正面から切って乗り込んだが…特に何も言われなかった。どうやら、かなり無理を言って逢う約束を取り付けていたらしい。漁夫の利的にカナタが来れたのは、まさに偶然としか言えまい、
案内されるまま、古びて調度も少なくなった部屋に通されると、カナタは御簾の前に座る。そして――――――…何を喋ったらいいかわからなかった。
ああああああああ…;こーゆーの初めてなんですよー!!
作法やら常套文句やらが、まったく頭から抜け落ち、シードに助けを求めようにも、この場には彼はいない。
故に、カナタは混乱し切ったまま口を開いた。
「きっ…きょおわっ;いい天気ですねっ…;」
「………」
「………」
取り次ぎの女房からも、その姫君からも、沈黙しか返す事は出来ない。
困ったような衣擦れの音が響く。そしてその仕草やらの気配や、薄れてしまってはいるが、衣に焚きしめられている香の仄かな、芳しい香りが少年の神経を焼き切っていく…。
(フォーチュンラブッ!フォーチュンラブなんですっ…!!)
そして、ある一線をプッチーンと越えて、何か妙なスイッチが入ってしまった…。
「…春の夜の闇はあやなし梅の花、色こそ見えね香やはかくるる。…香りだけでもいいですけど、是非そのお姿も拝見してみたいです」
これにほっとしたのは、姫君達の方だろう。まさか、あんな訳のわからない事を言われるとは思ってもみなかったので、硬直していたのである。このカナタの口説き文句に、素早くクレオが答える。
「どこにとも知れず咲きつる梅の花、どこにか薫る我が荒れ宿に…どこか別の家からの香りとお間違えでは?」※すみません…;上のカナタのは引用歌ですが、返歌は海月が適当に作ったので、深く突っ込まないで下さい;
「これはつれない事です、是非にとも自らお返事を聞かせて頂きたいです」
…見た目、優雅なやり取りに見えるが、実際の所、クレオとカナタの火花散る戦いだ。
(なんですかっ!ムッチャクチャけんもほろろじゃないですかッ!この女房!!>怒)
(幾らあの噂の…いや、あの噂のルカ様故に、絶対に姫様と逢わせる訳にはっ…!>怒)
バチバチバチ…ッ!
「…それにッこんな間を隔てての挨拶なんて、そんなに僕をしんよーしてないんですか?せめて御簾の中に入れて下さい」
カナタ的には、フツーにホンキで言っているのだが、カナタをあのルカ様だと思っている女君らにとっては脅しにしか聞こえない。無礼を働く訳には行かない相手なのだ。
そのどうしようかという戸惑いが、沈黙に変わり、こんなとろとろとしたやり取りに本来向いていない少年が、その元服前の童並の身体の小ささを生かして、スルリとカナタが御簾の内に入り込んだ。
「って…あ!ぼ…姫様ッ…!!;」
「!」
「えへへへv」
かなりのダメさ加減で、女君を抱きしめた………いや、女君に抱きついたカナタだ。
(…あれ?僕より大きいです?いや別にいいんですけどーv)
(あれ…小さい…?)
くしくも、逆の感想を漏らしていた2人だ。……ちなみに、姫君の方も、悪気はなく、幼いと言う意味で言っていたのだ。
そして、一人慌てきっているのはクレオだ。まさか、無理矢理引き剥がす訳にも行かない。
子供のように抱きついて来た相手に、姫君も困惑したのか、驚き過ぎたのか、抵抗を見せていなかった。
「何もしませんからこのままでいさせて下さいv」
チラッと少年が顔を見上げると、―――相手は、袖で自分の顔を隠していた。
…ちょっと、ガーンだ。
しかし、本人にもかなり無茶をやらかしたという自覚はある。言葉通り何もせずにそのまま抱きしめたままの体勢でいる。…ここで押し倒したら、丸っきりの強●魔だ。その辺りは何とか理性で堪える。
相手の細さやら、香りやらが脳裏に焼き付き、カナタは鼻血を吹きそうになるが、ある事に気付き、ハッ!顔を上げた。
「あのっ…名前……」
――――――ってあ!;僕名前名乗れませんっ!!;てか、ルカさんだと思われてるじゃないですかッ!;
ズゴーン;とショックを受ける少年だ。
その瞬間、隙が出来た時、予想外の動きで、姫君は小打着を脱ぎ落とし、塗篭めへと走った。
「あ!;」
そして、入りきると、カナタが追い付く前に戸の鍵を向こう側から絞めてしまった。
カナタに残されたのは、小打着一枚だけだ。
「………」
安堵の息をついているのは、クレオだけで、カナタは戸の前にペタッと座り込む。
よく考えなくともわかる事を気付かずにいた自分が信じられない。
――――名前は名乗れない、しかも騙してる、相手の名前も知らない。
そんな中、どうしろというのだろうか?
カナタは悲しくなって、ダーッと涙を零した。
(ううっ…全然この思い叶いそうにないです…>泣)
女君の薫りのする衣に顔を埋めて、男泣きに泣く。
―――ついでにいつの間にか眠くなっていたらしくて、カナタは明け方まで塗篭めの前で寝こけてしまっていた。
―――――でも、好きになっちゃったんですよ…
そんな事を思いながら、
「…危なかった、」
「本当に…っ坊ちゃん、でもどうしたら…」
「うん、大丈夫だから…」
4.
「カナタッ!ムリヤリはダメよっ!だめなのよっ!?」
ビシイッ!と扇を投げ付け、ナナミは言った。
「大丈夫ー…してないから〜…」
そして、カナタは言われても、枕に身体を寄り掛からせ、ボ〜ッとしているだけだ。いつもならまっ先に「うわあっ!?なんでナナミがーッ!!;」と注意する所だと言うのに、
その様子にナナミは首を傾げる。
なんでも、カナタが本当に、はんばムリヤリ逢って来たと聞いた為、こうして注意した来た訳だが、それにしても様子がおかしい。
(はっ!これが恋煩いなのねっ!?)
キュピリ〜ン☆と女の勘と姉の勘で、ナナミは気付いた。そして、膝でにじり歩きながら、カナタに近づく。
「カナタっ!!」
「ナナミ?」
「ガッツよ!ムリヤリはダメだけど、頑張って口説くのよっ!頑張ればきっと大丈夫!お姉ちゃんの弟だものっ!」
「ナナミ〜…」
「お姉ちゃんがいい事教えてあげるわっ!だから元気出すのよっ!」
ごにょごにょとナナミは、可愛い弟に秘密の情報を教えてあげた。
「なんかそれならいけそうかもですっ!頑張って口説きます!――――って!うわあっ!なんでナナミがッ!?;」
予想通りの反応をしつつ、カナタは今夜も三条の屋敷に行く事に決めた…。
(もー!半強制でもいいですっ!三日間通ってお餅を一緒に食べて、周りに結婚しちゃったー☆と見せ掛けてでも結婚です!!)
…一応それが最終手段だが、できれば、相手の同意が欲しいとも思う…。
「………」
女君は扇で顔を隠しながら焦っていた…。
まさかこんな方法で来るとは…
相手が今夜も来ると聞き、無礼とは知りつつも、先に塗篭めの中にこもっていたのだが、屋敷の人の少なさが災いした…。女房用の出入り口から相手が入って来てしまったのだ。外に出ても同じ事、鬼ごっこになってしまう…。どうすればいいのか考えつつ、ジリリ…と後ずさる。
それに対し、相手は近づいてくる…。そして目の前まで来て、
「恋文読んで下さいーーーッ!!;後、名前聞かせて下さいーーーっ!!」
…とやった。
「え?」
「………;」
直球勝負をやってしまった。
もはや貴族だ規則だとか情緒だとかを、全部この際捨てたらしい。
少年の言葉に、女君は硬直している。…まあそれも無理の無い事だろう。
遅咲きの梅の枝に付けた文をズズイッとばかりに渡されたのだから、
「好きなんですっ!」
「………」
呆れられたかも!と思いつつ、カナタがドキドキしていると、はんば押し付けるように渡された文を、姫君は扇を持っていない方の手で受け取った。そして―――…
「………カイル…」
聞こえるか聞こえないかの声で相手が呟いたのだ。
それにカナタはパァ〜ッ♪と顔一杯に気色を浮かべた。
勢いのままカナタは相手に抱きつくと、相手も予測出来ていなかった動きであった為、扇がポトリと落ちた。
もちろん、これを見逃す程カナタもトロくはない。反射的に相手の顔を見上げると――――…
にほふばかりの美しさ…
きよらの限りを尽くした容貌、月影のような肌色…
魔物か何かに連れていかれてしまうかもと恐れるばかりの物だ…。
「〜〜〜〜〜っっ(///)」
「………っ」
慌ててカイルは袖で自分の顔を隠すが、バッチリ見られてしまった事は確かだろう。
「あのっ!僕は!僕は―――――」
(…あ。)
一旦カナタは言葉を途切れさせた、そして呟く。
「貴方が好きです…、」
…やはりそれしか言えなかった。
名前が名乗れない…それが悲しい…。
(…この子は、一体誰だろう…)
顔が見えたのは何もカナタの方だけではない、カイルの方からも見えたのだ。
相手は明らかに『ルカ』とは年齢が合わない、幼い顔立ちをしていた…。
あまりの裏の無い行動に、ほだされてしまいそうになる。…しかし、そんな事は論外なのだ。
「………お離し下さい…」
…少し、哀しい。
5.
(また何も出来なかった〜>泣)
いや、ナニをする気ではなかったのだが、何の進展もなかったと言うイミで、
しかもあの後、僅かにでも会話を交わせて、更に恋しさが募る。
「うううう〜〜〜…(泣)」
しくしくと机上に突っ伏して泣く。
(やっぱりムリヤリですか〜〜>泣)
ムリヤリはダメなのよ〜っ!というナナミの言葉も今は遠い。
「カナタ!マズイ事になったよ!;」
「…あれ?ジョウイなんでこんな所に?」
「いや、ちゃんと今日来るって文も出したし、伝えてももらったんだけどね(汗)」
「全然聞いてませんでした!」
「いや、そんな言い切られても…って、そうじゃなくて!カナタっ!;大変なんだよ!」
ジョウイは焦って言う。
「何が?」
「それがッ…今日辺りルカ皇子が帰ってくるかもしれないって…;」
………それはマズイ。
「横やりで目当ての人を持ってかれちゃーさすがに怒りますよねー;」
「それは確実だと思うよ…;」
泣く事も忘れて新たに悩むカナタだ。
「とにかく、今ならまだごまかせる(かもしれない)から、カナタもジルの遊びに付き合うのは止めて…」
「遊びじゃないです!(怒)本気の本気で一生一度のフォーチュンラブですよ!」
「ええ!?カナタ…君!いや、本気!?え!?;」
「話がそれだけなら出てって下さーい。とうとう!(押し出している)今日は祝言あげるんですから!」
「カナタそれはムチャ…!;」
「とーーー!」
ジョウイを黙らせ、追い出すが、そうした所で何が変わる訳でもない…。
カナタはため息をつきながら、綺麗な器に餅を入れ、それをこっそりと懐に隠し持った。
今日が最後になるかも知れない…
とりあえず、シードには話を付けてある為、変わらず随身をしてくれる事になっていた。
問題は、今夜の結果だ…返事はどういう事になるのか、
「へ、へんじ聞かせて下さいっ!」
今日はもう抵抗してもムダと思ったのか、既に御簾内の対面になっている。衝立ては間に置かれていたのだが、そんな物はとっくの昔にカナタがどこぞへと押しやっていた。…それにクレオがハラハラと様子を窺っている。
「…何を申し上げればいいのかわかりません……」
「あう。(泣)」
遠回しに断れた…いや、拒絶されてへこむ少年だ。
しかし、姫君も姫君で、この少年の事が嫌いになれない。だから、そんなに悲しそうにされると困ってしまうのだ…。
戸惑うような気配が伝わったのか、カナタは伏せていた顔を上げた。
―――――そして、素早く抱きつく。
「……」
「あのっ…えーっと、こんな体勢でごめんなさいですけど、そのっ――――――言っておきたい事がっ…!」
前に進めない上に、相手に名前すら呼んでもらえない。
名前を隠し、正体を隠しての逢瀬を楽しめる程、カナタは大人ではない。…それに今夜是と言ってもらわなければ、ルカ様が戻って来て大変な事になる。―――そして、元々諦めるつもりがないので、無理矢理になる。…何がとは言わないが、
「…その、僕隠してる事が…」
「……………」
相手は、カイルは扇で顔を隠したまま、何の反応もしない。
「あの…そのっ…実は、」
「……隠している事は…こちらにも、あります」
「え?」
カイルがふいに口を開いた。
言ってからクレオが息を飲んだのがわかった。
何故自分が明かそうとしているのかはわからない。でも、どうしても…この少年の真剣な恋情を見ていたら…どうしても真面 目に言わなければならない気がしたのだ…。
きょとんとした少年の顔を扇越しに見据え、カイルはキッと決意した。
「なんですか??あ!先にっ…僕ルカさんじゃなくてっ…」
「うん、知ってる…」
「ぎゃーーー!?」
「ぼっちゃ…姫様どう言う事ですか!?;」
ハッキリ知っていると言われて、パニックを起こしたカナタと爆弾発言に驚くクレオ。…この場の混乱は、夜の眠りさえ覚ますような物であった…そして、更にそこに油を注ぐような発言が起こった。
「…本当は、僕、男なんだ…」
「う?…えええええええええーーーー!?;」
「坊ちゃんっ―――――!?;」
予想外の事に、カナタは極限まで混乱した。
「ど、どう言うコトナンでしゅか…??;」
「……うん、まだ父も母も生きていた時に、」
「坊ちゃん!」
「いいから、クレオ。―――僕の父の事は知ってる?」
「えーっと…宮様だったとかじゃないとか…親王でしたとか…」
「うん、女の子が欲しかった理由もわかるよね…?」
「あ…東宮妃……;」
「…―――病床にあった父が望んだのは、女の子だったんだ。母はせめて最後に父の望みを叶えたくて女の子を産みたかったんだけど、産まれたのは…―――その場限りの嘘がこの歳までずっと続いてる…、死後の父の名誉を守る為に僕はこの嘘を死ぬ まで続けるつもり…尼にもなれないしね…。クレオを付き合わせるのは悪いとは思ってるんだけど……」
「いいえ!そんな…もったいない!」
「ありがとう、……だから、」
結婚はムリなんだ、と続けられ、爆弾発言に目を回していた少年はようやく思考を取り戻す。
「えーーーっと…」
まだちょっと理解し切れていないカナタの目つきは怪しかったが、そのままカイルから身を離すと―――――…ガシィッと手を掴んだ。
「結婚して下さい。」
「「え!?」」
今度はカイルらの方が混乱した。特に、手を握られたカイルは混乱した。
「だから、僕は男で、結婚は…;」
「いいんです!よくないですケドいいんです!もーカイルさんならどっちでも!好きです!好きなんです!だから僕と結婚して下さい!!」
割り切ってしまえば、少年の行動は早い。
有無を言わさぬ勢いで、カイルに(結婚を)迫った。
そして、言われたカイルも、何の冗談か、そんなに嫌ではなかったらしく…頬を染めていた。
「だから…それはムリ……」
「それにっ!もう性別の秘密がバレてる僕となら結婚しても大丈夫じゃないですか!余計な求婚者も来なくなりますし!結婚しちゃえば秘密も確実になります!!」
「………」
「いや、でもそれでは坊ちゃんが……(汗)」
「いーんですー!好きなんですーー!!」
ほとんど、貴族男性のプロポーズと言うよりは、子供の駄々こねに近いが………………カイル的にはイヤではなかったらしい。
苦笑しながらポツリと尋ねた…。
「……名前」
「え?」
「…名前、教えて?(///)」
「!! カナタですーーvvじゃあカイルさん結婚してくれますか!?狭いですけど僕の家に来てくれますか!?」
「…クレオも一緒なら、」
「もちろんですーーv!! シードさん!三日夜の餅持って来て下さいーーー!!結婚成立ですーーー!!」
「え?何だ?―――――おー!よかったなー!!」
「「(持って来てたの…?;)」」
事情を知らないシードはフツーに喜び、坊ちゃんさえよろしいんなら…とクレオも涙混じりで喜んだ。
「はいv三日夜の餅あ〜んですvとりあえずカイルさんも三個食べて下さいね〜〜vv」
「んぅっ(///)」
口に急いで餅を放り込まれて、苦笑するしかないカイルだ。よっぽど焦っているカナタである。
とりあえず…この少年の笑っている姿が見れるのはうれしい(ような気がする)ので、まあいいか…と思うカイルだったりする。
「キャーーーvホントにカナタ物語みたいにお嫁さんゲットなのねーーっvvお姉ちゃんうれしいわーーvv」
「カイルさん!僕のお姉ちゃんです!狭い我が家ですけど、幸せにしますねーっ!!」
「うん…(汗///)」
物語のような恋愛結婚をした2人は、子孫繁栄…とはいきませんが、その生涯を限り無く幸せに過ごしたと言う事です…めでたしめでたし?
蛇足。
しかし…
「え、えっと!カイルさんっ…そ、そそそその…後になりましたけど、その…初夜っ☆」
「え?」
純粋培養で育てられたカイルさん…
結婚の、その裏にある行為を理解していなかった為に、真の苦労をするのは、結婚後の話。…どっちがかといは敢えて言いませんが、(笑)
終わり!