結婚式。

 

 

 

「あ。カイルさん、ちょっと手上げてもらていいですか?」

 

事件はそんなカナタの一声から始まった…。

「いいけど…?」

急に言われたことにせよ、カイルにはその要求を断る理由が見つからなかった。そのため、あっさりと座ったまま両手を挙げたのだが…。

「立ってもらって良いですか〜?」

「? うん」

立ち上がり、再び手を上げると、背後からカナタの手がカイルの胸元に回ってきた。

…その手にはメジャーが握られている。

どうやら、採寸されているらしい。

「…カナタ? 何してるの??;」

「や〜v 見ただけでもカイルさんのサイズはバッチリわかりますけどー☆やっぱり、一応大事なイベント用なんで、念には念をと思いまして♪♪」

「??;」

「でも相変わらず細いですねーvvv腰vv」

「カナタ…;待って、何を作るためのサイズ測ってるの…?」

「そりゃーーカイルさんの花嫁衣裳ですよっ!!」

 

…。

 

世界は確かに今、凍りついた。

結婚出来る出来ないはこの際ともかく、(もっとも重要な事だが)

結婚式を挙げる相手(しかもカナタの言葉を借りるなら花嫁)が、結婚する事実を知らされていないというのはどういう事だろうか…?

「カナタ…」

ゴゴゴゴゴ…!と気配を変えたカイルに、ハッ!;とカナタも顔色を変える。

「待って下さいっ!!; 違うんです!! これには訳があるんです!!」

カナタは必死に言い募る。

「ほらっ;まあ、何度か僕とカイルさん式挙げてるじゃないですか…!?;」

「………うん、」

(※あまり深く発言については突っ込まないでほしい…。このサイトでは挙式ネタは非常に多いのだから…)

「式も結構同盟軍内で済ませることが多かったじゃないです〜?―――で、今日その事についてトラン側っていうか、レパントさんから正式に抗議が入ったんです!!」

「………」

「僕とカイルさんの愛をとくとくとレパントさんに語った結果!そこまで言うならとトランと合同で式を挙げることで決着がついたんです!!ちなみに、決め手はカイルさんのウェディング姿です!!国を挙げての大挙式になりますよー!!!」

 

 

もうトランに戻れない…!!;

 

 

しかも、今更断ると国際問題に発展する…。

 

 

 

 

 

 

「坊ちゃーんっっ!! 幸せに幸せになってください…グレミオはっ坊ちゃんの成長に感無量です…!」

「グレミオ…涙と鼻拭きな;」

号泣するグレミオに、クレオが呆れながら言う。

彼らの主人は、今からトランの場内で『花嫁』として式を挙げるのだ…。

 

 

 

- 花嫁控え室 -

 

「……………(汗悩)」

どうしてこんな事に…っ;

薄いレース生地を幾重にも重ねたヒラヒラとしたウェディングドレスに身を包まれ、カイルはまさにマリッジブルーの花嫁といった風情で佇んでいた…。

淡い色の花で作られた花冠のついたベールに手を当てて、カイルは重い溜め息を吐く。

―――今更、格好をどうのこうのとは言うまい。

しかし、どうしてこんな大勢(国単位)の前で〜〜〜〜〜っっっ(後はもう言葉にならない)

ちなみに、(似合わない白のタキシードを着た)花婿――外見的には似合っているのだが、内面的に子供子供しているためそう見える――はというと、

 

「僕としても好きなのは身内だけのひっそり式なんですけど!カイルさんが僕だけの人になった事を公式にお披露目するチャンス…!!これはもう逃せませんよ!!」

 

だってウェディングドレスのカイルさん可愛いですから!!…と、のたまい、花嫁が暴れそうになったため、別室に引きずられて行っている。

 

「…………(汗)」

カイルは悩んだ。

今更逃げるわけにも行かない。

今更逃げたら国際問題になるだろうし、これ幸いと国外から出られなくされそうだ。

別にカナタと別れたい訳でも(多分)ないのだし…

でも、この羞恥には耐えられない訳で…

「………」

不可抗力的にこの祭典(結婚式)が中止になれば良いのだけれど…。

 

(誰か攫って逃げてくれないかなぁ…)

 

カイルは心の底からそう思う。

しかし、それでは血を見る騒動が起こるだろう。―――カナタが暴走して。

「………」

想像してカイルは肩を落とす。

(せめてすぐに終わってくれないかなぁ…;)

それも無理な話であった。

国を挙げての祭典になっているのだから、一日どころか数日がかりになっていそうだ。(後で聞いたところ、3日間を予定していたらしい)

 

―――――カイルは、今まさに、逃げるか諦めるかの選択に立たされていた…。

 

コンコン。

やや控えめなノックが響く。

「カイルさーんvそろそろ機嫌直りましたかー?」

「カナタ…;」

「はれてカイルさんと国際的かつ公式に認められるなんてっ…!主坊冥利につきますね!! カイルさん…!ぜったい幸せにしてみせますからねっ!!」

「………(汗)」

もう、どうあっても止まりそうにない…。

そう確信するカイルだ。

しかも、あんなに嬉しそうな顔を見せられると、逃げたがっている自分が悪いように思えてしまう…。(※気のせい)

「とゆー訳でv幸せ記念に一枚vvv」

ぺたーっとカイルに頬を寄せ、近距離での記念撮影をする。

…もうカイルには、自分が嬉しいのか悲しいのか困っているのかも分からず、どんな表情で写ったのかも予想できなかった。

…一つだけ言える事は、とてつもなく疲れているということだけだ。(今撮影されたなら、確実に疲れた表情で写っていることだろう。)

 

―――もうカナタ本人にこの状況を何とかしてもらうしか方法はない。

 

「カナタ…」

「はいvもう一枚〜♪ はい?何ですか〜?」

 

 

「―――連れて逃げて…」

 

 

…ピタリ、とすぐ近くにいる筈のカナタの動きが止まった。

 

「…カナタ?;(やっぱりダメだったかな…?;)」

ここまできて式を中止にする気は、さすがにならないだろうか?とカイルが思ったその時、

ぎゃーーーーーっっっvvv男として言われてみたいセリフ上位に食い込んでる言葉をカイルさんがーーーーっっっvvvvvv 

 行きましょう!!!!どこまでも!!!!!2人だけの愛の逃避行を…!!2人なら地の果てまでも行けますよ…!!」

「ひゃっ;」

鼻血の出そうな勢いで叫んだ少年は、懐にカメラをしまうと、ガシッ!とカイルをお姫様抱っこで抱えて走り出した。

そして、花婿花嫁の衣装のままで、トラン国の鉄の警備網を突破したという――――…

 

 

 

 

こうして、めでたく逃げ出せたかに思えたが…

今更式から逃げ出せたとしても、トランの英雄同盟軍リーダーに嫁入りという朗報(!?)は、グレックミンスター中に広がっていたという…。

 

(少年Kの証言:「そりゃあれだけレパントさんが大々的に宣伝してたら広がりますよね〜v(笑)」)

 

 

 

 

結婚…?

したのやらしていないのやら…(吐血)