「ちょっと働いてみようと思うんだけど…」

「ええ!?」

 

―――統治者か、被統治者かといえば、統治者。

―――人を使う側か、使われる側かといえば、使う側。

 

そんなカイルが、使われる側に回るという―――…

 

 

「心配です!!心配すぎますーーーーーー!!!!!
  別にカイルさんがどうのこうのという訳じゃないですケドッ!こう、ハイ・ヨーさんのレストランでウエイトレスさんのアルバイトなんかやった日にはっ!卑猥な客からどんな破廉恥なセクハラされちゃうかわかりませんーーーーーー!!(怒)」

「………(汗)」

どこにどう突っ込めば良いのか一瞬分からなくなるカイルだったが、とりあえず「ウエイターの間違いじゃ…?;」と呟いた。

「とりあえず!――ダメです!」

「でも…;」

「何でそんなこと急に思い立ったんですかっ!?僕に何の不服がーーっ!? カイルさんは僕に永久就職してるっていうのにッ…!」

「………(汗)」

それが嫌だからだろう。

 

「―――でも、どうしてもというのならっ!」

カナタはそこでビシリと指を立てる。

「?;」

「僕専属のメイドさんになってもらうしかないです!!」

―――どこから出したのか、白いレースのエプロンのついた紺のメイド服を掲げた…。

 

 

即座にカイルの棍の一撃がカナタの顔面にめり込む結果となったが…。

 

 

 

 

 

 

inハイランド。

 

同盟軍勢力下では足がつくかと思ったのか、カイルが家出(?)をした先は、ハイランドの皇都ルルノイエだった。

そこになら知り合いもいるため、カイルは申し訳なく思いながらも安心して逃げ込むことが出来た。

…というか、あまりに同盟軍リーダーの少年が呑気すぎる為、敵対しているという事実を忘れかけているカイルだ。

 

「カナタが働くのに反対してるって?過保護だなぁアイツも」

「はい…;」

一応将軍の位について働いているシードは、カナタの行動を笑い飛ばしていた。

その隣には書類仕事を全部押し付けられている知将が皮肉な笑みを浮かべていたりするが…何が言いたいのかは一目瞭然だろう。

まあ、その分の借りは夜とかにきっちりとシードは支払う羽目になっているというが…。

「そーだなぁ…ジョウイ様ー今何か人手が足りてないことないですか?」

「えっ?;」

行き成り話を降られたジョウイは、固まった。

幾ら自分の執務室に集まっているとはいえ、話を振られることを予期していなかった顔だ。

只でさえ、カナタの恋人であるカイルが家出をしてきて、緊張状態にあったというのに…しかも、人手が足りていないと言っても、兵卒に加わってもらうわけにも行かないし、(敵味方以前にそんな事をしてもらったら、カナタから容赦なく血の雨が降らされるから)雑役をしてもらうわけにもいかない、(そんな事をさせたとやはりカナタが…以下略)それにジョウイ個人としても、(「カイルさん可愛いから…」)そんな仕事をさせるわけには行かないとか思ってしまう。

残るのは事務職だが、クルガンがシードの分を抱え込んでなお、全て片付けている為に殆どすることがない。

(何か…何か他に;)

「無理そうなら…;」

「いえっそんな事は…!」

反射的にジョウイは答え、更に焦る羽目に陥った。

 

(調理場!?いや、裁縫っ…!清掃はっ…!)

 

「ジョウイ君?」

「―――め、メイド職では…」

「………(汗)」

考えた末に出された結論に、カイルはガックリと肩を落とした。

うっかりメイド職がはやっているのかとも考えてしまったほどだ。

「ジョウイ様さすがにそれ…;」

「ふむ…今晩試してみるか…」

「剥。何言ったーーーッ!?」

ギャーーー!;とシードが頭を抱えて叫ぶ中、更に騒動の元がバッターン!と扉を開けて堂々と正面から乗り込んできた。

 

「聞いたぞーーー!?ジョウイーーー!! 僕のカイルさんにメイド服を着せてあんな事をやこんな事をしようなんてっ…!!」

 

「カナターッ!?君、どこから入ってきて…!?」

言ってもいない事を聞いたと暴走する親友はさておき、一体どうやって敵の本拠地の最奥まで入ってきたのかを気にするジョウイだ。(だって言い訳しても聞かないから。)

見たところテレポートできた様子でもない。

「何かドアから入ってきて問題でも!?」

「いやそうでなく!;」

「ていうか、ジルさんがここまでわざわざ案内してくれたので顔パスでしたよ!」

さっとカナタが指し示した方には、喜色満面のジルがいたりした。

「買Wルっ!?」

「ほほほ♪お友達ですものね?」

妻に裏切られた夫としては、カイルの横で同じように落ち込むしかない状況だ。

どうやら、三角関係の修羅場が見たくてジルはカナタを連れて来たらしい。

「カイルさんっ…!ジョウイのところでメイドさんをするなんてっ…!何で僕専属じゃなダメだったんですかっ!?」

「しないからっ!;」

「こうなったらこの場でジョウイと最終決戦ですーー!!
  覚悟ーーー!!(怒) 戦争イベントなしでこのゲームにEDを迎えさせてやるーーーっっ!!(激怒)」

「カナタッ!;落ち着いて!!」

「わーーーー!!;」

この堂々たる暗殺を止めるべきはずの将軍二人は痴話げんか真っ最中で、全く動いていない。

「まあv痴話げんかですわね♪」

「ジルーーーーっ!?(泣)」

「オラーーーッ!(怒)」

「カナタ!;」

 

 

―――あわやの所で、一方的な殺戮が行われる前に、(カイルがカナタから瞬きの手鏡を取り上げ)一緒に本拠地に戻ることでジョウイの命は救われる結果となった…。

 

 

 

 

 

おまけ。

 

「でも、そういえばカイルさんはうちの軍に力を貸してくれてるわけですから、働いてるみたいなもんですよね?
  よし!お給料出しましょうかっ! 」

「え…;(全然何もしてないし)悪いから…;」

「僕の愛で支払いますよー♪♪」

「………(汗)」

 

その後、城主様のお守り賃という事で、城内一同の善意の給金がカイルに届けられるという…。

そして、別に賃金が欲しかったわけではないトランの英雄様は、こっそりと時々畑仕事を手伝う姿が城内で見かけられるようになったらしい…。

 

 

 

 

 

 

気が気でないというか…

正気でない感じです…。