1

 

「またオレに頼るのか?」

 

いつも通りそんな言葉を、このまんじゅう船こしあん軍リーダーにぶつけていた所だった。

交易だとか何かで外へ出かけるという話になり、そのお目付け役にテッドが選ばれたという状況だったわけで…

 

「やっぱさ、テッドって亭主関白だよね〜?」

「いくらカイカが良妻賢母タイプだからといって、毎度あの言い方はないと思います」

「少しは優しく言ってやってくれよ」

「減るもんじゃないし、いくらカイカが気にしてなくてもだな…」

 

元騎士団員の面々(保護者)の言い方に、テッドはブチリと切れた。

人が一生懸命にソウルイーターに魂を食わすまいと努力して冷たくしているというのにっ、つい情と心にほだされて(期間限定とはいえ)恋人になっているのさえ、かなり危ないというのに!

隣にいるカイカが、気にしていないと首を横に振る…そんなけなげな姿に感情を揺さぶられるのも、グッと堪えているというのに!

テッドのそんな苦悩も気にも留めず…―――――――コイツらは〜〜〜ッ!!(怒)

 

「鬼です」

「冷血漢」

「無感情人間」

「このむっつりスケベ」

 

…最期の一言にぶち切れた。

 

「お前らなッ! オレは別に恩さえ返さないでいいならっすぐにでも船を降りたって――――――」

 

 

「くしゅんっっ!!」

 

 

ゴン。

 

…天井からバケツが落ちてきた。

 

「くしゅんくしゅんくしゅんっっ!!」

 

ベチベチベチベチッ!

…今度はくしゃみの数だけ、魚が船底に転がった。

――――貿易に行くため、ビッキーにテレポートを頼む…まさにそんな直前だったのだ。

 

その場にいた全員が、ザーッと血の気を引かせた。

 

「逃げろーーー!!;」

「ユウ先生にくしゃみのとめ方聞いてきます!;」

更にビッキーがくしゃみをすると、今度は人が一人ずつ消え、海の方から水音が響いたり、悲鳴が上がったりが繰り返された…。

 

 

間。

 

 

「あ〜…びっくりした〜;」

「全員無事に済んで何よりですね、」

「タル、無事か?海に飛ばされてたけど…」

「何とかなー;」

ビッキーのくしゃみが収まり、ようやく船内に平和が戻った。

そんなつかの間の休息に、カイカだけがきょろきょろと無表情に辺りを見回し、一言呟いた。

 

「てっど」

 

「「「「え?」」」」

 

まんじゅう船船内…そのどこにもテッドはいなくなっていた…。

 

 

 

 

 

 

2

 

同盟軍本拠地、ぼっちゃんラブ城。

 

「あ〜…ヒマですねー何か面白いことありませんか〜?♪」

この城の主である少年、カナタは退屈していた。

まあ、退屈しているというよりは、まったりしていると言った方が正しいのだが。

―――そう。何故なら、少年にとって至上最愛の人であるトランの英雄、カイルが隣にいるのだから。これ以上に幸せな事は、カナタの中にはない。

その証拠に本当に退屈しているというよりは、何か面白いことを考え出そうとしている子供のような口調でカナタは呟いているだけだ。

「こう、青天の霹靂ーみたいなビックリ事件が起きませんかね〜?」

「何期待しているの…?;」

「面白いことです!もちろんっ僕とカイルさんに被害の及ばない程度の!」

…この少年が面白いと思うようなことは、大概何人も被害者が出るような事件である…。

「よーしっ何か面白いこと起これー♪です!」

カナタは魔法使いのようなポーズをとってそんな宣言をする。

 

―――いつもならばここで、カイルが微笑ましそうに微笑して終わるのだったが、今回に限ってそのカナタの言う「面白いこと」が起こった…。

 

 

ドッターーーンッッ

 

 

「「………」」

カナタがそのポーズをとった途端に、人が天井から…いや、何もない空間から降ってきたのだ。

「しょ、召還魔法をマスターしましたっ!?」

自分でもそんな訳はないと思いつつも、カナタは驚愕の声を上げた。

そして、カイルは…今までにない程動揺をその瞳に浮かべた。

 

「!」

 

――――服装は違っていても、あの顔…あの姿を忘れられるはずもない…

 

考えるよりも先に、カイルの身体は動いていた。

 

 

 

3

 

くしゃみの音と同時に、テッドは自分の身体がどこか異空間に投げ出されたのを、確かに感じた。

 

(嘘だろ!?)

 

絶望的になりながらも、なるべく回収されやすい場所にテレポートさせられる事を、心から願う。何しろ、未だに飛ばされたっきり戻らない船員もいたりするのだから。

ほんの一瞬だけに思える浮遊感の後、テッドの身体は無事通常空間…つまり、宙に投げ出されていた。

 

ドッターーーンッッ

 

当然。すぐに落下する。

「っ痛〜;」

見事に床に打ち付けられた背中をさすりながらも、現状を把握しようと身を起こすのだが―――やはり、それもつかの間だった。

「―――――――テッド!」

「おわあッ!?」

ガターンッ!と、再び床に頭を打ちつけるまでの勢いで、見知らぬ人影が抱きついてきたのだ。

「どうして…!」

赤い拳法着を着た、(見た目の年齢なら)同じ年頃の少年が、悲痛な表情で自分を見ているのが(抱きつかれたままの体勢で何とか)見えた。

「あんた…」

見覚えのない人物に自分の名前を呼ばれ、抱きつかれ、…ついで頭を打ち付けられ、一体誰だ?と問いかけようとしたのだが………何故だかそれは躊躇われた。頭の片隅で、何かの記憶が浮かんでくるような気がして――――…

 

「悪霊たいさーーーーんっっっ!!!!!(怒)」

 

「んなッ!?;」

スパーーーン!!

今度は額に何かの紙と平手がクリティカルした。

…その威力に、テッドの意識はふぅ…と遠ざかることしか出来なかった…。

 

 

…。

 

 

再びテッドが目を覚ました時、…そこは陰惨な修羅場と化していた。

 

「カナタッ(怒)なんて事するの…!」

「だってオバケですよ!悪霊ですよ!間違って召還しちゃったんですよ!」

 

…額に張り付いた紙を指でつまんでみると、異国の呪文らしいのったくった模様が描かれていた。

というか…

――――誰が悪霊だ…!(怒)

失礼な事を言う輩に文句を言おうとしたテッドだったが、再び温かい腕が自分の身体に巻きついてきた為、言葉を呑むしか出来なかった。

「幽霊でもなんでもいい…っ」

「あ”−−−−−!!(怒)僕のカイルさんから離れてくださいーーーーーッッ!!(怒)」

グイグイ!

ぎゅうぎゅう!

むうむうっ!

…プチッ。(怒)

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜いい加減にしろーーーーーッッ!!(怒)」

 

 

4

 

「で、あんたら一体何なんだよ?」

妙に涙を浮かべたバンダナの少年と、同じように赤い色の服を着た、少し幼い容貌の少年を前に、テッドは座ってそう尋ねた。

「テ…」

「それは僕が聞きたいことですよ?」

何か言おうとしたバンダナの少年の口を手で押さえ、額にわっかをつけた子供が口を開く。

「ここは僕の城のお部屋で、貴方がさっき天井から降ってきたんです!」

「………あ〜…悪い、」

わかりやすいようなわかりにくいような説明だったが、何とか理解できた。

どうやら、あの失敗くしゃみテレポートで、自分はどこか別の場所へ飛ばされて今の状況に至っているらしい。

確かにこの場合不法侵入したのは自分の方だ。

――――しかし。

妙に何かがひっかかる…?

そう…

「…さっき…オレの名前呼ばなかったか?」

何で知ってるんだ…?という疑問を、痛む頭の中テッドはよみがえらせた。

 

「………ちっ。」

 

わっかの少年の舌打ちが、確かに聞こえた。

「そんな感じの顔してた〜って事で済ませませんか?」

「一体どんな感じだよ!?」

「むっむー…」

疑問をぶつけたいのは山々だったが、何故かバンダナの少年の涙で潤んだ瞳を見ていると…何も言えなくなってしまう…。

「………とにかく、ちょっとした事故で入り込んだんだ。悪かった。すぐに出て行くから―――…」

と、そこまで言って、テッドはふと思い出した。

「そういえば、ここどこだ?」

「少なくとも、群集諸島じゃないですよ〜v?」

可愛く言う少年に、だから!何でそこまで知ってるんだ!?というツッコミを叫ぶテッドだ。

 

 

 

5

 

カナタは思う。

まずい。

非常にまずい。

別に誰がビッキーのテレポートミスで飛んでこようと構わないが、この人(テッド)だけはマズイ。

なぜなら、カイルがまだこの人の写真を大事に部屋に飾っているくらいに、愛に近い…いや、愛以上の感情をこの親友に抱いているのだから!

ライバルなんて無必要!

 

(僕の写真さえ飾ってくれてないのに…!)

 

そんな訳で、カナタはゴゴゴゴゴゴゴゴ!と燃え上がり、ここは一発、過去からの珍客に喧嘩を売らねば!と覚悟を決めた。

 

「元の場所に戻る方法を知りたかったら、僕と勝負ですーーー!!」

「だから何なんだッ一体!!(怒)」

一方的に喧嘩を売られた側は、額に青筋を浮かべて怒鳴るばかりだ。まあ、当然だろう。

カナタがビシィッとポーズを決めたために開放されたカイルは、

 

「…っもう戻らないで、ここにいて…っ」

 

と、ひっし!とテッドに抱きついた。

「ぎゃあああああああああああっ!!カイルさんーーーーっっ!!過去イベントの時はちゃんとテッドさんを置いて行ったのに何でですかーーーーー!!(怒血涙)」

「ちょっ…オイ…!;」←突き放せない

「〜〜〜〜っ」

ぎゅうぎゅうと抱きつくカイル。

 

…結局、勝てばいいのか、負ければいいのかわからない勝負は始まる事となった…。

そう…

カナタは、自分が勝てばテッドに帰る先を教えられず、この城に滞在するだろう事になるのを、未だに気付いていなかった。

 

 

6

 

「ちゃきちゃきー☆きこりの結び目ゲーム!!」

「ほんとーにっこの勝負をすれば、ここがどこで戻る場所がどこか教えるんだろうな?;」

妙にテンションの高い少年に、テッドはそう尋ねてみるが、相手は全く聞いていない様子だ。バンダナの少年は少年で、ずっと自分の方を見ているしで…正直目のやり場に困る。(何故だか、オレに関わるなと言えない…)

とりあえず、このゲームは交互にサイコロを振った分だけロープを登り、サイコロを振る代わりにロープに結び目も作れる。サイコロの目で1が出たら、その結び目まで下がるというゲームらしい。

 

(…何でこんなゲームを…;)

 

何だかぐったりしてしまうが、―――とにかく、早く戻らなければならない。何か喧嘩をしていた気もするが、まだ恩を返しきっていないのだから。

…〜〜〜別にカイカのことが気になるとかならないとかの理由ではなく…。

そんな言い訳を自分にしながら、テッドはロープを掴んだ。

 

 

7

 

(絶対に勝ちまーーす!!勝ってカイルさんの目を覚まさせて上げます!!(???)

 何かカイルさんは僕の方応援してる気もしますけど???―――まあ、とりあえずあの人は僕のカイルさんをとる敵ですーーー!!

 ムムームームームー!!)

 

 

8

 

(テッド…)

 

どう考えても、理性と常識は…引き止めてはいけないと囁いている…でも、どうしても引き止めたくてしょうがない。

―――以前の選択よりも選ぶことが困難な事態だった。

しかもこんな勝負で、テッドがいるかいないかが決まるのだというのなら…それは、少しでもテッドに一緒にいてもらいたい。

二度とあるはずのない親友と…

「頑張って…!」

思わず熱いエールをどちらともなく送ってしまう。

 

カナタとテッドは、かなりのハイペースで崖を登っており、決着はすぐにでもつきそうな様子だった。…少し残念だ。

 

「あ。」

 

そんな中、ついにテッドのほうが先に1を出したらしく、小さく声が上がったのが聞こえた。

そして、現れたのは、落とし役のムクムクで――――

「ムム〜…☆☆」

…何故か殺る気満々の様子だった。

「しまっ…!」

「ムムーーーー!!」

パイン!とムクムクの体当たりによって、テッドの身体は大きく弾かれた。

勢いよく跳ね飛ばされ、宙を舞うテッド…。

ロープを掴める訳もない。

何故かムクムクの「抹殺完了」といった表情を見ながら、テッドは地上に落ちるわけで…

 

ゴンッ。

 

…非常に痛そうな音が響き渡った。

 

 

9

 

カナタの親友の一匹であるムクムクも、カイルのことが大好きである。

ゆえに、カイルをこの城から奪ってしまうだろう(とカナタに言われた)相手に、容赦など出来るわけがない。

 

―――まあ、そんな理由はテッドには分からない。

分からないのだが、明らかな作為が感じ取れた。(カナタの)

本日三度目の頭痛に、テッドの堪忍袋ももはや限界で……………

「テッド!大丈夫!?」

「っ〜〜〜〜〜の、やろお…(怒)」

カイルの手も借りず、ガバリッと起き上がると、右手を掲げて紋章の詠唱に入った…が、

「我が真なる紋章よ――――(怒)」

「あっっ」

 

キィィィィイイィィイィイイイィィイィィ

 

その途端、ものすごい耳鳴りが鳴り響いた。

「なっ…!?」

 

…元々、同時に同じ紋章が存在することなどあるはずがないパラドックス…。

共鳴するようなものすごい耳鳴りと、右手の痛みに、(かなりダメージの大きかった)テッドの意識は途切れ、すぐに真っ暗な闇の中へと溶けていった。

…そして、その姿も…

「あ…」

「カイルさん大丈夫ですか!?」

耳を押さえたままの姿勢で、唇をきゅっと噛み締めるとカイルは…

「カナタのバカッ!(怒泣)」

「ああっvv! 何かカイルさんが可愛いですvvv!;」

 

…頬に右ストレートを食らわされながらも、カナタは結構幸せそうだった。

 

 

10

 

(ん……)

 

ザリザリザリ…

 

そんな音で頬に感じる温かくも、紙やすりのような感触を感じ、テッドはゆっくりと目を開いた。

目の前には見覚えのある体色をした猫。(確かまぐろとかいった猫だ。)

にぃにゃぁ

(ここは…物置か?)

元巨大オベル船であるまんじゅう船の中は、とても広い為、特定は出来なかったが、確かに周りの備品や転がる樽を見たところ、大体そんなような場所であるはずだ。

「オレは…?」

そう、ビッキーのくしゃみによる暴走テレポートに巻き込まれたのだ。

で、それからバンダナの少年や、異様にやかましいわっかの少年に、会って――――…

(て、それは夢だろうな。)

頭や背中の痛みもあるため、どうやらここに落とされて気絶していたらしい。

擦り寄ってくる猫を一撫でして、とりあえず自分の部屋に戻ることに決め、テッドが物置から出ると。

そこには…

 

「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」

 

廊下にいたであろう船員達から、ものすごい注目を浴びた。

(な、なんだ!?)

「「「「「「「「「「いたーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」」

「うわあッ!?;」

突然の絶叫に、テッドは訳が分からず、硬直してしまうと回り中から一瞬にして人がたかって来た。

 

「あんた一週間も勝手に消えてるなんてっ!カイカがどんなに悲しんだと思ってるの!人でなし!」

「人非人です!」

「あんなことだけ言い残して、出て行くなんてないだろ!?ダメ人間!」

「鬼畜!」

「鬼!」

「夜の帝王!」

「エロ魔人!!」

 

「は?(怒) 一週間!?何が―――…」

 

 

…過去に飛ばされ、戻ってきたというその歪みで出来た、空白の一週間…。

そのせいで、テッドは身に覚えのないことで責められ、しばらく非難の的になったらしい。

 

 

 

 

END

 

おまけ

「………」

「カイルさん〜;機嫌直してくださいよ〜;ていうか、落ち込まないでください〜;」

「………」

カナタはカナタで、めいっぱい落ち込んだカイルを慰め続けた為、やっぱり苦労していたらしい。

 

 

 

 

完成です。

ノリと勢いで大暴走w

正直、テッドさんが不幸な気が…(吐血)

まじめな人ほど苦労するこのサイト…(笑)

 

 

 

蛇足

「カイカこの一週間何も口に入らなかったんだからね!まんじゅう以外!」

「まんじゅうだけかよッ!体に悪いだろッ!?(怒)」

「てっど…。」(ぴとっとくっつき)