息を整える。
吸う、
吐く、
ゆっくりと目を開き、今の標的となっている物を見る。
ただの木製の的だ。
別にそれが襲ってきたり、攻撃を仕掛けてくれるわけではないが、とりあえずの的という物が必要だった。
まだまだ重みの足りない身体が、正面からの無手の戦闘に向いていない事は分かっているが、実際何も武器がないときに全くの無力でいる必要もない。
「ふ―――…」
的に向かって蹴りを叩き込む。
型通りの動きにイレギュラーな動きを混ぜてみて、連打。
まだ蹴り技の方が威力があるだろうので、重点的に蹴りの動きを続ける。ブーツの先に仕込んだ重りがめり込み、ぎしりと木の杭が軋んだ。
そろそろこの的は限界かもしれない。かなり丈夫に作った筈だが、その内に折れてしまいそうだ。
最期に力を乗せて蹴りを放つと、カナタはふっと息を吐いて動きを止めた。
「…動かない的相手にするのも、やっぱり問題ですよね〜?」
手合わせの相手になってくれそうなのはワカバだが、幾ら強いからといって女の子相手に容赦なく手合わせをする訳にもいかない。
かといって、他の人間では口が軽いし…
暗殺不意打ち、そんな戦法の方が自分には向いていることは分かっているけれども、まともに訓練をしているのを知られるのは恥ずかしい。
首にかけたタオルで額に浮かんだ汗を拭いながら、カナタは人気のない秘密の訓練場から立ち去ろうとして、体の向きを変える。
…その時。
「………」
「………」
「ムム〜」
ムクムクを抱えたカイルが、そこには立っていた。
一流の武人と獣。…気配を感じ取るには、カナタのレベルがまだまだ未熟だったようだ。
「かっカイルさん…!!どうして!?いや、いつからここにーーーーーーーーっっ!!!!!」
「え?;カナタがいなかったから探してたんだけど…ムクムクがここにいるって教えてくれて…カナタが訓練してる時から…」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッギャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「あ;カナタ!?」
真っ赤になって逃げていくカナタと、それを止めようとするカイルの姿というのは、案外珍しい光景だった…。
「行っちゃった…」
「ムム〜♪」
カナタの姿が消えたのを見て、困ったように首を傾げるカイルだったが、少しだけ微笑すると、嬉しそうに呟いた。
「カナタも…ちゃんと訓練とかするんだ…」
僕もちゃんとしないと、と呟いてカナタを探しに向かうカイルに、ムクムクが「ムムー!?」と騙されちゃいけない!という風に鳴いた。
その頃。
「うわーーーーーうぎゃ〜〜〜〜っっぎゃーーーー!うーーーーわーーーー!!(///)死ねますーーー!!恥ずかしいーーーーーーっっこんなんだったら、暗殺現場を見られた方が良かったですYO−−−−!(悶絶///)」
「カナタどうしたのーっ!?;」
キャラまで変えて、地面の上をごろんごろんと悶死しているカナタの姿が見受けられたという…。
カッコイイ…?
惚れ直す…?
………やれるだけの事はやってみました…♪(爽やかに)
うちの2主にカッコイイ姿などない!と開き直ったほうがよかったかもデスネ…☆
吐血!