ビュッデヒュッケ城改め、トーマスくん城と名づけられた、炎の英雄率いる集団の本拠地。
そのグラスランドの中の中立地帯では、今何気なく15年前と18年前の戦いの英雄の二人が揃っていたりした。
これはごく一部の者しか知らない話だったが、トランの英雄カイルと、デュナン統一戦争の英雄カナタが、滞在しているのだ。
もっとも二人は英雄らしく生きるとかいう事もなく、のほほんと二人仲良く旅をしていたのだったが、ひょんな事があってから、この宿星の集う場所に滞在する羽目になっており…まあ、天魁星の引きの強さを舐めてはいけないという話だ。
何だか一見平和かつ、不思議にほのぼのとするこの城の生活は、カイルにとってはなかなか気に入る生活だったのだが、カナタにとっては――――…
「あう〜」
風呂敷を背負った眉毛犬を抱き、カイルは畑のすぐ近くに腰を下ろして平穏そのもののに風の流れを感じていたりした。
コロクの毛並みも、カイルのバンダナも、心地よい風に揺らされ、気持ち良さそうに目を瞑る1人と1匹。
畑の主、バーツの差し入れてくれた採れたてトマトも横に置かれており、心穏やかにカイルは過ごしていた…。
――――の、だが。
それも半泣きの少年が現れるまでだった。
「ガイ”ル”ざーーーーーーーーんっっっ!!!!!(泣) もーっ旅立ちましょうよ”〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!(号泣)」
どわあああーーっ!とダッシュでカイルに駆け寄るカナタの雄たけび。しかし、どわあああーーっ!と走ってきたのは、彼だけではなかった。
…何か異様に人数が多かったりした。
「カ…;」
「ええ〜っダメですよ!トーマスさま為にもお城で商売してくれる人は出て行ったらダメです!」
「僕は商売してませんよっ!(怒)」
甲冑少女に突っ込み。
「セシル無理言っちゃダメだよ…; でも、僕としてもも少しだけえも滞在してほしいですから…」
「あのっトーマスさんっ…オレもこの戦い終わってもここにいてもいい…っ!?///」
「え?ヒューゴさまはカラヤに戻らないといけないんじゃ…?」
「トーマスさっ…(涙目)」
「ひぃっ;地味なイジメやめてくださいっ」
「ヒューゴさまっ一緒にからくり丸Zの改造しませんかっ!?」
「メカフェチはお母さんそっくりなんですか!?」
「誰でもいいから腕相撲勝負しようよっ!」
「それも修行になるのでしたら、私がお相手…」
「なりませーーんっっ!!フッチーーー!!助けろーーー!!」
「そう言われても…;」
「あー!ごっめーん! 馬が逃げ出しちゃったー」
「もげらーーーっっ!!;l」
スコーン!と何故かあの集団の中、カナタだけが見事に暴れ馬に跳ねられた…。
「カナ…;」
「しっかりしてください! セシル、トウタさんの所に運ぼう!」
「はいっトーマスさま!わかりました!」
「あっ!オレも行く!」
「じゃあ私もー」
「ギャーー!;いいから僕をカイルさんの所にーーー―――――あ”〜〜〜〜っ;」
「……………」
遠ざかっていく声。
15年の月日をかけて、ようやくカナタにも他の人間と仲良く(※カイルの目にはそう見える)出来るようになり、友達も出来た(※同上)というのに…
「あう?」
「………」
―――何だか異様に落ち着かない。
首を傾げながら、見上げてくるコロクになんでもないと言うように微笑むと、立ち上がって籠のトマトを持って歩き出した。
「…お昼にしようか?」
「あう〜」
「これ…よかったら、食材に」
「うわ〜ありがと! さっそく使わせてもらうからね」
コックの少女はそう言うと、採れたてトマトを嬉しそうに受け取った。この城の少女は元気な者が多い。
出された特製ランチ(取れたてトマトサラダ付)をコロクと食べながら、―――コロクはコロク特製ランチ(骨肉盛りだくさん)―――カイルはため息をつく。
―――何だか体調が悪い気がする…
朝起きた時はそうでもなかったのに、近頃昼過ぎにもなると、胃の辺りに重いものを感じるのだ。
「―――…?」
今まで病気らしい病気にかかった事のないカイルは、自分の体調不良に、首を傾げるばかりだ。
食事も一口ばかりで手を止めると、お腹の辺りに手を置いてみる。
別にそこが痛いというわけではないけれど、胸の部分ももやもやグルグルするのだ。
(トウタくん…さん、の所に行ってみようかな…?)
―――あ…でも、カナタも運ばれてるし…
また少し胃の辺りが重くなった気がする。
「?;」
「あう〜」
心配なのか、食事を終えたコロクに前足でのっかかられ、カイルは視線をそちらに向けた。膝に前足をついた、いつも困ったような顔をした犬に、少しだけ気分も和む。
そして、またそんな時だ。
「カイルさんーーーーーーーーーーっっ!!(泣)やっと逃げてこられましたーーーー!!!!!(泣)」
「、カナタ…」
遠くから半泣きで、(包帯男にされた)カナタが走ってくるのが見えた。
もちろん少年の言うとおり、逃げて来た為に周りには誰もいない状態だ。
―――――その事に、何故だかふっと胃の辺りの重みが消えた―――その途端。
「あ、ちょっと待ってー」
「へぶうッ!!;」
エイミにおたまで首を引っ掛けられ、カナタは自分の速度で首が絞まった。危うく声帯が潰れるところだ。
「この間聞いた料理試作してみたんだけどさ、ちょっと食べてみてよ!」
この間聞いた?試作?
「え!?アレホントに作って…!? というか、僕はカイルさんに…て、アレ…」
「……………」
ぎゃあぎゃあと揉めるカナタを前に、カイルは―――――
(……何か…、気持ち…悪…っ…)
「っ…」
がたん…!
「あああああああっっカイルさーーーんッッ!!;」
「わあっカイルさん!?カナタさん、一体何が―――」
「いいところにフッチ!担架ーーー!!担架どこですかーーーっっ!!いやもう担いで走りますーー!!」
しっかりしてくださいーー!という声を聞きながら、カイルの意識は遠くなっていった…。
「カイルさーーーーん!!(泣)」
「………」
カイルが目を覚ました時、そこにはひっし!とカイルに覆い被さって泣いているカナタの後頭部が見えた。…今度は物理的に腹部が重い。
「カナタ…」
「ハッ!カイルさん!!無事でしたかーー!? 心配しましたーーっ(泣)」
叫びながら抱きついてくるカナタ…。
(あ…気持ち悪いの治ってる…)
その姿を見て、ほっとしたのか、ようやく自分の体調が戻っていることに気がついた。
眠ったせいか体調は普段通りの状態に戻っていた。
「ちょっと気分が悪かっただけみたいだから…もう大丈夫。…ごめんね?」
「いえっ心配ですーーー!!今日はもう医務室トウタに言って貸し切りにしてもらいましたから!看病しまくりますーーー!!」
「………;」
ぎゅうぎゅうに抱き潰されながらも、「何で具合が悪くなったのかな…?;」と思っているカイルと、全くその原因に気付かないカナタ…。
その一部始終を聞いていた――見張りに無理やりされて、ドアの前に立たされ中の――のフッチは、
15年かかってようやく”嫉妬”してもらえたんだ…(というか、15年かかってようやく友達出来るようになったカナタさんて…;)
と思ったとか思わなかったとか。
久々に幻水3!
…というか、具体的な恋敵像が思い浮かばなかったという…orz
なんてうちの2主はもてないんだ!(笑)