「カイルさん!一緒にお風呂に入りましょう!!」

 

 

ある日の夕方…。

カナタは突然そんな事を言い出した。

「………?;」

確かに。今、入浴するのに、早い時間と言う訳でもなく、そろそろ入る時間かな?と思える時間だった為、断る理由はないのだけれど…

―――――カナタの異様なまでに、熱意のこもった声が怖い。

カイルは一歩退いた。

「…お風呂って…そんなわざわざ言わなくても…;」

しかし、それでも何とか「いつも一緒に入ってるし…;」と首を傾げながら問いかける所は、カイルの甘い所だろう。

「違うんですーーーっ 今日こそカイルさんと(イチャイチャラブラブな)2人っきりでお風呂に行きたいんですーー!!」

「――――…。」

ぶんぶんと、首を激しく振る少年の姿に、別に(一緒に入っても)構わない気持ちが半分。…よくわからない不安がもう半分。

―――カイルの脳裏に浮かぶのは、過去、お風呂場であったあの悪夢…。

 

最初の頃、別に気にもせず、2人きりで入った時。―――カイルは、興奮したカナタに抱きつかれ、湯舟で溺れさせられた…。

また、ある時は、暴走したカナタにお風呂場で押し倒され、湯当たりした事もある…。

そしてまたある時は、カナタが鼻血を噴き出し、湯舟が真っ赤に染まった事もある…etc、etc…。

 

「………」

この頃はいつも、必ず人がいる時を見計らって入浴する事になっていたのだが…カナタは、それではなく、2人きりで入りたいと言っているのだ。…そんな事を続けられているのだから、幾らカイルと言えども、今この瞬間YESという訳にはいかない。寧ろ出来ない。

当然返事は…

「それはちょっと…;」

「ダメなんですかッ!?」

首を横に振ったカイルに、ガーンッとカナタはショックを受けた。

――――いつもならば、ここでゴネにゴネる少年の姿が見受けられるのだったが。今日は何故か反応がない…。

 

「………。」

「………?;」

 

何やら嵐の前の静けさのような予感が襲う…そんなカイルの目前で、カナタは懐から何か食べ物らしい包みを取り出し―――――

 

 

ぴよこv

 

 

そう、ズラリとぴよこまんじゅうを黙々と並べ出した…!

犯行声明は、

 

「一緒にお風呂に入ってくれたないとッ!!このぴよこまんじゅうの首をスッパリとやっちゃいますよーーーッ!!」

「ッ…そんなっヒドイ!;」

 

…脅しになっているのか、なっていいないのかはわからないが、一応カイルには効いている。

本物のひよこなら、許されないであろう行為もまんじゅうな所が、カイルのギリギリ許容範囲の隙を付いている…ようなそうでないような。

まあ、とにかく。

周りから見ていたメンバーらはというと、

 

お前ら…イチャつくのは他所でしろ。

 

と、心の底から思っていた。

 

 

 

 

 

 

カコーン…。

 

人気のない風呂場(貸しきり)の中…

2人は、当然のごとく身体を流していた。

「カイルさんーvせっけん取って下さい〜♪」

「あ、うん。はいどうぞ、」

―――平和な光景だ。

ひよこまんじゅうを人質に取られたカイルは、否応無しに2人きりのお風呂vを強制させられていたのだが――――――入ってしまえば、特に気になる事はない様だった。(少々身の危険)

「ありがとうございますー♪」

…そこがカイルのいい所なのか、悪い所なのか…判断し難い所だが、この場合完全に利用されている。

「お礼に背中洗ったげます〜vvv」

「え? い…」

「遠慮無しですよ!」

わさわさとタオルでせっけんを泡立て、カナタは有無を言わさずカイルの背後に陣取る。

こうなれば、もう嫌とは言えない状況だ。

「…じゃあ;、背中だけ」

「…………」

返事はない。

「カナタ?」

「…泡あわわ〜♪背中を洗いますー♪」

「ひゃっ?;///」

音の外れた謎ソングを歌って、少年は誤魔化した。

しかも、急に背中に触られた為、カイルは身を捩ってくすぐったがっている。

「カナタっちょっとくすぐったいんだけど…!;」

「気のせいですよ♪」

抗議をイイ笑顔で否定する。かなり無茶だが、―――当然わざとである。

洗うと言うよりは、撫で付けるといった感触で、カイルの背中を泡だらけにする少年は艶まさに、セクハラ魔としか言い様がない姿だった。

 

 

やっぱりお風呂で2人っきりなら、襲わなきゃダメですよね…っ!(BYカナタ)

 

―――一緒に入るんじゃなかった、カイルは心からそう思った。

「くすぐったいから!;カナタッやめ…」

「大丈夫です!まだ背中です!!」

「まだって…!?やっ;」

湯舟から立つ白い湯気と、泡がシャボンとなって舞う光景…

それはとてもほのぼのとしているのだが、その中にいる者らは、そんな物を見る余裕はない。

襲う者とと襲われる者…その戦いは非常に殺伐とした攻防だった。

「洗ってるだけですからーっっvv」

「何か違うからっやめて…!;」

もがくカイルに背後から抱きつき、カナタは引き剥がされないようにセクハラを働く…。

カイルは何とかそれを阻止しようとしているのだが、泡で滑っている為、不利な様子だ。

 

―――戦いの中、カイルはかなりの身の危険を感じていた。

 

「〜〜〜〜〜っ;」

このままでは、確実に押し倒される羽目になるだろう…。

あれだけの騒ぎで、お風呂に入ったのだ…

城中に、「やっぱりそうなったのか…」と生暖かい視線で見られるのだけは嫌だと、カイルは今さらながらにそう思った。

「っ―――今すぐ止めてくれないと嫌いになるからっ!(怒汗)」

「はうっ!!;(ビクッ)」

必殺の呪文で、カイルはカナタの動きを止めた。

カナタは200のダメージを受けた。

「そ、それは勘弁して下さい!;」

カナタが一歩退き、カイルがほっと息をついたその時だ。

ふいにカイルの視界に、足下に転がるせっけんを踏みかけている動揺中の少年の姿が映った。

「カナタ…危ない!;」

「え?―――って、わ、わ、わ…ぎゃーーーー!!;」

 

…まるで、コントの1シーンのように、カナタは床の上を滑って行った。

 

…当然、そのすぐ後に、鈍い音が響く。

「……………カナタ?大丈夫…?;」

おそるおそるカイルは、勢い良く滑って行った少年に声をかけるが…

「……………」

返事はない。

ただの屍のようだ。

「(じゃなくて!;)―――カナタッ!?大丈夫!?;」

慌てて近づいて見てみると、風呂場の床を真っ赤に染め、カナタはドクドクと血を噴き出している最中だった。

「!!!!!!;」

 

 

 

「カナタ、しっかりして!;」

かなりの割合いで、自業自得なのだが。それでもカナタを心配出来るカイルは、あまりに人が良過ぎるかもしれない。

先程のセクハラ行為も忘れ、カイルは治療の為に少年の頭を抱え起こした。

「………(大丈夫かなぁ?;)」

「うー…;―――――はっ!あれ?え?…何ですかこの美味しい状況はッ!?」

「………おいしい???;」

「ギャーーーvv体勢的にもッ!!?うっ白っピンク…ぶはッv!v!v!v!」

「カナタッ!?!?!?;」

…一気に血圧が上がったが為に、頭からも鼻からも止めどなく血液が噴き出す…。

 

一瞬にして風呂場は血染めとなり、漂う血臭が猟奇的な香りを漂わせて…―――その日の男湯は閉鎖された。

 

 

 

 

 

 

その後。

 

「カイルさんいい湯ですね〜v」

「うん、」

「広々と入るのが気持ちいいですよーv」

「そうだね、」

カポーン…と、湯気立つ平和な風呂場。

 

「…フリックさん、邪魔ですからそろそろ出て下さいv」

「フリック、…出るまで絶対上がらないでね?」

 

「………(頼むから巻き込まないでくれ…ッ!シュウと同じ胃潰瘍になりそうだ…ッ!)」

誰かを巻き込んでの、入浴タイムの日々が当分の間、続けられたと言う…。

 

 

 

 

 

 

一緒にお風呂です!

…でも、結局湯舟には浸かってないのですが。(吐血)

ありがとうございました〜;

こんなのになりましたー;

…かなりいつも通りの騒動ですね。

というか、ひよこまんじゅうのシーン…

思い付いた時は、「コレだ!」(どれだ;)と思ったんですが…

なんじゃそらといった感じです。(死)