節分!!
「ふっふっふっふっふ…」
無気味な声が薔薇の香りが満ちた庭園内に響く。
暗闇の中蠢く人陰は、十中八九この城のリーダーのモノだろう。
少年は地面を掘り返し、ひと粒の『豆』を埋めている。
ポンポンと埋めた箇所を叩くと、満足げに彼は呟いた。
「―――明日の『節分』が楽しみだ〜v」
「………………」
「さあ!!豆まきやりましょうっッ!!」
さあ、と言われても……とカイルは呆然と天を見上げる。
巨大な豆の木。
まるで絵本の『ジャックと豆の木』のようだ。一房の豆が人の頭三個分ぐらいの大きさがある。
「これ………どうしたの?」
「ちょっととある人の所から取り寄せましたv『ジャックと豆の木豆』です♪」
「―――くしゅっ」
「ジルどうしたんだい?」
「なんでもありませんわ、」
「まあ、そんなことは置いといて。豆まきしましょうっっ!!!」
「………」
『そんなこと』なのかなあ…と思いつつも、口に出さずにカナタの横に並ぶ。
なにやら、一晩で生えた豆の木にたいして苦情が後ろから上っているようだが、カナタは完全に無視し、えいっとかけ声を上げながら腕一杯にもある豆をちぎる。
「この際、生でまいてもいいですよね〜♪♪♪」
さやを裂いて中身を取り出すと、普通サイズの豆がバラバラとこぼれ落ちた。
「あ、………普通の豆だ…」
意外に思いながら緑の粒をひらう、生の割には固さがありこのままでもまけそうだ。
「え?何がですか〜?」
ごそごそと下を向いて作業をしているカナタの方を向くと………
「カナタ……それ」
「機関銃ですけど。」
「………」
カイルは無言で『豆鉄砲』を棍で破壊する。
こんな物で豆をくらっては、本当に命が危ない。
「あはは〜v冗談ですよ〜vvv」
「…………」
以外にあっさり引っ込んだカナタ。
「じゃあ、いっきま〜すv」
カナタは升に豆を入れ、くるりと同盟軍メンバー達(=野次馬)の方を向いた。
本気で投げたとしても、たかが豆だと思い逃げる者は少ない、
「鬼は〜外v」
「っと、………………うっ!?――ぎゃあああああああああっっっっ!!!!!」
カナタの投げた豆が運の悪いメンバーに当たる、そしてその直後にその者から絶叫が迸る。
なぜならば、あたった瞬間に豆が発芽………全身に絡み付いたのだ。無論立っていられるはずもなく、簀巻き状になって転がる。幸い呼吸はできるようだ。
「カ、カナタ?」
「…ふふふふふふふ、」
カイルには背中しか見えないが、現リーダーの周囲に黒いオーラが見えた(気がした。)くるりと振り返った時に見えた表情は、いたずらが成功した子供のような顔だったが…
「実はこの豆はあたった瞬間に発芽したりするんですっ!!!!」
にやり〜ん☆
笑いながらカナタは次の豆をわっしと掴む。
「じゃ、次いっきま〜すv福は〜内〜〜〜!!!」
「っつ!」
慌ててカイルは飛んできた豆を棍で弾き飛ばす、
あたった瞬間に豆が絡み付いてきたためカイルは棍を投げ捨てることになった。
じりじり後退して間合いを測る。
「鬼は〜外〜♪♪♪」
「ぎゃああああああああ!!!!」
「うわあああああああああっっ」
「きゃあああああああああっ」
城中から上がる悲鳴、さながら地獄絵図だ。
「観念して下さいっッ!!!」
「……………」
は〜は〜と乱れた呼吸とうにょうにょと蠢く豆だけが辺りを支配する。
息を整えつつカイルは『なんでこんなに豆まきで体力使って(逃げ回って)るんだろう…』などと考えていた。
答えはわかりきっている。身の危険を感じているからだ。
「鬼は〜…」
「あーーー!!」
逃げる気もうせたカイルが目をつぶった瞬間、甲高い声が上がる。
「カナターーー!!だめじゃないっ!!」
「あ…」
「ナナミちゃん…」
城中が豆で全滅している中、何故か彼女だけが無事だった。
「豆はちゃんと煎ってからまかないと!!」
そういう問題でもない。
「でも大丈夫っ!お姉ちゃんがちゃんと煎ってあげるからv」
チャキッとナナミが手に構えた物は……
―――火炎槍。
ぐごごごごごごごごごごごごごご
「うわっっっっ!!!!ナナミ〜ッッッ!!!豆はフライパンで煎ようよっっっっ!!!!!」
カナタの悲鳴は火炎槍から上がる轟音でかき消される。
結局カナタはナナミが城中の豆を焼き付くすまで、カイルを抱えて走り回ることになった………。
人はコレを自業自得と言う。
「あはははははv年の数+1、豆食べるんですよね〜vvv」
「………うん。」
ちりちりと焼け焦げた髪のまま、ハイヨ−に煎ってもらった普通の豆を食べる二人。
毎度の事なだけに、何も言う気力がないカイルだが、城の修繕費が同盟軍で一番多くかかっているんだろうなあと、考えていた。
後日談だが、のり巻きを丸のまま20本(おい。)食べたカナタが喉を詰まらせたらしい………。
終わり