ホワイトデー戦線
〜ホワイトデー前夜〜
「ふふふふふふふ…」
グツグツグツ…
鍋が煮える音が真夜中のレストランの厨房から響く…。
しかも『鍋』の枕詞に『魔女の』がつきそうな音だ。
「おいしくなれ〜おいしくな〜〜〜れ〜〜♪」
部屋中に充満する甘い香りは、お菓子を作る時の匂いに似ていたかもしれない………
―――ピピピ…チュンチュン…
のどかな鳥の鳴き声に目覚めを促され、カイルはうっすらと瞼を開いた。
覚醒していくのと同じくして、隣に寝ていたはずのカナタの姿がないのに気づく
―――が、気づかなかった方がカイルにとって幸せだったかもしれない。
カナタは隣にはいなかった。そう、隣には。
「―――カナタ…?」
隣の体温がない事をいぶかしみ、カイルは身体を起こすと………………目を大きく見開いた。
「―――――――――………」
カナタはいた。
ベッドの側に。
―――それだけの事ならば、特に驚きはしないだろうが、それだけではなかったのだ。
「カナタ………何してるの?」
恐る恐るといった感じで尋ねるカイル。
カナタはたしかにいた、ただ普通の状態ではない。
―――巨大な琥珀色のブロックから首を出していたのだ………。
見た感じ、樹液に閉じ込められた虫の化石のようだ。
「あっv起きましたーーーvvvカイルさんおはようございます♪」
「おはよ………で、何してるの?」
部屋に充満している甘い香りどこかで嗅ぎ覚えのある匂いだ。
「―――今日何の日か知ってますかv」
「今日?」
カイルは最近読んだ『年中行事の全て』を思い返す。
3月14日、 『ホワイトデー』
バレンタインデーにプレゼントを受け取った者がお返しをする日。
例;)飴、マシュマロ、クッキー、ぬいぐるみ、etc…
「…………えっと、ホワイトデー?」
「大当たりですーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」
パチパチパチと手を叩きたいのだろうが、カナタは今巨大な飴に包まれているので身動きが取れない…。
部屋に充満している匂いは飴の甘い香りだったのだ、
「頑張ってべっこう飴作ったんです!!それで!やっぱり僕自身もプレゼントしようと思って中に入ったんですっっ!!」
「―――飴って冷めると固まるんだよね?」
「はいvだから熱い内に中に入るのは大変でしたッ!火傷しましたし、溺れかけたりもしましたvvv」
〜ちなみにどうやってここまで来たかと言うと〜
「カナタ……がんばるのよっ!お姉ちゃん影から見守ってるからねっ!!」
とかいいつつ、試作品の飴(カナタからのバレンタインのお返し)を頬張るナナミの協力があったのだ。
「さあ!食べてくださいッ!!」
「食べてって言われても…」
かるく1メートル四方はある巨大飴だ、どう考えても無理だろう。
「カナタ………(絶対ムリ…)」
うぞうぞうぞ…
「!」
カイルは何か妙な気配を感じ棍を手にとった
「あれ?」
「?」
カナタを見ると、カナタの位置が数十センチ程だが移動しているように思えた、
カイルはごしごしと目を擦る
特にかわった所はないように見えたが…………
ズル………
またもやカナタの身体(?)が動く、目をこらしてよく見てみると、床が微妙にうぞうぞと動いて見えた。
「???」
カイルは怪訝に思い、棍で床をつついてみると……
黒と思っていた絨毯が棍でつついた箇所のみ、本来の色を取り戻した
「!!!!!」
ゾワアッと総毛立つカイル
床を埋め尽くしていたのは、甘い物の天敵
――――――蟻。
「カナタッッ!蟻に集られてるッッ!!!」
「えっ?」
カイルが叫んだ瞬間、カナタはものすごいスピードで窓まで運ばれていった
「うっぎゃーーーーーーーーーーっっ!!運ばれてますーーーーーーッッ喰われますーーーー!!!!!」
「カナターーーーー!????」
-しばらくお待ち下さい-
「hh………巨大蟻に消化されかけました〜〜〜〜」
「……………」
取り敢えず、何があったかの描写は控えよう。
二人はかなり遠くまで来ており、歩いて本拠地まで戻っているとだけのべる…
「カナタ……気持ちだけでいいから…」
「h〜〜〜せっかく愛を込めて作ったんですよ〜〜〜」
「気持ちだけでいいから……」
再度繰り返し言うカイル、
その言葉に何やらカナタは考え込む、
「じゃあ、気持ちがこもってるものプレゼントします♪」
うにゃり。
「?」
「えいっv」
ぐいっとカナタに手を引かれて、カイルは前のめりに転びかける。
―――その隙を狙ってカナタは素早い動きで唇を奪った
―――ちゅ、
音を立てて離れる短いキス
「愛のこもったキッスvですvvv」
あはははは〜♪と呑気そうに笑うカナタ、『な〜んて』とつなげる所がカナタはカイルの顔を見た瞬間そのまま固まってしまった、
「……あ、ありがと…(///)」
かぁ〜〜〜っとカイルは真っ赤になって照れていた。
「!!!!!(かっかわいすぎですっっ!!)」
鼻血を噴きそうになるのを堪えて、カナタはどぎまぎしつつも右手を差し出す。
「え〜っと、ちゃんと普通のプレゼントもあるんで、早く帰りませんかっっ(な、なんか緊張します)」
「うん…」
珍しく、飴の甘い匂いと甘いムードを発しつつ本拠地へと帰宅する二人だった。
な〜んで〜やね〜ん!!(ツッコミ)