それゆけハイランド!!

 

ある日の早朝会議、突然のルカの台詞に皆が呆然とした…。

「おい!!異国には体育の日というのもがあって、その日には国民の健康のため、肉体を鍛えるらしいぞ!!よってわが国、ハイランドでも国民の肉体を鍛えるため、運動会というものを開く!!!兵士は全員参加だ!!逃げるなよ…。わっはっはっはっ はっはっはっ!!!!!」

(また良からぬことを…)

小さく嘆息するクルガン。

ふと横にいるシードを見てみると彼は呆然とルカを眺めて いた。

「シード???」

クルガンが軽く声をかけるとシードは弾かれた様にクルガンの方を見て言った。

「なんかすっげぇ〜、面白そうだな!!」

深紅の瞳を輝かせるシードを見てクルガンはまたひとつため息をついた。

 

何時の間にやら軍議そっちのけで『運動会』なるものの準備にとりかかる羽目になった…。

(何故私がこのようなことをしなければならないのか…)

炎天下の中汗一つかかず、ライン引きをする中、クルガンはぼんやりとそんなことを思っていた。

しかし、隣で鼻歌を歌いながら同じくライン引きをするシードを見て軽く首を振るとライン引きに意識を戻した。

 

「晴れて良かったなぁ〜♪」

にこにこと笑い、赤色のハチマキを額に巻きつけながらシードがクルガンの所へと歩み寄ってきた。

「そうか?」

半ばうんざりとした表情でクルガンが言う。

その首には青いハチマキをかけている。

「そうだよ!!よっしゃぁ〜〜〜!!今日は優勝を目指すぜ!!」

「くくく、ならば賭けるか?」

「おう!!望む所だ!!俺が優勝したら酒奢れよ!!」

「では、私が優勝したら何でも言うことを聞いてもらおうか」

「!?…なんか不公平じゃねぇか?」

訝しげに言うシードにクルガンは軽く笑って言った。

「気の所為さ」

こうしてシードはクルガンのペースに引きずり込まれたのであった。

 

「よしっ!!お前ら、優勝するぞっ!!!」

「オー―――――――!!!!!」

紅い髪を靡かせ、赤組リーダーのシードが叫ぶとそれに呼応するように兵士達が答える。

しかしその中身は邪な思いでいっぱいであった。

(シード様に気に入られるチャンスだ!!ああ、それにしてもシード様の生脚は白くて綺麗だ…)

今日のシードの格好は赤い短パンに白地に赤のラインのTシャツ、という陸上選手のような格好であった。

 

「……………」

青組リーダークルガンはこの上なく機嫌が悪かった。

(シードの奴…、あれほど肌を出すなといったのに…)

「あ、あの〜」

(赤組の奴らめ…)

「クルガン様…」

「……………」

勇気ある一人の兵士がクルガンに声をかける。

しかしその努力も空しく、クルガンの一瞥によって石化してしまった。

目で殺すとはこういうことをいうのであろう。

(……気の毒に…入隊したばかりで知らなかったんだな……)

周りの兵士達は思った。

 

「わはははははは!!!!貴様ら!!優勝できなかった時はどうなるかわかっているだろうな!!!」

白組リーダーのルカのとんでもない一言に白組兵士達は生命の危機を感じた。

(この人ならやる…!!!)

死にたくなければ優勝するしかない、そう決意したのは言うまでもないであろう…。

 

「父上、ここはルカ様をたてて準優勝を狙うのが妥当と思われます」

「うむ、流石はクラウス、よく気がつくな」

親ばかの会話をしているのは黄組のキバとクラウスである。

(クラウス様…絶対母君になんだろうな…)

周りの兵士達がそんなことを思ったことは、ここだけの話である。

 

「まあ、何事も適度にすれば良い」

ほのぼのとした空気を醸し出し、兵士達に安心感を与えるのは紫組のリーダーのハーンである。

「そうですよね!!ハーン様!!」

兵士達ものほほんとして答える。

紫組はこの組で良かった!!と誰もが思ったそうな…。

 

「はあ、何故私が…」

ぶつぶつと先ほどから文句を言っているのは緑組リーダーのソロン・ジーである。

彼の後ろに疫病神が見えるのは気のせいではないであろう。

(ソロン様に幸あらんことを…)

緑組の兵士達はそっと目元を拭いつつ、そう祈らずにはいられなかった。

 

開会宣言もそこそこ、ジョウイの競技注意もほどほどに開会式は行われた。

「選手宣誓、選手代表、赤組リーダーシード将軍」

ジルのアナウンスにシードがマイクに駆け寄り、腕をぴしっと上げ、元気よく宣誓し始める。

「宣誓!!我々兵士一同は!!日頃の練習の成果を、十二分に発揮し、正せ…」

「極悪非道の限り、手段を選ばず戦うことをここに誓うぞ!!わっはっはっはっはっはっ!!!!!」

シードの言葉を遮り、ルカがとんでもないことを誓う。

その瞬間、皆、この運動会が生き残りを賭けたサバイバルであることを悟った。

宣誓を横取りされた当のシードは驚きのあまり呆然とたたずんでいた。

それぞれの思い、それぞれの野望が渦巻く中、ハイランド体育の日運動会は始まった。

 

「第1競技、4×100mリレー」

赤、青、白、黄、紫、緑の六色色とりどりのハチマキをした兵士達がスタートライン に並ぶ。

皆真剣…いや、何か決意を固めた表情である。

「用意・・・」

パン

審判ジョウイのピストルの合図で皆一斉に飛び出した!!かの様に見えた…。

「うっぎゃあああぁぁぁ〜〜〜〜!!!」

ピストルの合図と共に一人の兵士が炎に包まれた。

「一人目の犠牲者か…」

ぼんやりとその情景を見ながらクルガンが呟いた。

他の選手達はというと見向きもしないで走り去ってゆく。

(許せ!!俺にも家族が!!!)

「ちっ、一人しか当たらなかったか…」

ルカは紋章を宿している剣を鞘にしまいながら舌打ちした。

「ルカ様…」

白組兵士達は当面、自分達には被害がこないであろうことにとりあえず安堵した…。

 

「うっわぁ〜〜、派手にやってますねvvv」

嬉しそうに言うのはハイランドとは敵対する同盟軍現リーダーのカナタである。

よほど暇なのか、ハイランドが運動会を行うと風の噂で聞きつけ、遥々やって来たのだ。

もちろんその横には…。

「カナタ・・・」

少女と見紛うばかりの繊細な顔の作りをした少年が立っていた。

どこか諦めたような表情をして隣のカナタを見ている。

「何ですか?カイルさんvvvとっても面白いですねvvv」

子供らしい笑顔を向けるカナタに一瞬騙されそうになるが気を取り直し一応言う。

「言っても無駄だと思うけど、人の不幸を笑っちゃいけないよ」

「はぁ〜〜いvvv」

全くわかっていなさそうに返事だけは元気よくするカナタにカイルはまた一つ溜息を吐いた。

「よく来てくれましたね、カナタ殿」

振り返ると黒い細めのジャージに青いハチマキを軽く首からかけたクルガンが立っていた。

相変わらず無表情といって良いほど表情に変化が見られない。

「あっ、こんにちはクルガンさん♪」

「こんにちは、カイル殿、お元気そうで何よりです」

「こんにちは、クルガンさんも…」

「あれ!?カナタにカイルじゃん♪見に来てたのか」

少し離れた場所にいたシードも駆け寄ってきた。

「はいvカイルさんとデートなんですvvv」

「………」

ニコニコ顔で答えるカナタをじと目で見るカイル。

そんな二人の様子にシードは首を傾げた。

「ふ〜ん、ま、ゆっくりしてけよ!!」

そう言うと自分の場所へと戻っていった。

「……クルガンさんも大変ですねv」

カナタの言葉にクルガンはにやりと笑い、一言告げると立ち去った。

「まあ、そういうことです」

そんな二人のやり取りを見ていて、カイルはシードに同情した。

しかし、止めようとはしなかった。人間誰しも自分の身がかわいいのである。

 

「第2競技、障害物競走」

この競技ではルカの妨害はなかった。魔法による妨害は…。

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

第一関門、丸太渡りから盛大な悲鳴が上がる。

「おお、池に放しておいたワニが役に立ったようだな!!」

楽しそうにルカが言う。

(わかっていたが、お、恐ろしい方だ…)

白組兵士達はただただ見守るしかなかった。

「い、いいいいいいいやだあああああああぁぁぁぁ!!!!」

第2関門、パン食いでは、パンの変わりに巨大スパイダーが垂れ下がっていた。

「わっはっはっはっはっ!!これはなかなか笑えるぞ!!おお、反対に食われている奴もいるぞ!!」

(ルカ様ご満悦…)

食われている兵士達を見て、白組兵士は目元をそっと拭った。

「!!!!!!!!!!」

第三関門、ネット潜りでは人がものを言う暇もないほどの早さでばたばたと倒れていった。

「う〜ん、これは失敗か…あまり面白くないな…」

(………………)

最早何も言う気力ないらしく白組兵士達は無言で佇んでいた。

最終関門、ここには何もなかった。そう、先ほどまでは…。

「ぞ、ゾンビ!!!!!」

ラストの直線、各コースにニ体ずつゾンビが現れた。 腐臭を放ち、ぞろぞろと兵士達に向かってくる。

「おお、これでやっとわが国流らしいな!!わっはっはっはっ!!!」

(そこまでして楽しみたいですか・…)

がっくりと膝をつき、白組兵士達は頭を項垂れた。

 

「中間報告です。ただいま、一位白組、二位赤組、三位青組、四位黄組、五位紫組、 六位緑組です」

ジルが結果を淡々と告げる。

あの後、大玉転がし、綱引き、二人三脚、と行われたが、どれもルカの妨害が入り (しかも敵味方関係なく吹き飛ばした)、得点争いは白組、赤組、青組の混戦となっ ているのである。

 

「皆さん頑張ってますねvvv」

「うん…ところでカナタ…」

「何ですか?カイルさんvvv」

「何で僕ら、チアガールの格好でしてるの…?」

「だって、僕同盟軍のリーダーなんですよ…ばれたら困るじゃないですか♪」

(カイルさん、かわいいです〜vvv)

「……………………」

(だったら見にこなくてよかったんじゃ…)

ポンポンで脚を隠しつつ、カイルがそう思ったのは当然といえば当然であった。

 

「第六競技、借り物競争」

そのアナウンスが流れた瞬間、白組兵士はとてつもなく嫌な予感がした…。

ルカが笑ったのである。しかも不敵に、にやり…と。

競技開始、数秒後、その答えはあった。

「シード様の女装…」

(み、見たい!!!!!)

「微笑むクルガン様…」

(み、見たくねぇ!!!!!)

「涙を流すルカ様…」

(………………無理だぁー――――!!!!)

「息子の悪口を言うキバ様…」

(あ、あの親ばかに!!??)

「ぎっくり腰なハーン様…」

(ご、ご本人になんて言うんだ!!??)

「幸せそうなソロン様…」

(………………無理だ…諦めよう…)

―――赤組

「シード様!!女装してください!!」

勇気ある(欲望に忠実とも言う)兵士の一言にシードは一瞬目を点にした。

「……ふっざけんな!!!!!『大爆発』!!!」

「うっぎゃあああぁぁー――――!!!!!」

―――青組

「クルガン様!!微笑んでください!!」

「………………」

赤組の様子を見ていたクルガンはこの上なく機嫌が悪く、無言で兵士を一瞥すると雷鳴の紋章を発動させた。

「!!!!!!!!」

兵士は声もなくその場に倒れた…。

―――白組

「ルカ様!!泣いてくださ…」

「豚は死ね!!」

言い終える前に白組み一兵士は血だまりに突っ伏した。

―――黄組

「キバ様!!クラウス様の悪口を言ってください!!!」

「何だと!!貴様そこに直れ!!!」

「お待ち下さい、父上、この者にも何か事情があったのでしょう!!」

「クラウス…お前は優しいな…」

「いえ、そんな…父上…」

命ばかりは取り留めたが絶対に無理だ。と兵士は悟った。

―――紫組

「何と言えば…しかし…ああ!!ハーン様にこんなこと言えない!!」

一人、コースの真中で葛藤していた。

―――緑組

「…………………無理だ、諦めよう!!」

緑組兵士の決断は早かった。

結局このレースにおける優勝者はいなかった。

 

「いよいよ最終レースとなりました、7×1100mリレー、なお、この競技のアンカーはチームリーダーで、500m走ることになっております」

「一発逆転もありえるな!!よっしゃぁ〜!!頑張るぞ!!」

シードが額のハチマキを結びなおしながら気合を入れる。

「頑張るのは良いがお前は何時も最後に気を抜くからな…」

「抜かね―よ!!失礼な奴だなぁ!!ぜってー優勝して酒奢らしてやる!!」

「ふはははははは!!!貴様ら!!俺に勝てるとでも思っているのか!!??」

「父上…」

「わかっておる、ルカ様の次にゴールすれば良いのだろう」

「まあ、怪我のないように…」

「はあ……貧乏籤…」

マイペース(?)なリーダー達であった。

そうこう言っているうちに第六走者にまでバトンが回っていた。

「現在赤組トップ、続いて白組、青組、少し離れて黄組、紫組、緑組!!」

「よしっ!!」

「ふん!!」

「…………」

「うむ!!」

「適度に…」

「!!!???」

それぞれアンカーにバトンが渡る。

シードとルカが並び、そのすぐ後ろをクルガンが走っている。

キバ、ハーンも頑張ってはいるが若い力には勝てないのかどんどん放されていった。

ソロンは…

「ああ!!ソロン様!!」

誰がやったとは言わないがアンカースタート地点で焦げていた。

「なかなかやるではないか、シード!!」

「ルカ様こそ!!」

「…………」

先頭の二人が睨み合いながら走る。

「あっ!来ました来ましたvvvえいっ♪」

ポイッ

「えっ???」

無造作にカナタがゴール前にバナナの皮を投げた。

カイルはそれを呆然と見ていた。

そして、次の瞬間…。

「うっぎゃああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

シードとルカはバナナの皮を踏み、盛大に転倒していた。

「あははvvv上手くいきました♪さあ、カイルさん帰りましょうvvv」

「………………」

呆然としているカイルをずるずると引きずり、カナタは帰路についた。

「忠告したであろう、何時如何なる時も気を抜くな、と」

そう言ってクルガンは二人の脇をすり抜け、悠々とゴールした。

 

結局最後のリレーで勝ったした青組の優勝で運動会の幕は降りた。

「ちっきしょー――――!!!」

悔しそうなシードをクルガンが腕を掴み、連れて行く。

「さて、何を聞いてもらおうか」

「きしょー――――――――!!!!!!」

どこか嬉しそうなクルガンの声、シードはもう一度叫んだ。

 

                                                END

あとがき

終わったぁー――――――――!!!(涙)一回消してしまったので書き直しました !!

ええ、根性で!!(T−T)

『運動会クルシー』ということでしたが、これで良かったのでしょうか???やなせまい様…。

すみません、散々お待たせしてしまいまして…。(汗)