花も嵐も

 

「何だよそれ!!」

シードの怒声がクルガンの執務室に響く。

「仕方なかろう、急な仕事が入ったのだ」

書類から一旦顔を上げ、宥めるようにクルガンが言った。

「でも・・・前から約束してたじゃねーか!!」

「シード!お前も将である自分の立場を弁えろ!!」

それでもなお食い下がるシードに珍しくクルガンの叱咤の声が飛ぶ。

ここの所、休みなど何時取ったかわからないほどの仕事続きで、表には出さずともクルガンは苛々していたのだ。

いつもなら烈火の如く怒って文句を言ってくるシードだが、この日は違った。

開きかけた口を一旦閉じると唇を強く噛み締め、俯き加減に恨みの篭った目でクルガンを睨んだ。

「・・・どうでもいいんだ、俺なんか・・・」

ポツリと言葉を溢し、もう一度クルガンを睨みつけると、シードは踵を返し部屋から出て行こうとした。

しかし、クルガンが素早く席を立ち、シードの腕を掴み引き止めた。

「何をそんなに拗ねることがある」

クルガンの言葉にシ−ドは憮然と口を開く。

「お前、今までに一回でも俺に・・・その・・・・・・き・・・とか・・・」

「?何だ?もう少し大きい声で・・・」

「今までに、一回でも俺に好きとか愛してるとかって言ったことあるか!!??」

耳まで朱色に染め、捲くし立てる様にシードが言った。

「・・・無い、それがどうした?」

呆れたように、そして興味無さ気に言うクルガンにシードは苛立ちを覚えた。

「・・・言ったら・・・き、機嫌、直してやる!!」

「・・・小娘でもあるまいし・・・」

何を馬鹿なことを・・・と言い放ち、シードに背を向けた。

「・・・んだよ、それ・・・言いたくないってことかよ・・・」

声を震わせるシードにクルガンは執務机の上に散らばった書類を纏めながら言う。

「そうは言っていないであろう・・・言葉が欲しいのか?」

「言ってんじゃねえか!!それに欲しいのは言葉なんかじゃねぇ・・・・・・それとも、お前にとって俺は遊び・・・なのか?」

自分で言った言葉に傷ついたような顔をするシード。

クルガンは小さく嘆息すると、再びシードに歩み寄った。

「何かあったのか?おかしいぞ?」

「・・・・・・本当に仕事か?」

シードの台詞にクルガンは怪訝そうな顔をする。

「・・・何が言いたい」

「自分の胸にでも聞いてみろ!!」

シードは奥歯をかみ締めると、クルガンの鳩尾にキツイ一発を入れ、走り去った。

 

何をあんなに怒ることがあるのか・・・。シードに殴られた部分をさすりながら、クルガンは不思議に思い、首を傾げた。

 

自分に殴られる謂れは無い。

覚えも無い。

ならば何故?

 

しかし、すぐにいつものことだと思い直し、クルガンは敢えてシードを追わなかった。

 

おかしいと感じたのは昼頃であった。

仕事も一段落ついたので、構ってやらねば、とクルガンはシードを探した。

私室、屋上、中庭、訓練場、食堂と順々に探していったが、シードの姿は見受けられなかった。

昨日の今日で怒って避けられている、ということも考えられた。

しかし、全くシードの姿が見えないことにクルガンは違和感を感じた。

 

「シード様でしたら今朝早くに出かけられましたよ」

「出かけた?」

シードの補佐官であるジェイドの言葉にクルガンは聞き間違いかと思った。

「ええ、休暇を取られて・・・って、クルガン様、ご存知無かったのですか?」

「・・・・・・そうか、行き先はわかるか?」

「えっ、いえ・・・そこまでは・・・」

困った顔をして言うジェイドにクルガンは小さく嘆息すると、礼を告げその場を立ち去った。

 

(何処へ行ったのか)

今日何度目かわからぬ溜息をつきながらシードが行きそうな場所を思い巡らす。

(この皇都から出た確立が高い。となれば・・・)

思い立った瞬間クルガンは馬を駆って、城を出ていた。

 

「シードさんですか?僕は見ていませんよ?」

まだ幼い同盟軍リーダーカナタが小首を傾げながら言う。

クルガンが思い立った場所、それは同盟軍本拠地であった。

馬を駆って、クルガンは同盟の地まで来ていた。

「カイル殿の所はどうでしょうか?」

クルガンの言葉にカナタの顔に青筋が浮かび上がる。

「カイルさんのところ・・・ですか?」

今日、カナタはシュウに捕まり、カイルに宥められ、珍しく朝から真面目に軍務をこなしていた。

「・・・可能性的に高いと思われるのですが、カイル殿は今、何処に?」

「・・・そうですね、カイルさんの所へ行きましょう!!」

仕事から逃れ、カイルのに会う口実ができたので、カナタはクルガンに即賛成して部屋を飛び出した。

もちろん、シュウを張り飛ばして・・・。

 

「シードさんですか?」

カナタの仕事が終わるまで、とカイルは同盟軍の一角にある部屋で寛いでいた。

カナタからの抱き付き攻撃に苦しそうにもがきながらも答える。

「シードさんなら午前中にきて、もしクルガンさんが来たならこう言っといてくれって・・・」

「なんと言っていましたか?」

クルガンの問いにカイルは言い渋っていたが、意を決したように一気に言った。

「・・・『クルガンのバーカ!探せるもんなら探してみろ!!もう知らねぇ!!!』 だそうです・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「う〜わ〜、火に油を注いでますねv」

何故か嬉しそうにカナタが言う。

クルガンは押し黙ったまま、額に青筋を浮かべていた。

「あ、あの・・・ご、ごめんなさい・・・」

クルガンの様子を見て何故かカイルが謝る。

「なんでカイルさんが謝るんですか?でもそんなカイルさんも好きですぅ〜vvv」

「わあぁ〜〜〜!!!」

カナタは感激のあまり、カイルを押し倒す。

カイルの悲鳴で、クルガンは怒りより我に返り、一礼し、お礼を告げると退室した。

 

(さて、どうしたものか・・・)

クルガンは再び馬を走らせ、シードを見つけるとどのような仕置きを据えてやろうかと恐ろしいことを考えていた。

 

そのころのハイランド・・・

「はっ、シード様とクルガン様、何時帰ってくるのか聞き忘れた!!」

「大丈夫ですよ。シード様はとにかく、クルガン様が追いかけているならば」

「それもそうですね。あっ、アスティアさん、もう一杯お茶いかがですか?」

「すみません」

二人の部下が、呑気にお茶を啜りながら知・猛将の噂をしていた。

 

                                              続く

 

あれ、終わらなかった・・・。(^^;)ごめんなさい!!続き書きます!!(汗)

なんだか喧嘩と言うよりも追いかけっこになっています・・・。(涙)

するつもりは無かった(と思う)けど前後編になっちゃいましたvvv(死) クルガン氏、早くシード君を捕まえてぇ〜〜〜!!!(爆)