「劇をやろうと思うんです」

唐突にカナタはそんな事を言い出した。

「せっかく舞台があるんですから、ちゃんと使わないともったいないですし…」

そこで言葉を止め、カナタはカイルを上目づかいに見る

「いいと思うよ、面白そうだし」

にっこり微笑むカイル、花がこぼれるような笑顔だ

「そうですか!じゃ協力してくれるんですねっ!?」

「え?」

 

 

「みんな集まってくれてありがと〜v今から僕主催の劇を始めま〜す!!」

カナタは大張りきりで、舞台中心部で叫ぶ。

以外と人気がある所がこの少年の謎な所であろう。

「なんでこんなことに…」

呆然と舞台裏で呟くカイル

「そのとうりだよ、まったく何で僕がこんな事を…」

「ルックも呼ばれたの?」

「まあね」

その問いにルックは不機嫌そうに答える

「俺も呼ばれたぜ?」

「ビクトールも?」

「一体どんな劇だって言うんだろうね、」

気の無さそうな様子だ

「ねえ、ルック」

「なに」

「気になってたんだけど、そこに転がってる箱ってなんだと思う?」

カイルは、人がゆうに三人は入りそうな箱を指差す

「…劇の道具じゃないの?」

それ以上は考えたくない、といったように見える

「当たらずとも遠からずだね、」

「リーダー、これ何が入ってんだ?」

「あー…もうそろそろ開けなきゃダメかな〜?」

「…カナタ何入れたの」

カイルはとりあえず身構え、棍を箱に向ける

「え〜っと、とりあえずヒントは〜v人ですv」

「わーーー!!空気穴がない〜!!」

カイルは慌ててきつく梱包された箱を破壊する 。

「し、死ぬかと思った…」

「まったく、…カナタ殿運ぶにしてももう少し違った方法があったはずですよ、」

箱から出てきたのは、クルガンとシードだった。

「すいませ〜んv」

適当にカナタは謝る、悪いとは考えていないようだ。

「ホントは、ジョウイも誘いたかったんですけどシュウが『せめて、クルガン殿とシ ード殿だけにしなさいっ!!』って言って、」

「……」

最近シュウさんも壊れてきたな…と思うカイルであった。

「さあ、劇を始めますよっ!!」

「脚本はオレが書いたからな、」

にやにや笑って、シーナは脚本を見せる。

嫌な予感がしたのはきっとカイル一人ではないだろう…。

 

 

第一幕

『ある所に、シンデレラというかわいらしい‥おい、これホントに読むのかよ?…わ かったよ、読めばいいんだろが…こほん、かわいらしい少女?がいました。しかし、 実母が死んでからというもの継母とその連れ子にいじめられる毎日だったとさ、』

「シンデレラ、これも洗っといてよ」

ばさりと、洗濯物を投げ付ける。

ルックは無理矢理、女装までさせられたのでかなり機嫌が悪かった。

そしてそのストレスは全部ここで発散させるつもりだったりする。

「へい、へ〜い。」

「このお姉様の分も忘れんなよ。」

「お姉様!?…お熊様じゃなくてっ?」

思わず吐きだしそうになるくらいに、ビクトールの女装は似合ってなかった。

「…その言葉覚えておくわよっ」

裏声を出しつつビクトールは立ち去ってゆく。

会場はうけるにはうけたが、なんとも言えない。

『そんなこんなでシンデレラの日常は過ぎていきました。そしてもう一人の姫、白雪姫はという姫は、毒リンゴで死んでいた所を死体愛好家の王子に拾われ、そんな生活がいやになり狩人に頼んで脱走をしたとさ、』

「な、なんでオレがこんな役をっ!!」

「相変わらず運が悪いよね…」

「カイルッ…じゃない白雪姫っ!お前も走れッ!!」

カイルはフリックに引っ張られる形で、走っている。

「だってスカート、足下スースーするし…」

カイルもドレスを着ているが、誰も言わなければ少年とは気づかないような中性的な仕上がりを見せている。

「いいからっ!!っっきたぞっ!!」

「うわ〜んこんな台本納得いかないですーーー!!!カイルさんが駆け落ちするなんてーーーー!!」

王子に扮したカナタが、いやがるジークフリードにまたがり追い掛けてくる。

その表情には鬼気迫る様子があった。

「台本にそんな台詞あったっけ?」

真面目に台本をチェックし始めるカイル。(本気のようだ。)

「おまえな〜」

「…フリック、早く逃げよう…。」

台本で何か見つけ、カイルは真っ青になった。

「何が書いてたんだ?」

「…捕まったらその場で押し倒されるって…、ちなみにフリックは拷問。」

「逃げるぞーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

『こうして、狩人と白雪姫は逃げてゆきました。…後が怖いよなあ。』

 

 

 

第二幕

「だ、大丈夫か?」

「なんとか…」

カイルは、ほとんど本気で倒れていた。

『狩人を犠牲にして、無事王子の魔の手から逃れた白雪姫は、シンデレラの家の前で倒れていましたとさ』

「え〜っと俺の家に泊まるか?…だっけ?」

「はい、よろこんで、」

『そんなこんなで白雪姫はシンデレラの家にかくまわれる事になったそうな、一方その頃の王子はと言うとだな、』

「僕から、カイルさんを奪うなんていい度胸です〜(怒)」

「カナタっ、これは芝居だ!!」

フリックの絶叫が轟き、そして消える…。

「いつまでもこうしていられません!!クルガンさん…じゃない、クルガン王子に協力してもらおう!!」

カナタはガッツポーズをとる。

『こうして2人は結託したと言う事だ。』

 

 

『○月×日城にてパーティーを開く、男女共に全国民こられたし。なお来ない者は罰があると思え』

あくる日、こんなはり紙が城下に張られていた。

「…カナタだ。」

「ーでどーすんだ?」

カイルは少し躊躇った後、ぐっと顔をあげた

「行くよ、…男装(?)して、それならばれないと思うし」

「…(ばれると思うけどな〜)」

そういってカイルはいつもの『けんぽう着』に着替える

『よかった〜普通の服に戻って〜』

『くっそ〜俺も早くこの服脱ぎて〜』

照明が消え、幕が一旦おろされる。

「え〜っと、次の台詞、」

「第三幕だな、」

「「………」」

カイルとシードはそれを見て、いっぺんに真っ青になる

「な、」

「なんだこりゃーーー!!!」

『ここからはアドリブ、うまくやらないと公衆の面前で押し倒されるぞ。…書く時間 なかったんだ、すまんv』

「スマンですむかーーーーー!!」

「ど、どうなるんだろ…」

 

「クルガンさん、」

「ん?」

「楽しみですね」

「…そうですな、」

王子の姿の2人は、その姿に似つかわしくない微笑みをかわしあった。

 

 

第三幕

♪〜♪〜♪

舞踏会らしい音楽が流される。

そして舞台には、ドレスアップしたシードがあらわれる。

『くっそ〜っなんで俺が、こんな目にっっ!!』

ふだんの口の悪さと、がらの悪さが見事に押さえられどこから見ても貴婦人のように 映る。

「シードさん、」

「なんだあ〜?カイル」

カイルが小声で話しかけてき、シードは少し腰を落とし視線をあわせる。

「僕、もう逃げます…時計の針が十二時になるまでがんばってくださいね?」

「おうっ、」

「カイルさん…白雪姫みっけ〜♪」

「ひゃっ」

カイルは短い悲鳴をあげて、舞台端へと走る。

「カイルッ、」

「人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」

「ク、クルガン…」

 

「カイルさ〜んvv」

カナタは力一杯、ぶつかってゆく これにはさすがにカイルも押し倒される

「カ、カナタ、ここ人前」

「劇ですよ、劇vvv」

「こ、ここじゃ、やだっ…」

いつものけんぽう着姿とはいえ、十分に色気が漂ってくる声と表情だった。

会場は異様な雰囲気に包まれてくる。

その事にカナタは気づきムッとした表情になる 。

「じゃあ、白雪姫、僕にキッスをどうぞv」

「え…」

有無を言わせぬ迫力に、カイルは一瞬迷ったがついには観念し口付ける。

ちゅっv

カナタの頬に

「え〜っほっぺですか〜?(うれしいですけど、)」

『はいはい、こうして2人はハッピーエンドになったとさ、さてシンデレラの方はどうなったのやら〜』

 

「……」

「……」

クルガンとシードは踊っていた。

『くっそーーっ台本係!後で覚えてやがれ〜!!』

『……』

それなりに、いい雰囲気とも言えなくはないのだが、

「そのドレスよく似合っているぞ、」

「ひっ!てめえっ」

クルガンはさり気なくシードの弱点である脇腹を摩る。

「どうした?」

「くっ!」

人にはわからないように自然にやる所が、この男の怖い所であろう。

「いいかげんにしやがれっ!!」

どげしっ!! 形のよいすらりとした足を惜しみなく見せつつ、シードは蹴りをかまして逃亡する。

「シードッ!」

後ろから珍しく慌てたクルガンの声が響く。

「へへーん、捕まえれるもんならッ…」

ツルッ

「へ?…ぎゃああああああ!!!」

間抜けな声をあげつつシードは、階段のセットから転がり落ちる。

もちろん靴を片方 残して、

「やると思っていたのだが…」

「あはは、言ってもムダだったと思いますよ?」

「カナタ…」

カイルを抱き締めたままで、満足そうなカナタが身もふたもない事を言う。

「こ、こしが痛いーーーッ」

シードは自分のした事ながら情けなくなってきた。

「大丈夫?」

「カイルさん、大丈夫ですよ腰なら!どうせ今日はクルガンさんに足腰たてなくなるくらいされちゃいますから!」

「てめぇ…」

「なんですか?」

にっこりと子供スマイル。

これでたいていの人は黙り込んでしまう。もしかしたら自分の聞き間違いではないかと思って、

「カナタ…」

しかし、中身と外面が必ずしも一致しないと言う事はカイルは身を持ってわかっている。

「あ、クルガンさん」

「ぎゃーー逃げろーーー」

バタバタと走っていくシード。

「……」

「大変ですね、」

「貴殿の所はいいですね、」

「そうでしょう♪」

「……」

好きで捕まっている訳ではないのだが、特に逃げたいとは(今は)思っていないので ジッとしておく事にしたカイルだった。

 

 

第四幕

「このガラスの靴に、ピッタリとはまる女性はいないか、」

いよいよラストのシーンである。

「それなら、うちのシンデレラだよ」

「ほいよっ、」

「ぎゃ〜っっ!!!てめぇらホントーに最後の最後まで意地悪姉さんだな!?」

シードはテイッと、クルガンの腕の中に投げ出される

「どうした?履かないのか、」

「h〜っ」

シードはしぶしぶと言った感じで、靴に足を入れる。もちろんその靴はぴったりだった、

「お前こそ私の探していた姫だ、」

「ちょ、クルガンッ!?」

抗う間もなくシードは口付けられる。深く。

「んんっ」

三十秒間が過ぎる

「お〜、勉強になりますね、」

「…なんの?」

「そういえば、継母役の人どうしたんでしょう?」

「結局、誰だったの?」

その秘密は、後日明かされる事になったのだが今はともかくハッピーエンドv

 

 

最終幕

後日

「シード様おめでとうございます。」

「クルガン様、いつの間にそんな事を…」

「「……」」

何か城内の雰囲気が妙だった。

「なんか今日は、みんな変じゃねえか?」

さっきので、今日ニ十人目の対面者だいくらシードでも異変に気づく。

「…原因はあれらしいぞ、」

クルガンが指差した場所には、一枚の紙が張られていた。

「なっ!?」

「よく撮れているな、」

それはラストに、むりやり婚姻衣装を着せられているシードの写真だった。

ちなみに見出しは、

『ついに婚礼か!?城内熱烈カップルの2人の愛の行方はいかに !?』

というものだった。

「誰がこんな写真…!?」

撮影投稿者ジル=ブライトとなっていた。

「なにぃーーーーーーーーーーーー!?」

 

 

「ジョウイ君…わるいけど、今日泊めてくれる?カナタといたら身体が…」

「そ、それはっ!!!(誘っているのかッ!?)」

様々な波紋を残しつつ、『オレンジドラゴン軍第一回劇大会』は終わった。

 

第一回は…

 

 

                                       エンド