花も嵐も 2

「シードの奴、一体何処へ・・・」

同盟軍の本拠地を出て、クルガンは当てもなく馬をハイランドへと走らせていた。

流石のシードもトラン共和国までは行っていないであろうということを見越しての判断であった。

クルガンは一旦馬を止め、本日何度目か、シードの行きそうな場所を思い巡らす。

そして、導き出された答えにクルガンは苦笑を零さずにはいられなかった。

(私としたことが、一番大事なことを見落としていた・・・)

もともと何が喧嘩の理由だったのか、それを考えればこんな初歩的なミスを犯すことは無かったであろう。

(あそこ、か・・・)

クルガンは不敵に笑うと馬をある場所へと向かわせた。

 

ハイランドの極めて南西にある湖の側の小高い丘。

その上に一本の大木が立っていた。

クルガンはその木の下で人が寝ているのを確認すると馬を放し、丘へと上っていった。

特に気配を殺したわけでもないが、木下の人物は目を覚ます気配は無かった。

木下の人物、それこそがクルガンの捜し求めていた人物シードであった。

シードはここからの景色をいたく気に入っていた。

休暇を利用し、たまにはここでゆっくりと過ごすのも良い。と言っていたのであった。

 

「思い出すな・・・」

口元に笑みを浮かべながらクルガンはそっと木に触れた。

あの時、この場所でシードと初めて出会ったのは、もう、十年も前のこと・・・。

目を閉じるとあの頃のことが昨日のことのように思い出される。

十年前の今日、シードと出会った時のこと、それはクルガンの、胸の中で色あせることなく鮮やかに残っている。

そっと目を開け、足元に視線を移す。

深紅の髪を緑色の芝の上に散らし、安らかな顔をして眠るシードを見て、クルガンの顔に自然と笑みが零れる。

「気持ちよさそうに寝ているな・・・」

クルガンはシードの横に腰を下ろすとその髪に愛しげに触れ、シードが目を覚ますのを待つことにした。

 

呑気にぐうぐう寝ているシードを見てクルガンは複雑な気分になった。

最早、あれから一刻が過ぎていた。

流石のクルガンも、夕日が半分以上沈んだ今、このままここでこうしているわけにもいかず、クルガンはシードを起こすことにした。

「シード、そろそろ起きろ」

軽く声をかけてみる。

しかし、シードが目を覚ます気配は一向に無い。

今日、何回・・・何十回目かの溜息を吐く。

気を取り直し、もう一度、今度は軽く揺さぶってやった。

「おい、シード」

「ん〜」

クルガンの呼びかけに少し身じろいだものの、向きを変えるとシードは再び夢の住民となった。

どうしたものかと思ったクルガンだったが、何かを思いついたらしく、小さく口元を歪ませた。

 

「んん〜〜〜???」

シードは朦朧とした意識の中で息苦しさを感じていた。

鼻で息をしようとしても、口で息をしようとしても求める酸素は一向に入ってこなかった。

(んぐぐっ!!??く、くるしい・・・)

あまりの苦しさに一気に覚醒する。

自分の置かれている状況を見て、シードは驚愕した。

(ク、クルガン!!??)

シードはクルガンによって、呼吸器官を塞がれていた。

鼻はクルガンの長い指によって、口はクルガンのそれによって・・・。

「んんんっ!!」

息苦しさにシードは必死に抵抗をし、クルガンを引き剥がしにかかった。

しかし、シードが必死になればなるほどクルガンはシードを放さなかった。

それどころか、シードの口腔に舌を差し入れ、シードの舌を絡め取った。

(ぐ、ぐるじぃ・・・)

酸欠に陥る一歩手前と思えるほど苦しくなった時、シードはクルガンにようやく開放された。

「げほっ、げほっ・・・てめ・・・何考えてやがる!!」

激しい咳き込みの合間に悪態をつく。

「いや、起きそうになかったのでな」

いけしゃあしゃあと言ってのける。

「普通に起こせっていつも言ってんだろーがっ!!」

クルガンの胸元を引っつかみ、揺さぶりながらシードが文句を言う。

「こんなところで寝ている方が悪い」

シードの手を払いながらクルガンが言う。 シードはそんな悪びれた様子もないクルガンの態度に一気に頭に血が上る。

「てめーが来んのがおせーからだろっ!!」

すっくと立ち上がって、不満をぶつける。

そんなシードにクルガンは眉を顰める。

「私が悪いのか?」

「そーだよっ!!お前が悪い!!お前が・・・!!」

沈痛な面持ちでシードが叫ぶ。

いや、それは叫びというよりも、クルガンには悲鳴のように思えた。

「何を溜め込むことがある?」

「なっ!!!」

「何を我慢することがある?言ってみろ、私が何をした?」

クルガンの突然の言葉にシードは全てを見透かされたような気がした。

このまま答えてしまうのは何故か悔しいような気がして、シードは黙り込んだ。

「仕事がどうとか言っていたな?」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・シード」

クルガンの声音に怒りが少し滲む。

本気で怒らせたくはない。

そう思い、シードは重い口を開いた。

「この間、町でお前を見かけた・・・」

「町?」

何の事かわかっているがわざと惚ける。

「行っただろ?!三日前!!」

今にもクルガンに掴みかからんとする勢いでシードが声を荒立てる。

「確かに」

別段悪びれた様子もなく、クルガンは肯定の返事を返した。

それがシードの癇に障ったらしく、深紅の瞳に怒りが滲む。

シードの言わんとすることはもうすでにわかっていたが、わざと間を置き、言葉を続 けた。

「叔母の見舞いに従妹と連れ添って花屋へ行ったが?」

「へっ?!み、見舞い???」

「やはりな・・・」

驚くシードを見て、自分の予想が当たっていたことにクルガンは小さく溜息を吐い た。

「大方城内で私の恋人だと言っている者がいたのであろう?」

「うっ・・・!!」

「まあ、現場も見ていたものだから簡単に信じてしまった。と?」

「ううっ・・・!!」

「だからこそ、私が今日ここに来るか賭けたのであろう?」

「うううっ・・・!!・・・・・・・・・そうだよ」

図星を突かれ、赤らめた顔を見られたくないといわんばかりに俯いて言うシードを、クルガンは愛しいと思った。

包み込むようにして優しく抱きしめ、髪に唇を寄せる。

「く、クルガン?」

クルガンの突然の行動にシードは動揺を隠せず、身を硬くする。

「くくく、・・・お前は十年前からちっとも変わらんな」

苦笑しつつ、クルガンがシードを抱きしめる腕に力を込める。

「なっ!?しつれーなやつ!!」

むくれるシードの髪を優しく梳いてやると、シードは心地よさそうに目を閉じた。

 

「さて、私の疑いも晴れたことだ。今度はお前の番だな」

「へっ???」

全くわけがわからないと言った感じで見上げてくるシードにクルガンは優しげに笑うと言った。

「今日1日私を振り回しておいて、ただで済むと思っていたのか?」

「・・・っ!!!!!」

瞬間、逃げようとしたシードをさらに強く抱きしめ、両手を自分のスカーフで拘束すると、その場に押し倒した。

そして今度はにやりと悪魔のような笑みを浮かべると、シードの上着の前を肌蹴させ、ズボンを下着ごと一気に引き下ろした。

「やっ!!ちょっ!!」

性急なクルガンの行動にシードは頬を赤らめ、抵抗しようと試みたが、それはすぐに無駄 な足掻きに終わった。

 

「ああぁ・・・ん・・・」

すっかり日の落ちた丘に艶やかな嬌声が響く。

両手を拘束されたまま、シードはクルガンの愛撫を受け、どうしようもないほどその熱を高ぶらせていた。

「もう、ここはこんなになってしまったぞ?」

シードを扱く手を止めないまま、もう片手で胸の果実を弄りながらクルガンは低く、 咽喉元で笑う。

「やっ、ちょっ・・・ふぁ・・・」

屋外で行為に及ぶということは、少なからずともシードを興奮させた。

声を押し殺そうとしても、両手を拘束されたままであったので、口を押さえることは 叶わなかった。

それどころか、いつも以上に感じてしまい、シードの口は開きっぱなしであった。

「ぁあ・・・ふっ、ぅんん・・・・・・」

クルガンの手によってどんどん高みに上らされてゆく。

しかし、達する寸前になってくクルガンはシード自身の根元をきつく握り絞めた。

「っつぅ・・・!!」

苦しさのあまり、シードの目から溜まっていた涙が一筋、零れ落ちる。

月だけが映し出す、その幻想的な光景。

クルガンはそのシードの涙を綺麗だと感じた。

まるで、この世の中で最も尊いものを見ている、そんな概念に囚われた。

(場所の所為か・・・)

自嘲気味に笑うと軽く翳めるようにシードに口付けた。

シードはそんなクルガンの突拍子も無い彼らしからぬ行動に驚きを隠せないようであった。

しかし、先ほどよりもきつく握り込まれ、苦しさが増す。

「・・・・・シード」

行動とは裏腹に低く甘い声で名を呼ぶこの男の背にシードは拘束されたままの腕を廻した。

それとほぼ同じに凶悪な熱を伴ったクルガン自身がシードの中へと侵入してきた。

「くぅあああぁぁぁ・・・・・・・」

シードの顔が苦痛で歪む。 全くならされていないままの侵入にシードの蕾は傷つき、血が潤滑油代わりとなる。

「シード・・・・・・・・ている」

クルガンが何かを囁くが、それはシードの耳に届かなかった。

クルガンによって与えられる苦痛の入り混じった快楽に溺れそうになるのを必死にク ルガンの背に爪を立て、やり過ごそうとしていた。

「んっ、・・くぅ・・・・あ、んっ・・・・・・」

シードの上げる艶やかな喘ぎ声にクルガンは自分の理性が持っていかれるのをわずかに残った冷静な部分で感じていた。

そして、クルガンは程無くして、シードの中にその熱い迸る欲望をを注ぎ込んだ。

 

「シード・・・・・」

クルガンは自身の横でぐったりと眠る青年の髪を優しい手つきで梳きながらその名を呼ぶ。

「シード・・・・・」

もう一度呼んでみるが全く反応が無い。

深い眠りについているようである。

クルガンは苦笑すると、シードの頬に手を添え、触れるだけのKISSを送るとその耳元で囁いた。

「シード・・・、愛しているぞ・・・・・」

 

それは、月だけが静かに聞いていた・・・。

 

                                             END

 

あとがき

744キリリク『喧嘩するクルシー』完成です。

しかし、喧嘩するはずがただの甘々になってしまった・・・。(滝汗)

晶様、これで良かったのでしょうか?(どきどき) 長いことお待たせして、すみませんでした!!

(長いこと待たした割にできたのがこれかいっ!!)

ああっ、パソコン投げないでくださいっ!!(投げる価値も無いって?)(T。T)