覗き
「んっああああああっっ…」
白い肢体がシーツの上を波打ち、堅く握られた手の平から力が抜け落ちる。
何度か痙攣した後にカイルは虚ろになった瞳を閉じ、気を失う。
「カイルさん?」
「………」
カイルの気を失わせた少年こと、カナタはかわいらしく小首をかしげながら呼び掛ける。
「寝ちゃったんですか?」
ぺしぺしとカイルの頬を軽く叩く。
それでもカイルの意識が戻らないと判断したカナタは、上体を起こすと手早くカイルの内部に放ったものやシーツの後始末をする。
ついでにうさぎ柄のパジャマをカイルに着せ、毛布をかける。
「ふうvなんか、僕甲斐甲斐しいですよね〜♪」
しかし、その原因もお前だ。
「よしっと、じゃあ支度、支度…」
カナタはいつものコスチュームを着直すと、手に鉛筆とノート、そして双眼鏡の様なものを持った。
「準備万端♪しゅっぱ〜つvvvっと…忘れ物、」
窓の方(脱出ルート)に行きかけていたカナタだったが、慌ててまたベッドの方に戻って行く。
「じゃ、行ってきま〜す。」
ちゅっとカイルの頬に口付けると、踵を返して出かけてゆく。
「ふっ、本当はカイルさんの側で朝まで寝てたいんですけど、これも修行です!!」
出てくる敵をなぎ倒しつつ、カナタはハイランド、ある塔の頂上にいた。
適当な場所に腰を降ろすとノートと鉛筆、それに双眼鏡を構える。
そこから見えるものは…
「え〜っと、『クルガン何しやがるーー!!』…いつもの決まり文句ですよね〜。」
カナタは読唇術を駆使し、クルガンの部屋の内部を詳しくメモっていた。
「きゃ〜vvv押し倒しましたわ〜〜〜v今日は何の道具を使うのかしら♪♪♪」
「?」
いつの間に現われていたのか、カナタに気配を感じさせずに軽くウエーブのかかった長い髪の女性が側にいた。
どこかで見覚えがある。
「あ!ジョウイの奥さん!!」
「…あら?そういうあなたは主人の親友の方ですわね?」
ポンと手を打ってカナタが思い出す、ジルの方もカナタにようやく気づく。
「こんばんわ〜」
ぺこっと、挨拶をする。
ジルも綺麗に一礼し、挨拶を返す。
手にはビデオを持ちながら…。
「ビデオですか?」
カナタが小首を傾げて問う。最近覚えた技だ。
「ええ、そうですの。でも、この距離では声までは入らないので…」
困ってしまいますわ、
と上品にジルが頬に手を当てる。
「それじゃあ、盗聴器とか使ったらどうですか?」
「それはもうやりましたわ。でもクルガンに全部見つけられて返却されましたわ」
などと、呑気に会話を交わす二人が何をしているかと言うと、お気付きの通り『覗き』である。
カナタはカイルとのソレのレベルアップのために、ジルは趣味のためにクルガンとシードの愛の営み(笑)をウオッチング&記録をしているのだった。
「それじゃあ、シードさんの身体の中に仕込めばどうですか?結構簡単だと思いますけど、」
「まあ♪いいアイディアですわvお手伝いして下さいます?お礼に档Aイテムを差し上げますわvvv」
「よろこんでvvv」
ちょっとまてい。
「それと、そのノート…きゃあvクルガンとシードの愛の営みノートですわね♪♪♪これコピーして下さるかしら?」
カナタの手元にあるノートを覗き込んだジルは歓声をあげる。
「いいですよvあっ!!もうクルガンさん始めてますよ!!」
何を?
「まあ、ちゃんと記録しなければいけませんわ!」
双眼鏡の中のシードはもう意識が吹っ飛んでいるのか、壮絶に色っぽい顔でクルガンに甘えている、
そんなシードの頭を優しく撫でていたクルガンだったが、不意に窓の外、つまりカナタ達の方を向いた。
「あ、クルガンさん♪こんばんわ〜v」
「まあ、クルガン御機嫌いかが?」
にっこり笑って二人はクルガンに向い手を振る。
いつものことなので、クルガンは嘆息し、『どうしたんだ?』と不安げに見上げるシードに口付けを落とす。
いいかげん慣れてしまっているようだ。
「ラブラブですよね〜、いつか僕もあんな風にカイルさんをメロメロにしてみせますッ!!」
「まあvまた撮りに行っていいかしらvvv」
キランと目を光らせたジルが嬉しそうに言うが、
「ダ〜メですvカイルさんの痴態は僕だけが見るんです♪」
カナタはにべもなく断る。
ジルが不満げに口を尖らすが、その唇から言葉が出る前に背後から唐突に声がかけられる。
「…カナタ、ジル、何やってるんだい?」
ジョウイだ。
心労のたまった顔でジョウイは親友と妻に声をかける。
一一一一答えはわかっていたが、
「「覗き(ですわ)」」
ジョウイが心労でぶっ倒れるのはそう遠くないだろう……………。
END