人魚姫?

 

「ぶしつけで失礼とは思いますが、本を貸していただきたいのですがよろしいですかな?」

真面目な顔をしてクルガンはカイルに向かって言った。

「え?」

何となく短かめの旅を独りでしていたカイルは偶然(?)クルガンとバッタリ出くわしたのだ、

「 いえ、少々シードに学をつけさせようと思ったもので、私が持っている本は少し荷が重すぎますので、」

「はい別にいいですけど・・」

「それではお頼み申し上げます」

相変わらず表情の無い人だなぁとは思いつつも、

(それを言えばハンフリーもだし)

自分の持っている本の中に簡単そうな物があったかと考えてみれば・・・

 

「それで何 で僕のところに来る訳?」

辛辣に応じられつつもカイルはにっこり笑ってこたえる。

「ルックなら持ってるかもと思って」

「図書室に行けばいいだろ、・・ちょうどいいからこれを持って行けば?」

ルックは手に持っていた本を押し付けるようにカイルに渡す。

「『人魚姫』?」

「それならどんなバカでも読めるだろ、」

「何でルックが・ ・」

こんな本を?と尋ねようとしたが辞めた、ルックがひっじょうに!ニガニガそうな顔をしたのだった。

「・・レックナート様がね、まちがってその本に呪を掛けたんだよそれで僕におはこが回ってきた訳、」

「・・・」

そんな本を人に貸していいのだろうか?

「ねぇ、ルック・・」

「わかってるよ、ハイランドまで送ればいいんだろ、 」

「ありがと!」

などとやっていたら、この城の城主様がかけつけてきた。

「カイル さ〜ん!黙っていなくなっちゃうなんてひどいですよ〜!!・・・ルックとナニしてるんですか?」

嫉妬丸出しと言った感じだ。

「この本をクルガンさんに、届けにいくんだけど…」

「僕も行きます!!」

カナタは即答する。

かりにも『オレンジドラゴン軍』 リーダーがそんな事をしていいんだろうか?とは考えたが今さらだろう。

「いいよ、 」

「やったーーー!!!」

「甘いね・・・」

呆れたようにルックは呟いた。

 

「---なんか、今日は1人多くねえか?」

そういう問題ではないが、シードは初めてみるルックをジィッと見る。無論ルックは不機嫌そうだ。

「お前に読ませるための本をたのんだのだが…」

「すいません、」

カイルは恐縮するが、

「僕とカイルさんは一心同体なんです!!」

もはやてんでバラバラな事を言い合っている。

「来たくてきた訳じゃないよ」

えらそうなルックの言葉にシードの額に青筋が浮かぶ。

「----っ(怒)で 何の本なんだよ!」

シードはクルガンの手から本をひったくってページを開いたすると・・

「いきなり開くと」

ルックの顔色が変わる

「えっ!?」

どうしたのかと問いた だすひまもなく、ゴゴゴゴゴゴゴゴッと、とてつもない音が響き本の中へと引きずり込まれる。

「むっ、」

「ぎゃぁぁぁぁあっ」

「ふぅ、いったのにね、」

「言うのが遅い……」

「僕はカイルさんと一緒ならどこへでも行きま〜すvv」

あとには静寂だけが残った。

 

かちゃり、

「あれ?トランの英雄さんの声がしたと思ったんだけどなぁ」

ジョウイがそこで見た物は一冊の本だけだった…

 

-第一章-

シードは海の中を漂っていた。

『私は人魚姫』

そんな声が頭の中に響いてくる。

『私、陸の上にでて恋がしたいの』

『すてきな・・』

 

「いーーやーーだーーーー !!!!!」

シードはその声を振払うかのように叫ぶ、

「よかった、気がついてくれて…」

「 記憶もあるみたいだしね、」

ルックはやれやれといった感じで椅子に座る。

「?カイ ル、ここは?」

シードは今の状態を尋ねようと状態を起こそうとし、自分の体がおかしな事に気がついた。

足がない。

かといって何にもないのでもなく、魚のしっぽのような物に変わっていたのだ。

「何だこりゃーーーー!!」

よくみるとカイルも同じ状態のようだ、シードのように上半身裸ではなくいつもの赤い上着の下に着ているTシャツを羽織っているが、その足は間違いなく魚の物だ。

「えっと、」

「バカに説明するのは面倒だけど、説明してあげるよ。」

偉そうな物の言い方にシードはムッとする が、一応は黙って聞く事にした。

「僕達、『人魚姫』の世界に来てそうです…」

「 脱出法は、物語を終わらせるしかない、」

「………『人魚姫』ってあれだろ?助けた王子に フラレテ、泡になって死ぬ魚人間の話!」

「「・・・・・」」

なぜクルガンが本を読まそうとしていたのかハッキリわかった2人だった。

「・・まあ、そうとはかぎらな いけどね、」

「どういうことだ?」

「このお話はレックナート様という方が、いじったお話で終わりがどうなるのか誰も知らないそうです」

カイルはため息をつきながら言う。

「どーゆーことだ?」

「この世界から出れないかもしれない事だよ」

ルックは顔色一 つ変えないで言い放つ。

「なっ!!」

「ルック!」

カイルはたしなめるようにルックの方を見る

「ふぅ、・・まあおおよそのストーリーは同じだと思うけど、ムチャをやれば出られなくなるかもしれない、」

「そう言うイミではカナタの記憶がなくなってて、幸運とも言えるかもしれないね?」

「え?」

「バカざるだけじゃなくて、あの無表情男もだ けどね」

クルガンの事らしい

「なにぃ!?」

「・・・シードさんが起きる前に沖に行って見てきたんですが、2人とも記憶なくしてるみたいで・・」

「王子とその臣下になってたよ」

「うそだろぉ・・・?」

絶望的と言ったようにシードは頭を抱える。

「 まぁ、あの2人の協力は期待できそうにないね、」

「そういえば、お前は何なんだよ ?クルガンは王子(似合わね〜っ)でカナタはその臣下、おれらは・・まぁ人魚で、 」

ルックはとくに変わった所は見当たらなかった、変わった所と言えばこの部屋であろうか、妙な壷やら薬品やらが並んでおり異様な場所である。

海の中らしいが、呼吸もできる、まあ本の中なのだから深い事は考えないが。

「ルックは魔女だそうです」

カイルはおかしそうに笑いながら教える。

「・・・・」

「ぶーーーーっっ!!!似合い過ぎっ!!」

不機嫌そうなルックをヘともしないで笑い転げるシード。

 

「はぁ〜、は ぁ〜、で人魚姫って誰なんだ?」

そう言ったシードに2人の視線が集まる

「へっ?まさか・・・」

「そのまさかだよ。」

「僕は姉の人魚らしいです」

「おれかーーーーーー っっ!!!!」

シードの、いや人魚姫の絶叫は海中中に響き渡った。

 

第二章   

「なんでオレなんだよ!!」

「知らないよ、そんな事」

ルックはニべもなく言い放つがシードは納得しない。

「やだぞ!オレ絶対やだ!!」

「それじゃ一生 そのままで暮らすんだね?」

「うっ・・・」

一生人魚。

「い〜や〜だ〜」

シードは頭を抱えてうずくまる

「ルック!」

「わかってるよ、…まったくなんで僕が…いいから君はとっととあの無表情男を探してきなよ」

ルックはカイルに向かって言う

「わかってるけど…」

「まだ何か聞きたい事があるのかい」

「うん…仮に原作の『人魚姫』通りに話が進んで、シードさんが泡になって消えたとするよね?」

「オレが?」

シードが聞き返す

「…その場合ちゃんと生きて出られるのかな?」

「どっどういうことだっ !?」

「えっと…泡のままで外の世界に戻るかも…」

ルックはしばらく考え込んでい たが、暫くして口を開く

 

「まあ、僕達は無事出れるからいいんじゃないの?」

「いいわけあるかーーー!!」

ガッシャ〜ンと机がひっくり返る。

 

 

「クルガン様もうすぐ陸地です」

臣下姿のカナタがそうクルガンに伝える。

「わかっている…」

 

…なにかおかしい、何か大切な事を忘れている感じがする…。

 

「こいつは やべぇっっ!!」

「どうかしたんですか?」

「嵐がくる!!この分じゃ相当でけえぞ !…助かるかどうかっ」

そう船員は告げて忙しく走り回りはじめる。

…クルガンは自分の考えに夢中で気にも止めていなかった。

 

「…上じゃ嵐が起こってるらしいね」

「どっ、どうすんだよ」

「シード さん、」

カイルは心配げにシードに声をかける

「カイル…」

「死なばもろともでがんばってください、」

「カイル…」

シードはその時、最後の味方に裏切られた気がしたそうだ。

「君…性格変わったね、」   

 

 

「帆をたためっ!舵をとられるなッ! !」

「ふう、全く嫌になるぜッ!」

一人の船員が愚痴をこぼす。

「こんな時に人魚にでもでられたら、最悪だ、」

「人魚?」

カナタはめざとくそれを聞き付ける

「人魚ってなんですか?」

「海に住む魔物のことだ、上半身は人で下半身が魚というな、まあ迷信だ」

カナタの問いにクルガンは答える。

「ああ、そのとうりだ、人魚は人を誘惑する魔物だロクなもんじゃねえ」

そう言うとその船員は忙しそうに仕事に戻る

「人魚ですか…僕がそれを退治します!!」

「……」

クルガンは何も言わず海を覗き込む、 するとそこに人陰のような物が映った。

「カナタ、」

その声にカナタは異常が生じた事を悟る

「敵ですか?」

愛用のトンファーを構える

「わからん、…そこだっ!」

クルガンは波間を示す、

「ていやっ!」

どこにそんな力があるのか、カナタは自分の体の半分ほどもある岩をそこめがけて投げ付ける。

ゴスッと鈍い音と小さな悲鳴が聞こえた。

「カイルッ!」

「え?」

その名前を聞いた瞬間カナタの体は勝手に海のなかへと飛び出して行った

「カナタ、」

驚きの声など感じさせないクルガンの声が最後に聞いた言葉だった。

 

 

第三章   

「カイルッ!」

船の上からとんできた岩に頭をぶつけ、カイルは気を失い沈んでゆく。

「なあ!どうすん…」

シードがルックに助けを求めようと振り向いた所

「…我が真なる風の紋章よ……」

「ギャーーーー!!使うなそんなもんーーー」

ゴゴゴゴゴゴと鋭い風が吹き乱れ、船はおもちゃのように壊れてゆく

「クルガン!!」

沈みゆく船の中に見知った顔が見えた瞬間シードの体は勝手に泳ぎだして行った。    

 

 

じぃ〜っ

「…きれいです」

ホオッとカナタは気を失ったままのカイルを見つめ呟く、カイルはぐったりとひれの部分を水につけカナタはその近くに座っていた。

2人は小さな入り江に流れ着いていた

「やっぱりこういうときは人工呼吸ですよねv」

でもえら呼吸だったらどうしようかな?などとのんきにカナタは呟く、しかし深くは考えずに顔を近付け…

「せ〜のっv」

ふー、ふー、

「…吹くの勿体無いな、吸っちゃダメかな?」

だめだろ。

「…っは、……?」

そんな事とはつゆ知らずカイルは意識を取り戻す、別に水を飲んでいた訳ではないので苦しくなったのだ、

「気が付きましたかっ!?石投げちゃってごめんなさい!僕カナタです!!名前教えてくださ〜いっ vv」

「……」

出会った時とほとんどかわっていないリアクションだ。

「カイルだよ… ホントに忘れちゃってるんだね」

「え?」   

 

 

「おいっ!クルガンしっかりしろっ!!」

シードは必死になってクルガンを揺さぶる、それでもクルガンは息を吹き返さない

「しかたねぇ!!」

シードは覚悟を決めてクルガンに口付ける。人工呼吸だ。

「 ………っ?」

シードは暫くして、妙な事に気がついた。

…舌が入ってきている。

「ぎゃーーっ!気がついてんじゃねーかっ!!」

シードは立場を逆転させられて下に押し倒される。

クルガンはまだ意識がはっきりしていないようだ。

「っこのッ!!ばっき ゃろーーー!!」

ベキィッ

シードは思いっきり殴りつけて海へと逃げ込む。

 

「まったく、クルガンのやろ〜何考えてんだよ…」

ぶつぶつと文句を言いながらシードは海の中を泳いでゆく。

姿形だけならば人魚に見えるかもしれないが、がらが悪すぎる。

「…ところで、オレはどこに行けばいいんだ?」

ふと我に帰るシードだった。

「なにやってんのさ?」

突然目の前にルックが現われる、かなり機嫌が悪そうだ。

「 おっお前こそ!」

「僕は、あのバカ(カイル)と猿を探してるんだよ、いいから君はさっさと無表情男を誘惑してきなよ」

「ゆっ誘惑って…」

シードは真っ赤になる。

「じゃないと、ここからも帰れないし君もそのままだよ」

それはいやだ。

「じゃあ、声を封印して足をつけるよ、」

ルックはこれ以上聞く気はないとばかりに怪し気な薬を取り出し、それをシードの口につっこむ。

「むーーーー!!むーー!(ぎゃーー!ここは海ん中だぞーー!!)」

「じゃあね、」

そう言ってルックはどこへともなく消え失せる。

「ちょっ!!」

シードが喋ろうとした瞬間、全身に激痛が走った。

あまりの事にシードは気を失い、さっき泳いできた道を逆戻りする事になった   

 

 

「えっと …、じゃあ僕は臣下じゃなくて外から来って事ですか?」

良くわからないが、本人が 理解しているのでカイルは肯定する事にした。

「うん、信じる?」

「いえ!そんなことはどうだっていいんです!!僕とあなたの関係っていったいなんだったんですかっ!?」

その事にしか興味はないらしい

「関係って…」

「『オレンジドラゴン軍』のリ ーダーとその協力者に決まってるだろ、バカざる。」

一瞬カナタは、(本人に言われ たと思い)あの世を見かける事になった、

「ルック、」

どうやら突然現われた少年が 言ったらしく、カナタは気を取り直す

「--で、関係はッ!?」

ルックが今にも殺しそうな眼で見ているが、そんな事はお構いなしだ。

「えっ、その…言えない(///)」

その時カナタは『神はいる』と確信したそうだ。

「カイルさ〜んvvv」

「きゃぅっ」

カイルは地面の上へと押し倒される

「…行動パターンは変わらないね、」

ルックはゆらりと武器を降り上げ、勢いを付けて降りおろす。

どごおっ!!

ヒットポイントは530と表示された……。(なぜ?)

 

 

「しっかりして下さい、クルガン様!」

「……」

「気がつかれましたか?」

(ちがう 、こいつではない…)

クルガンは朦朧とした意識を振り切るように軽く頭を降る、

「 私は城の使いの者です、嵐で船が沈没したと聞き御心配いたしました」

「…誰かここ にいなかったか?」

「は?いえ、クルガン様以外は…」

「そうか、」

唇に微かな感触が残っていた、

…なぜか覚えがある気がした。

「ぐっ、げほっげほっ!」

海から真紅の髪が覗き、青年が打ち上げられる。

クルガンは思わず眼を大きく開いた、

「な、何者だっ!」

使いの者の頬が僅かに朱に染まる。

どこから見ても男にしか見えない青年なのだが、妙に人を引き付ける所があるのだ。

青年は口をぱくぱくさせ、説明しよう とするのだが声が出ないらしい。

「口が聞けないのか?」

クルガンが青年に向かいそう尋ねると、その大きな眼をさらに大きくさせ、不思議な泣き笑いのような表情をした。

そして首を縦に振る

「名前は?」

青年はクルガンの手のひらに書き綴る…

『シー ド』と

「…ついてこい、」

クルガンは不思議とそんな言葉を口にしていた。   

 

 

『 う〜ん、なんか成りゆきでついて来ちまったけど、どーすっかな〜?』

借りたシーツのずれを直しつつ、シードは考え込む

「着いたぞ、」

口調はいつものクルガンで、記憶がないというのがとても信じられなかった。

「部屋は私の横でいいな、」

『おうよ っ!…しゃべれないってのはめんどくせーな、』

しかし意味は通じたようでクルガン はさっさと、自分の部屋へと戻ってゆく。

シードも与えられた部屋へと足を運ぶ、

『 これから、どーすりゃいいんだよ…』

「決まってるじゃないか、」

『!!いつのまに っ!』

「人を化け物みたいに、見ないでくれる?まあいいけどね、コレ使いなよ」

ル ックはそう言って、シードに小瓶を投げ渡す

『何だ?これ』

「バカざるがもってた、 『媚薬』だよ、あのまま持たしてたらなんに使うかわからないからね、」

心底嫌そうな顔で吐き捨てる。

『び、びやく?』

「じゃあ、あとはがんばりなよ、」

『ちょ、ち ょっとまった〜!!』

シードは慌ててルックを押しとどめようとする。

「なに?まだなにかあるの、」

『び、びやくなんか使ってどーすんだよっ!?』

「…思い出すかもしれないよ」

結局の所この薬を早く処分したいだけのルックだった。   

『h〜っ 』

声がでていれば、獣が唸るような声がでていただろう。

『…っしかたねえ!いっちょやってやるっ!…クルガンも記憶がないんならオレなんか、薬なしじゃ抱けねえだろうし……』

 

 

(いったい私はどうしたというんだ、)

クルガンは今にも隣の部屋にいる人物の元へ忍んでゆこうという意志を押しとどめていた。

昼間の姿が眼の中に焼き付いて頭から 離れない、確かにあの時自分は無防備にさらされた素肌に欲情をしていた。

それだけでなく、アレを見た他の者に対して嫉妬すらしていた。

あの青年を押さえ付けてめち ゃくちゃにしてやりたいくらい気持ちを抑えきれるか自信がなかった。

「『シード』 か…」

どこか懐かしい気分になるその名前を呟いてみる。

「……」

人の気配、

「こんな時間にか…」

気配からは殺気は感じられない、クルガンはしばらく様子を見る様に眠ったふりををする。

人陰はしばらく躊躇い、そして意を決したように部屋に入ってくる。

クルガンの唇に柔らかな感触がはしる、

おもわず眼を開けたクルガンが見た物は

真紅の髪   

『うっしゃ、薬は…ってなんだっ!?む〜っっ!!』

薬を飲ませるた めに侵入した舌が、逆に押し返され絡めとられる、

 

「ふ、あぁ…」

離れた時には、息も絶え絶えで逆に自分が薬を飲まされてしまっている

「いったいどういうつもりだ? 」

感情を押し殺したクルガンの声がシードの頭上から放たれる。

いつの間にか座り込 んでしまっていたのだ

「っっ…」

そのあまりの迫力に、声が出ない咽から掠れた音が洩れる。

「おまえは…」

クルガンが何か言う前にシードの体の変調は始まってしまっていた。

ドクンドクン、

身体が熱く脈打ちはじめる。

な…、速効性じゃねーか!!文句が言いたくともその相手がいないし、言える状況でもない。

「はぁ…はっ……」

「 なるほど、そういう筋の者か…ならば遠慮はいらんな」

そういうとクルガンは乱暴にシードをベットの上に投げ捨てる

(な、なにが『そういう筋』なんだ〜!?)

「よほど飢えていたのか?男なしではいられないほどに、」

(なっなにいっ!?おれってばもしかして『娼男』とでもまちがえられてるのかぁ!?)

「はぁ、ふ…」

否定したく ともしゃべれない、首を振るのも身体が身悶えて動けない

「しっかり楽しませてもらおうか…」

 

 

「はぁ…はぁ、」

声が出せないのがこんなに不便だと思いもしなかった、違うと言いたいのに、拒否すらもできない。

薬のせいでもあるのだが、首を振る程度がやっとだった。

それがクルガンの情欲を誘うとも知らずに、

「どうした?誘ってきたわりに、 もうへばったのか?」

そう言うとさらに激しく貫きはじめる

「っっ…はっ!ふぁ…、 」

シードはおもいっきり突き飛ばそうとしたが、それは力なく伸ばされただけだった 。

「っっっ……」

もうやめてほしいと懇願するように、クルガンを見るが無視される 。

グチュグチュと淫らな音が部屋の中に響いていた。

シードのそこからは無理に繋がれたせいで血が流れている、それでも感じ始める身体はどうしょうもなかった。

こん な身体にしたのはクルガンなのだ。

「はっ…はぁっ」

「…いいのか?」

いつものよう に尋ねられ、思わず首を縦に振ってしまう。

「……」

クルガンの眼に剣呑な光が宿る

「はああっあうっ」

クルガンは誰とも知れない嫉妬により、気づいていなかった。

自分が抱き竦めている身体を知っている事に。

 

 

第四章   

「ねえ…ルック、」

「なに?」

カイルの呼び掛けにルックはうっとうしそうに答える

「カナタ、眼覚まさないんだけど…」

「知らないよそんな事、静かでいいんじゃないの、」

ルックにどつかれてからはや三時間が経過している。

そしてカナタはぴくりとも動かない。しかもなぜか、顔から血の気が引いている。

「そんなに心配なら紋章かおくすり使えば、」

「…もってない」

カイルは何か言いた気にルックの顔を見つめる。

そしてついにルックの方が先に折れた。

「わかったよ、やればいいんだろ、全く何で僕が…」

ルックはカナタの顔を覗き込みながら『切り裂き』を使ってやろうかとも考える

「『いやしの風』」

HPが回復すると同時にカナタは起き上がった。

「カイルさ〜んっっ!なんかお花畑で、ゲンカクじいちゃんが手招きしてました〜っっ!!」

「…い、行かなくてよかったね。」    

 

 

『い、いったいなんだったんだ?』

シードは痛む身体を引きずりつつ、与えられた部屋へと帰ってゆく。

『なんかムチャクチャ怒ってなかったか?…う〜んわっかんねー 』

足腰立たなくなるほど、やられた事は何回もあったので今さらどうって事はなかったのだが、クルガンの本気で怒っている時の眼が怖かったのだ。

『あーもー、声が出ねえのって思ったよりも不便だな〜』

などとのんきな事を呟いているが、珍しく悩んでいるのだ。

シードは、難しい事はよくわからなかったが、一つの事だけは確信していた。

『…嫌われてる事だけは確かだよな、』

あんな眼で見られたのは初めての事だった。

いつもなら、ほんの少しだけでも優し気な眼をするのに、今はそれが消え憎悪まで感じさせていたほどだった。

『…やっぱりオレってば泡行き決定?』

シードは窓から身を乗り出し、怖いほどきれいな月を眺めていた。

 

 

ふとめが醒め、クルガンは隣に気絶していたはずの相手に手を伸ばすがもぬけの殻だった。

「なぜ私はあんな事を…」

クルガンは自嘲気味に呟く。

冷静になり自分がしでかした事を考えれば、考えるほど最低の事だった。

いくら相手から誘ったとはいえとてつもなく残酷に抱いた。

明日どんな顔をしてあえばいいのかわからなかった。

「謝るしかないか…」

ふと自分が口に出した言葉に苦笑する。

一体何について謝ればいいのだ、まさか乱暴に抱いてすまなかったとでも言えというのか。

「もうすぐ夜が明けるな、」

 

 

第五章

「くかーーーーー!!」

「…呑気すぎるね」

「そうですね〜」

「カナタ、重くない? 」

三人は、シードの様子を見にきたのだが、余りにも呑気に寝こけているシードの姿を見て呆れ返る。

「いいえ!ぜんぜん!!」

カイルは(陸上には出れないので)樽に水を張り、その中に入ってカナタに担がれていた。

カナタは重さなどは感じていないようで、むしろ嬉しそうにカイルを担いでいた。

「いいかげん起きなよ、」

「……? 」

なんでこんな所にいるんだよといった感じでシードは見上げる。

「シードさん大丈夫ですか?」

『カイル、』

「わざわざ、様子を見にきてあげたんだよ、…その様子じゃ成功したの?」

わざと皮肉った様子でルックは言う、シードの身体には幾つもの赤い印が刻まれていた。

『…ッ失敗したよ!』

シードは投げやりに顔を背ける

「あ、じゃあコレ使いますか?」

カナタはカイルを下におろしつつ、懐を探る。

『?なんだ?』

とシードは首をかしげる。

「ナイフですvいざとなったらコレでブスッとv」

カナタはにこやかに言い放つ、もはや忠義心という物を捨て去りカイルとの愛に生きる事に決めたらしい。

「ま、最終手段だね、」

『じょうだんじゃねーぞっ!』

シードは抵抗するが、意志を無視されナイフを放置される。

「本筋にあわせないといけないですし…」

カイルだけは 申し訳無さそうな顔をしていう。

「じゃ、帰るよ」

「でもその辺で見てると思います 〜」

「がんばって下さい…」

三人は一瞬にして消え失せる、

『まったくなんだつーんだよ 、』

それでもシードは自分の心が軽くなっている事を実感する、あんなことになりいくらシードでも傷付いていたのだ。

今は多少の溝がありつつも、それが無くなりつつある

『ま、なんとかなるだろ』

そう考えつつ、着替えへと手を伸ばす。

 

「入るぞ、」

いつもと同じような様子で声を掛け中へと足を踏み入れる。

『おせーぞ ー、オレ腹へッター』

一瞬クルガンは見間違えたかと思った、紙に書かれたそれは自分への避難でもなく、ただ空腹を訴えていただけだった。

しかも子供のような表情で 睨み上げている。

「悪かった。食事にするか、」

そう言うと今度は、満面の笑顔でコ クコクと頷いている。

本当に昨日とは別人のように見えた、みだらに思えた紅い髪も 、ただ純粋さを醸し出しているように見えた。

「まったく、どういうことなんだ、」

『はやくーなにやってんだー、メシー』

わざわざ紙とペンを持って歩きながらそれをクルガンへ見せる。

「ああ、すぐ用意しよう、」

クルガンは僅かだが、初めて優し気 な笑みをこぼした。

 

 

しばらくは何も問題なく過ぎていった、実際あの夜の事など忘れてもいた。(シード は)

『クルガン、どうしたんだ?』

「いや、なんでもない…」

そう言いながらもクルガンはシードをジッと見つめてくる。

…なんかへんだ。クルガンのやつ変なもんでも食っ たんじゃね〜のか!?

そう思いつつも、シードは暇つぶしにやっていたパズルに手を伸ばす。

『そういえば、これ何の絵ができるんだ?』

そう、クルガンへ問う、

「これは人魚の絵だ、ここに載っているだろう」

クルガンはパズルの入っていた箱を指し示す、

シードは人魚と聞いてびくりと身体を震わす。

「なかなかきれいな絵だな…」

珍しくそんな事を呟くクルガンだった…                  

 

 

第六章(最終章)

『見合い!?誰がッ!?』

シードは習慣になりつつある筆談で尋ねる、

「え?クルガン様がするらしいですよ〜」

ムッスーとしてカナタが答える、カイルに諭されはんば無理矢理城に返されたのだ、もちろん記憶は戻っていない。

『クルガンが………』

呆然とシードは呟くように唇を動かす。しかしその後に猛烈な怒りを覚えた。

『あんにゃろーーーー!!記憶がないくらいでオレの事忘れやがって!忘れても覚えてやがれーーーーー!!』

ムチャクチャな事を、出ない声で叫びつつシードはクルガンの自室へと駆け出す。

「あ、お仕事無くなりました〜、カイルさんのとこに行こーっとv」

カナタの仕事はシードの監視である…。

 

 

バタンッ

物凄い音をたててドアが開く、クルガンは書類から目を離し顔をあげる。

「どうした」

『どうもこうもあるかっ!』

物凄いスピードで書きなぐる

『見合いだとー!?難でそんな事オレに黙ってンだよ!!』

一瞬クルガンは大きく目を開いたが、すぐいつもの表情に戻る。

「お前には関係ない」

よけいな心配をかけたくなかった、と言うのが本音だった。

クルガンは何故かそんな感情になったのだ

『そうかよっ!わかった、もう知らねえ!ここから出てってやるッ!』

そうシードが書いた瞬間クルガンは反射的にシードを抱き竦めていた。

一瞬何が起こったのかわからなかったが、シードは自分が抱き締められているのに気付き、猛然と暴れ出す。

『はなせいっ!!』

「失礼しますわ」

カチャリとドアが開き、(どこか見覚えのある)上品そうな女性が部屋に入ってくる。一瞬気がそれたクルガンの手をくぐり抜けシードは外へ飛び出す。

 

「あら、お邪魔でしたかしら」

「ジル殿…」

 

 

 

「カイルさ〜んvなんか、修羅場ってきてますよ〜」

カナタは簡単に現在のクルガンとシードの様子を話す。

「ええ?どうなるんだろう…」

「……」

そんな事わかりきっていると言いた気な顔をルックはする。

「それより君、まだ記憶戻らないの?」

「そーですね〜vカイルさんが熱いキッスvをしてくれれば、思い出すと思いますvv」

「ええっ!?」

「…」

「だめですか?」

子犬のような仕草でうるるんと見上げられる、

「 え、その…いいよ(///)」

「かってにやってれば、」

ルックはカナタが一瞬にやりと笑っていたのを見のがさなかった、

『ホントは記憶戻ってんじゃないの?』

「カイルさ〜んvv」

「んん〜〜っっ!!」

 

 

『ちくしょ〜っ!!身投げしてやる〜』

シードは崖に向かって突進中だ。

「まて、シ ード」

後ろからはクルガンが追い掛けてくる

『あ、もう追いつきやがった!』

「話をきけ、」

『い・や・だ!』

来るなとばかりに、ナイフを自分の首に押し当てる、もち ろんホントに刺す気はさらさらない。

短い舌打ちがクルガンの口から洩れる、

「ナイフをはなせ、」

『……』

しばしにらみ合う2人、そこに不似合いな騒がしい声が聞こえてくる。

 

「記憶戻りました〜vvv愛の力ですね!!」

ホントにそうなのかは甚だ怪しかったが、カナタはカイルに抱き着いて崖の下で叫んでいる。

しかも…

「人魚な感じのカイルさんもいい感じですねvなんにもできませんけど、」

ベキイッとなぐられる音がする。

 

シードの気がそれた瞬間、クルガンはシードの手を押さえ付ける

「つか まえたぞ、」

「お前には、婚約者が出来たんだろっ!?」

「シード、声が…」

シード の咽から、出ないはずの声が出た、その瞬間に足は魚のそれになる

「あっ、」

「シード、聞け」

しかしクルガンは気にも止めずに話をすすめていく

「いやだっ!」

「その 婚約話はなかった事になった、ジル殿がな…」

『人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまいますわv』

「やはり私はお前の事が好きらしいな、」

「なっ」

記憶がある時でもめったに言われた事のない事を言われ真っ赤になってしまった。

「だから お前も覚悟を決めてくれ、」

「んぅ…」

ふわりと口付けられ、周りの景色がフェイドアウトする。

 

 

 

「!!いっ、いったいどこから!?」

「「「ジョウイ(様)(君)」」」

元の場所、 つまりハイランド、しかも敵前のど真ん中に降り立った五人(三人)だ。

「帰れたみたいだね、」

「なかなかおもしろかったですよねv」

「…うん(///)」

「クルガン… 」

「どうした、妙な顔をして」

「よくも一回でもオレの事忘れやがったなーーーー!!!」

「わーー、撤退!撤退!」

「ルック」

「わかってるよ、はあ…」

紋章からの攻撃から逃げるように、三人はとっとと退散する。

 

「『大爆発』〜!!!!!!」

 

「うぎゃーーーーー!!!」

一番不幸なのは、やはりジョウイであろう事は確かだった。

 

おわるv

 

 

 

〜蛇足〜

カイル:ところで…………なんで、ジルさんもいたのかな………。(吸い込まれてないのに…)

ジル:ほほほほほほほほほほほvそれは『覗いていた』からに決まっていますわv

カナタ:あはははははははははvそーですよ〜海月さんが、そんな設定きれいに忘れ去ってた訳じゃないですよね〜?

バラすな。(怒)

とりあえず!めでたく(?)終わりですっ!

かなり昔の作品ですので、私コレ打ち込んだ時顔熱くなって、叫びまくってましたよ…。