Love Don't Cost A Thing


 「まぁ〜た、仕事持ち込んでんのかよ。」

 仕事帰りに訪れた相棒の豪邸。執事に通された部屋に入るなり、呆れたようにシードが言う。
 折角の非番だというのに自宅に書類を持ち込み、デスクに向かっている男にシードは不満そうに唇を尖らせた。
 一方クルガンはシードの突然の訪問に驚きもせず、逆にそれが当然であるといった素振りだ。
 紙面から顔を上げぬままシードに言う。

 「仕方あるまい、”余分”な書類が私のところに回されて来るのだから。」
 
 皮肉たっぷりなクルガンの言葉にシードが食って掛かる。

 「どういう意味だよ…。」

 押し殺した声でシードが問い返す。
 しかし、淡々とした口調でクルガンがその答えをあっさりと返す。

 「そのままの意味だ。思い当たる節があるならば少しは自粛しろ。」

 言い返してやりたいが、思い当たる節があるだけに分が悪く、シードは言葉に詰る。
 何でこの男はこんなに頭も口も回るんだ… と心の中で毒吐き、大きく舌打ちすると、拗ねるように、どかりとソファーに腰掛けた。





 かりかりかり…

 クルガンが仕事をする音だけが室内に響く。

 珍しい事にあれから暫く、クルガンの仕事が終わるのを大人しく待っていたシードだった。
 が、自分がここを訪れた目的を思いだし、どこと無く嬉しそうに笑った。
 寝転んでいたソファーから身を起こすとその背もたれに顎を乗せ、クルガンに尋ねた。

 「なな、お前さ、今欲しいもんある?」

 突然のシードの質問にクルガンは一瞬眉を顰めたが、実直に答えた。

 「休暇と夜の素直なお前だ。」

 「アホ!!欲しい物っつってんだろ!!!」

 シードが手近にあったクッションを投げた。
 口調こそ怒っている様に思えるが、その頬を朱に染めているシードにクルガンは口元を押さえ、肩を震わせて笑った。

 「笑うな――――っ!!!」

 尚も食って掛かるシード。
 それが余計に笑いを買う事に気付いていない。
 しかしクルガンはこれ以上シードの機嫌を損ねては後が面倒だ、と判断しとぴたりと笑うのを止めた。
 その代わりに、肘を付き、手に顎を乗せて意地悪く口の端を吊り上げる。
 その顔は何かを企んでいる様にも見て取れた。

 「何か私に迷惑を掛けるような事を仕出かして来たのか?」

 「ちげーよ。」

 「では何だ?」

 「……………………。」

 言葉に詰まり、シードは俯いた。
 クルガンの不信が高まる。
 どうせろくな事をして来ていないのだろう と、きつめの口調で問い質す。

 「お前が大人しく私の仕事が終わるのを待っているその理由は何だ?」

 「……今何時?」

 「私の問いに答えるのに時間が必要なのか?」

 「何時だよ…。」

 ぶっきらぼうに時間を聞くシードにクルガンは溜息を一つ吐くと内ポケットに入れてある懐中時計を出した。

 「丁度12時を回ったところだ。」

 そうクルガンが告げるとシードはソファーを下り、机越しにクルガンの目の前に立った。
 そして、机の上に片膝を付く。
 その行動を注意しようと開かれたクルガンの唇にシードの唇が寄せられた。
 触れるだけの口付け。

 シードの突然の行動にクルガンは驚いたように少しだけ目を見開いた。
 紅潮したシードの綺麗な顔が間近に見られる。
 彼から進んで口付けをもらったのは一体いつ以来か?などと、クルガンは思わず疑問に思い、思考を巡らした。
 そして、数えるほどしかないその行為の真意を理解した時、クルガンは妙に納得した面持ちでシードの頭の後ろに手を回し、自らも積極的に口付けを交わした。

 長い口付けを交わし、ようやく息を吐いたシードはクルガンの淡青の瞳を真っ直ぐ見ていった。

 「Happy birthday to Culgan...

 クルガンはシードの顎をそっと取ると、優しく口付けた。




 ぎしり と、ベットのスプリング軋む。
 白いシーツの波に、紅い髪がぱらぱらと乾いた音を立てて散った。

 仰け反る白い咽が悩ましい。
 男は唇を這わせ、また、その咽に、胸にと紅い華を散らした。
 胸の突起を口に含みきつく吸い上げ、前は宥めるように優しく扱いた。
 手の内のシードが張り詰めるのを見て、クルガンは自身もまたその質量を増して行くのを感じていた。
 上気した頬、欲情に塗れた表情が男の欲情を煽り、男を高みに誘う要素となる。

 「なぁ…、本当に…っ…欲しいもん、無い…のか…?」

 与えられる快楽に堪えながらシードが問う。
 シードを攻める手は緩めぬままクルガンが言う。

 「無い。愛に物は不用だ。」

 にやりと笑って返すクルガンにシードは鼓動が早まるのを感じた。
 身体の熱が一気に上昇する。

 「ばっ!!!っくぅ……。」

 やんわりと耳朶を甘噛みされ、シードは身を捩った。

 (何でこいつはこういう台詞を恥かしげも無く…。)

 そう思いながらも反論は喘ぎとなり、クルガンの愛撫を身体が素直に受け取る。
 心臓が早鐘のようだ、とシードは思った。
 そして、一度高みへとに連れて行かれる…。

 「アアァァァ……っ!!」

 解放の衝撃で、大きく肩を揺らし、息をするシードに、クルガンは容赦なくその行為を強いる。

 「はァ…ぁ……………んっ!!!」

 突然、秘部に侵入してきたクルガンの指にシードはびくりとその肢体を震わせた。
 先程放ったシードのの体液をクルガンが指に絡ませ、そこへ差し入れたのだった。
 ぐちゃり と卑下な濡れた音にシードは身を震わせた。
 また、腰の奥に静めようのない火が燈るのをシードは感じた。

 幾度かその節ばった長い指が抜き差しされ、シードはその口から嬌声を洩らした。
 じれったいような感覚に襲われる。
 指の長さでは欲しいところにまで届かなくて…。
 シードは、自らクルガンを求めるようにその首に腕を絡め、口付けを強請った。

 見つめる青い瞳に、この冷たい男からは想像出来ない熱が篭っているのをシードは垣間見た。
 肩膝を高く持ち上げられ、熱い塊が押し当てられたかと思うと、衝撃がシードの身体を襲った。

 「あああぁぁぁぁぁ……っ!!!!!」

 身体を縦に裂かれるような痛みに、シードはクルガンの背中に爪を立てた。
 しかし、それは痛みばかりではなく、強い快感を伴っており…。
 シードは身体が悦ぶのを感じていた。
 しかし、それを淫らだと感じるよりも遙に強い快感がシードの脳を犯した。

 「アッ……くる、が……。」

 互いに互いを求めるようにして交じり合う。
 クルガンは自分を絞めつける熱い内壁を感じ、眼を細めた。
 ぎしぎしと激しくベットが軋む。

 限界だ…と思った時、クルガンの動きが急速に荒々しくなった。
 その激しさを歯を食いしばってシードは堪えた。
 そんなシードに愛しさが溢れる。
 目を瞑っているシードには見えなかったが、クルガンは一瞬笑みを浮かべ…そして、その熱い塊を強くシードの腰に叩き付けた。

 「アアァッ!!!」

 その身の内にクルガンの熱を感じながら、シードも熱い熱を吐き出した…。





 「お前に限界っつーもんはねーのかよ…。」

 ぐったりとベットにうつ伏せになって言うシードにクルガンは苦笑を浮かべた。

 「さあな。今日の勤務は午後からであろう、それまでそこでゆっくり休んで行け。」

 そう言って身支度を整えるクルガンを見て、シードが何かを思い出した風にベットから落ちそうになりながら、自分の上着を引っ張った。
 やっとの思いで上着を取ると今度はそのポケットを探り始めた。

 「何をしている…。」

 訝しげに問うクルガンを無視し、尚もポケットを探る。
 そして、目的のものを見つけたのか、クルガンを見てにやりと笑って言った。

 「受け取れ、クルガン!」

 その内ポケットに入った小さなモノを、素早く取り出すとクルガン目掛けて放り投げる。
 不意を突かれたにもかかわらず、クルガンは難無くそれを受け止めた。
 そして、自分の手の中にすっぽりと納まるくらいの小さなモノを見て呟いた。

 「……これは…。」

 「誕生日にプレゼントは付き物だろ。」

 少し照れくさそうに目を逸らしてシードが言う。
 しかし、クルガンは嬉しがる様子も入やがる様子も無く、無碍に言った。

 「…物はいらんと言った筈だが?」

 「単なるやる側の自己満足だよ!黙って有り難く受け取っとけよ。」

 むすっとした顔をし、クルガンを睨みつけてシードが言う。

 「…なるほど。では、有り難く貰っておく。」

 「おお。」
 
 瞬間、満足そうに笑ったシードに軽く微笑み、クルガンは部屋を後にした。





 城に付き、補佐官との話を終えたクルガンの目にふと、今朝シードから貰ったモノが入った。
 今朝のやり取りが思い出される。
 書類に滑らせていた手を止め、ペンを置くとそれを手に取った。

 「一体何をくれたのやら…。」

 リボンを外し、包装を丁寧に解くと白い小箱が姿を現した。
 ぱかり と軽い音をさせ、箱を開くと、シンプルな装飾の、チーフの留め具が入っていた。
 クルガンはそれを手に取り、まじまじと見た。

 青緑色の宝石――アクアマリンが付いた留め具。

 暫く眺めていただけのクルガンだったが、徐に、今付けているチーフ留め具を外し、シードが贈った留め具を付けた。
 白のネックチーフにその青緑がよく映えた。
 クルガンは、一度だけそっとそれを撫でると、再びペンを取った。
 そして、いつもと同じように書類を片付けゆく。
 しかし、その口元には常に無い、やわらかな笑みが浮かんでいた。




END

 

えと…『甘々クルシー(裏)』という事だったのですが…。
これで宜しいのでしょうか???(汗)
お決まりの…お誕生日おめでとうエロです!!(死)
柳瀬つぐる様…誠に申し訳有りませんですーっ!!!(滝汗)

無駄に長くてすみません…。

深海紺碧