あの時の思いをなんと呼べば良いのだろう…

      今まで一度も味わったことのない…

      激しく波立つ感情―――――

      そう、あれは・・・

 

     ――――憎悪〜秘めたる思い〜

 

      ハルモニアからの鼠を狩るため、グリンヒル下りまでやってきた私達だったが、

    

     『窮鼠猫を噛む』とはよく言ったものだ。 鼠の思わぬ反撃に驚きつつも勝負の手を緩めず、

     好戦する。 中々の手足だ。 私達二人相手に優るとの劣らぬこの剣技。

      いや、こちらの方が部が悪いか。 協力攻撃、死角を突いた攻撃がことごとく防がれている。

     それにしても、この剣は厄介だ…。

      蛇のような軌道を描き、襲い来る双蛇剣『グローサー・フルス』の動きを予測するのは

      恐らく無理であろう。

      そんなことを思いつつ、切っ先を剣で弾き返す。

     と、同時に私が見たのは、双蛇剣の矛先を避けきれず胸を掠められ、

     剣から手を離し、倒れるシードだった。

     「シード!!!!!!!!!!!!!!!」

      声を荒げた私の呼びかけにシードはゆっくりと立ち上がりながら平然と答えた

      ―――が異変は突然起こった。

     「ああ・・・・大丈夫だ。ちょいとばかし、胸を掠められたが・・・・ぐあぁっ!!!!」

      「悪いな!!!!!!!!」

      一瞬、何が起こったのか私には理解できなかった。

      ―――――――ワルイナ?

      崩れ落ちるシードを見て、ある程度予測していた答えに辿り着く。

      ―――――――アア、ヤハリドクガ・・・

      しかし・・・それを差し引いてもシードの様子がおかしい。

      ―――――――アノクルシミヨウハナンダ?

     だが、シードにばかり気を取られている場合ではなかった。

      今、あの男から視線を外す事は私達二人の敗北、

     いや、死を意味していることだけを僅かに残った冷静な部分で判断し、

     シードを視界の端に留めたまま、剣の柄をキツク握りしめ、波立つ気持ちを押さえ男

     ―――ナッシュ・ラトキエに視線を戻した。

      奴はシードが離れ際引き裂いた左足にべっとりと血で濡らしながらも、懸命に立とうとしていた。

      私はその機を逃さず、素早く奴の元へ近づくと奴が双蛇剣なるものを構える前に

     首筋に剣を突き付けた。

     「全くシードも無茶をする。正体のわからない相手に一か八かのような戦いをするなど・・・。」

      表情を表に出さぬよう、私が冷淡に言うと奴は歯噛みして言葉を返してくる。

     「くっ・・・・・・かわりにおれを殺すか?」

     「それも良いですが、貴方は解毒薬を持っているでしょう?それを出しなさい。

     そうすれば命だけは助けてあげます。」

     剣を握る手に力が篭る。

      シードのあの様子からして、一刻を争う容態なのであろう。

      私達の身体はある程度の毒には慣らされている。

      余ほどのもので無いとあのように倒れることはまず無い。

      逸る気持ちを押さえ、冷静に相手を分析する。

      ―――――――奴は解毒薬を持っているはずだ。

    「それも良いですが、貴方は解毒薬を持っているでしょう?それを出しなさい。

      そうすれば命だけは助けてあげます。」

     私は目の前にいる男を切り刻み、嬲り殺してやりたい気持ちを抑制し、冷ややかに言う。

     「・・・・・・・・・・」 

      奴は私の目を黙視する。

     「私が信用できないと?」

     「コートの内ポケット、右側の・・・・緑のビンだ。」

     「これですか・・・・・・」

     「あんたは・・・・おれを信用するのか?それが解毒薬だという保証はないぜ・・・・・・・・」

     「それならそれで貴方を切り裂くだけです。そんなことも予想のつかない人ではないでしょう。

     貴方は。」

     そう言って私は笑った。

     笑いの中に含まれた殺気に本能的に気付いたのであろう、

     奴の身体が奴でさえ気付かないぐらいに小さく後退した。

      これ以上付き合うことは無いと判断した私はシードの元へ足早に近づくと、

     力無く横たわるその身体を抱き起こした。

     いつも高体温を誇っていたシードの身体は私よりも冷たくなってしまっていて、

     小 刻みに震えていた。

     荒い呼吸や、苦悶の表情は毒性の強さを物語っていた。

     「シード・・・」

     無駄とは思いつつも、声をかけられずにはいられなかった。

      思ったとおり反応は返ってこない。

      私は解毒薬の蓋を開け、シードの口内へ流し込もうとしたが、今の状態から、

      飲み込む事は困難であろうと判断し、解毒薬を予定を変更し、私の口内へ流し込んだ。

      口内に解毒剤を含んだまま、シードの顎を掴み口付けると、舌を使い巧みに薬を飲ませる。

      程無くしてシードの荒い息は少しづつ落ち着いたものへと変わっていった。

 

     「勝負は引き分けですね。」

      全身の力が抜け、ぐったりとしているシードを抱き上げたまま言う。

     「勝負・・・・ねぇ・・・・・・・・・・おれは命がけの勝負なんて・・・・・・

     ごめんだ・・・・・・」

      肩をすくめて言う奴。

      まあ、奴の言うことは最もだ。

     「そうですか。では手当てを済ませたら早くこの地を去ることですね。

     グリンヒルもやがて戦場となるでしょう」

     「ご忠告・・・ありがたく受け取っておくが、おれにはまだ任務があるんでね」 

      「そうですか。それでは。」

     そう言って私は奴に背を向け、馬に跨り、その場を去った。

     「ご忠告ありがとう・・・か・・・」

      ナッシュ・ラトキエの言葉を反芻し、私は皮肉気な笑みを浮かべた。

      確かにあれは忠告だ。 奴が、次に私と会うまで殺されないように…。

      奴を殺すのは兵士でも、シードでもない、この私だ。

      腕の中のシードを見、強く馬の腹を蹴った。

 

      私はグリンヒルの森を抜け、軍の駐屯地に戻ると軍医にシードを任せ、

      待機していた兵士達に指示を与えると自分のテントに戻り、地図を広げた。

      「失礼しますよ」

     「・・・何用ですか」

      私の返事を聞かぬまま入ってきた男に冷ややかな視線を送る。

     「いえいえ、その様子ですと始末できなかったようですね」

      男、ザジは静かに笑みを浮かべ言った。

     「皮肉を言いに来られたのですか?」

     薄く笑って言う私に奴は目を細める。

    「まさか!クルガン将軍にそのような事を・・・」

     用がないなら立ち去れば良いものを。

     忌々しげな視線を送るが、ザジは気にした様子もなく言葉を続ける。

     「シード将軍は双蛇剣の猛毒にお倒れになられたのですね?」

     「・・・・・・・・・・・・」

     「解毒薬は?」

      「飲ませてある」

      「そうですか、痛み分け、ということですか」

      くすりと笑うザジに感情を押し殺した声音で問う。

     「何が言いたい」

     「いえ、確認に来ただけですよ、奴、ナッシュ・ラトキエがあの剣を抜いたかどうか、を・・・」

      そう言って奴は不敵な笑みを湛えたまま出ていった。

     テントの出入り口を睨みつけたまま呟く。

     「双蛇剣・・・・・・」

     私は拳を固め、地図の載った台に力任せに振り下ろした。

 

     「シード・・・・・・」

      診察が済んだシードは彼のテントにある寝台に横たわっていた。

      手を取るといつもの彼の暖かさが戻っていた。

      医師の話だと、解毒薬を飲ませるのが後もう少し遅ければ助からなかったらしい。

    「シード・・・」

     額にかかっている髪を軽く上げてやる。

    「ん・・・・・・・・・」

      微かに瞼が動いたと思ったらゆっくりと目が開かれた。

     見なれた深紅の瞳が頼りなげに私を見つめる。

     「クルガン・・・・」

     「目が、覚めたか?」

     起きあがろうとするシードを手伝い、上半身だけを起きあがらせる。

     「あ・・・そうか・・・俺、倒れたんだっけ・・・・・」

     「ああ・・・・・・」

     「クルガンが助けてくれたのか?」

     「まあな」

     「そっか、サンキュ。結構キツイ毒だったから死んだと思ったぜ」

     「残念ながら生きているな」

     「・・・・・・・・悪かったな、死に損ないで・・・・・」

      頬を膨らますシードの頭を軽く撫でてやる。

      いつものように子供扱いするな、と言ってシードは私の手を払う。

      そのいつも通りのシードの仕草に自然と口端が緩むのを感じた。

     「それにしても、せっかく久々に骨のある奴と出会った!!と思ったのにな・・・ ・

      殺っちまったんだろ?」

      悔しそうに言うシードに私はさらりと言った。

     「いや、逃がした」                                                                                                                                       

     「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」

      一瞬の間を置き、鳩が豆鉄砲といった顔をするシード。

     「手合わせならばまたできるぞ」

      して欲しくはないがな。と心の中で付け足す。

     「マジ?」

     「ああ・・・始末しなければ、とは思ったがな・・・」

     「・・・・・・・何で?」

      シードは心底不思議そうな顔をして私に尋ねてきた。

     「解毒薬と引き換えに、な・・・。今お前を失うことはハイランドにとって望ましくないことだか       らな。

      例え、バカでどうしようもない阿呆でもお前は将軍だからな」

     「んだよ、それっ!!」

      上半身を捻り繰り出すシードの拳を片手で苦笑しながら受ける。

     その手首を掴み、引き寄せると唇を合わせた。

     「んっ・・・・・・」

     切ない声がシードの鼻から漏れる。 その声に促されるようにして、

     私はシードの寝着の胸元をはだけさせ、手を侵入させる。

     「ちょっ、俺、怪我人・・・」

     「これだけ元気があれば十分だ」

     そう言うと私は制止するシードの声を無視し、胸の契りを弄る。

     軽く摘んでやると、シードは小さく身体を跳ねさせた。

     「ちょっ!シャレに、なんねぇ・・・・・・・」

      本気で抵抗しようとし始めたシードの下肢に手を伸ばし、シード自身に指を絡め、欲望を育てる。

      途端にシードの押し返そうとしていた手が私の軍服に縋る様にしがみついてきた。

     「ん・・・ふっ、あ・・・ぁん」

     キツク緩くシードを扱く。 しかし、シードは強情に意識を手放すのを渋る。

     しかし、シードは強情に理性を手放すのを渋る。

      潤んだ深紅の瞳で私を睨み、懸命に私の愛撫を耐えている。

     「どうした、我慢することはないぞ?」

     首筋を吸い、耳元で問いかけると、呆気なくシードは私の手の中に精を吐き出した。

     「はあっ・・・はあっ・・・」

      開放の衝撃と体調が万全でないためか、荒い呼吸が私の耳を擽る。

     「感じたのは声か?手か?」

      薄く笑いながらシードの出したものを指に絡ませ、

     まだ堅い蕾の周りを爪先だけでなぞるとシードは腰を浮かし、逃げを打った。

     「慣らさないと辛いぞ?」

     「ひぁっ、!!・・・ん、ふぁ・・・・」

     差し入れた指にシードの内壁が貪欲に絡みついてくる。

      首から胸へと唇を落としていくと、シードの白い肌に痛々しく残る刀傷が見て取れた。

     「この治療はどうした?」

      つぅと傷口をなぞりながら問うと、痛みに顔を顰め、快感に堪えながらシードが言った。

     「解毒薬、と・・・服用・・・す・・と・・・」

     「なるほど、相互干渉を恐れての配慮か・・・」

     納得し、痛々しい傷口を舌先を堅くして強く舐め上げる。

     「いっ、つぅ・・・・・・」

     眉根を寄せるシードに私は小さく笑いながら、シードの中に入れていた指を引き抜くと、

     足を大きく開かせ、自身を押し当てた。

     「くぅああああぁぁぁ・・・・・・・」

      悲鳴とも、嬌声ともつかぬ声を上げるシード。

     再奥まで自身を挿入し、シードの感覚が落ち着くのを待ってから私は動き始めた。

      腰を引くとシードの内壁が出させまいとキツク私を絞めつけてくる。

      突き上げるたびに生まれる熱が私達二人の体温を上げる。

     焦点の合わぬ目で私を見上げてくるシードの表情が私を煽り、高めてゆく。

      失わずにすんだ熱に酔いしれながら私はその欲望をシードの中へと放った。

 

     「シード・・・・・・・」

      深い眠りについているシードの髪に触れる。

      さらさらと指の間から零れる感触が心地よく、ついつい弄ってしまう。

     ふと、悪戯心を出し、軽く引っ張ってやると形の良い眉を顰め、ごろりと寝返りを打ってしまった。

      「くっくっくっ・・・・・・・」

      その様子がどこか面白く、私は笑った。

      シードの背を見ながら、ふと、シードのある言葉を思い出す。

     『死んだと思ったぜ』

     私はお前を失うかと思ったぞ?

     そう思って・・・そう思ったことに私は自嘲気味に笑った。

     ならば排除してしまえば良い。

     二人の間を隔てるものは全て排除してしまえば良い。

     そう、全て・・・。

     「お前は死なない、私が死なせない・・・・そして、離さない・・・・・」

      覚悟しておけ。

     背を向け、眠るシードを後ろから抱きしめ、私も眠りにつくことにした。

 

                                                                                              END

     あとがき

     やったら長いです・・・。(汗) クルガン氏の心理がとても難しいです・・・。

     なんか、ドリームはいってます・・・。

     もう、わけわからなくなってしまいましたね・・・・・・。

     すみません、やなせまい様。 期待していた(私が)わりに、盛り上がらなかったような・・・。

                                           (@_@;)