『危険物!取扱いに御注意を!!』
『通り魔注意』
そんな立て札が城中至る所に立てられていた。
そして、その立て札の前で、トランの英雄は首を傾げるのだ。
「『通り魔』が出るの?」
ギ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッガリガガ……
カナタの手元から耳障りな音が発せられる。どうやら書類を書き損じたらしい。机にまで傷が入っている…………。
「――――らしいですね〜v」
にこーvと何事もなかったようにカナタは失敗した書類を丸めつつ笑う。珍しく仕事中らしい。
「でも、被害にあってるのは、男の人ばっかりですから、放っといても大丈夫ですよ〜v」
そういうものかな〜?という表情になりながらも、カイルはそれ以上その話題をせず、ふと思った事を口に出す。
「(自主的に)カナタが仕事するの珍しいね、」
「大事なヤツは実はちゃんとやってたりするんです!そう、小人さんのように!!」
「………(最後はよくわからないけど…?)じゃあ、あれは?」
カイルが指差した方向には……
「カナタ殿ぉ〜〜〜〜〜〜〜仕事を片付けんかこのバカ軍主がぁああぁぁああああぁあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜…………」
ずるずると大量の書類を担ぎ、這いずってくるシュウ(?)だ。もはや、隈やらペンダコ(?)やらを作り原形をとどめていない…………。
「興味のない書類(+人物)です!」
「……………(いいのかなぁ…>汗)」
などという話は置いておいて。
「おう、カイルv」
ポン!と後ろから肩を叩かれ、カイルは振り返る。
「シーナ、」
「珍しく1人か〜?」
「うん。」
――――2人が取り留めのない会話を交わしているのを、物陰から見つめる者がいた。
その人影の瞳はギラギラとしっとの炎が燃え盛っている………。
「じゃあな!」
別れの挨拶を交わし、カイルの姿が見えなくなった瞬間、人影が飛び出した。
「なっ!?」
それに気付いたシーナが反撃する間もなく、人影は素早く正面まで駆け寄ると鈍器で殴り飛ばす。
「お……お前は……………っ!?」
シーナは床に倒れたまま、犯人を見上げると、何かいいたそうに唇を動かしたがそのまま気を失う事になった。
「ふっ……カイルさんの肩に触るからです………!」
そう言うと犯人はさらに懐から『獲物』を取り出した………
「ふぅ……。」
アップルは疲れているのか、首を左右に振りため息を付いた。
シュウに書類を渡すべく、彼女は廊下を足早に歩いてゆく。すっかり薄暗くなった廊下は視界がききにくく、アップルは明かりをつけた方がいいわね、と思案するが、その思考はすぐに中断される事になる………ぐにゃっとした感触が彼女の足元でしたのだ。
「きゃっ!?」
短く悲鳴をあげるアップルだが、なんとか堪えて、いま自分が踏み付けたモノを確認する。
「―――シーナ?!」
踏み付けた人物を知り合いと確認し、慌てて助け起こそうとした…………が。
「!!? ――――――っき」
辺りにアップルの甲高い悲鳴が響き渡る事になった………。
「カイルさ…………うわあぁああぁぁああああ!?」
「トランの………なっっ!??」
「まっまだ何もっっ――――ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
ここ最近、トランの英雄に声をかけようとした者や、近づいた者が全て張り倒される事件が頻繁に起こり始めた…………。―――ただ、張り倒されるだけではなかったのだが…。
「? 一人か?」
「うん。」
レストランで一人食事をとっているカイルを見かけ、フリックはつい声をかける。
「最近一人でいるのが多くないか?」
「カナタ、忙しいみたいだから。」
「…その割には仕事が減ってないらしいぞ…………(汗)」
執務室で、胃をキリキリと痛ませる軍師を思い、フリックは思わず十字を切る。
「誰かあの阿呆を捕まろーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!!!」
もはや、執務室は書類でうめ尽くされている状態だ。
フリックの言葉に、カイルは苦笑いを浮かべ、話を変えようとする。
「最近『通り魔』がでるって聞いたけど……」
「ああ……でるらしい。」
「らしい?」
カイルは首を傾げる。
「被害にあったメンバーが、部屋にこもったまま出てこないからな…。」
どこか遠くを見つめるフリックだが、カイルは手を合わせてごちそうさまでした。をしている。
「そう言えば、『通り魔』が出始めたのは、確かお前が一人で行動し始めた頃だったような………」
「あ、ムクムクと遊ぶ約束があるから行くね、」
フリックのセリフを聞かずに、カイルは席を立って行く………
「………ふう(汗)」
一人残された孤独感からフリックも席を立とうとした時、机にひじをぶつけ、フォークが床に転がった。
「おっと、」
それを取ろうと、フリックが屈み込んだ瞬間――――
カッ!
短い音をたて、フリックが先ほどまでいた場所に短剣が刺さって……いや、めり込んでいた。
「なっ!?」
フリックが驚きの声をあげる前に、周りにいたメンバー達がガタッ!と音をたてて立ち上がった。
「『あの』フリックが!!」
「『あの』フリックさんが!!」
「『あの』フリック殿が!!」
「「「『運良く』避けた!?」」」
「驚く所はそこかっ!?―――がはあっ!!?」
野次馬(?)につっこんでいた隙に、ぶわきぃっと鈍く心地よい音をあげてフリックが殴り倒された。元々、短剣は囮だったようだ、
「まっ……まさか、フリックさんが運良く避けるなんて……。今日は槍でも振るんでしょうか?」
投げた、そして殴り倒した張本人でさえも驚いているようだ…………
「その声は―――カナタ…………………………………………か?(汗)」
慌てて振り向いたはいいが、最後は疑問形になってしまった。なぜなら、少年は………
「いいえ!僕はカナタじゃありません!!『通り魔』と呼んで下さい!!」
変装していたのだ…………そう、いつもの黄色いスカーフを顔に巻き付けただけの…………。
「まあ!そういう事で!僕とカイルさんの愛の為!死んでもらいますッッ!!!!」
そう叫ぶと、チャッと愛用のトンファーを構える『通り魔』。
「何がそういう事なんだッ!!?(汗)」
「フフフ!最近カイルさんに近づく人が増えたみたいなので、片っ端から血祭りに上げようと、僕はわざとカイルさんを1人にさせ『鮎の友釣り大作戦!〜実は罠だったよ編〜』を決行し、カイルさんに近づいた人全てを虐殺(嘘)しているんです!!」
いきなり底の浅い計画の全貌を聞かされ、脱力するメンバー達だ。
「つー訳で、カイルさんに手を出せないように、ひどい目にあって下さいv」
ふざけているが、膨れ上がる殺気にフリックも反射的に愛剣オデッサを構える。
「でも、肉弾戦なんて、言ってませんからねーv(そんなめんどくさいv………さっき殴り倒しましたけど。)」
にこぉと微笑む姿は子供そのものだが………。―――『通り魔』はどこからか取り出したロープを軽く引っ張った。
よく見ると、そのひもは天井からぶら下がっている事に気付いただろうが、哀れフリックはそれに気付く事もなく、床に四肢を縫い付けられる…。
――――――ドスドスドスッ!
そんな音だけがフリックの耳に届いた。
「槍は降るとは言いましたけどv」
あはははははvと笑うカナタに、ハイ・ヨーが困ったように声をかける。
「勝手にレストランにこんなの仕掛けられちゃ困るヨ〜〜〜!」
「あ、すみませんー。すぐ片付けますから〜v」
「本当ヨーー?」
納得して去ってゆくハイ・ヨー………もう、このはた迷惑なリーダーに慣らされてきているようだ。
「さってv――――最後の仕上げといきますかーーーv」
懐をごそごそと探る『通り魔』の瞳はそれはそれは楽しそうに輝いていた………。
どわぁあああああぁあああぁあぁああぁあああああぁあああぁああああぁ!!!!!!
――――――フリックの断末魔の悲鳴がレストラン内に轟いた……。
「なっ……なんて惨い………!」
「あ、あまりにもひどすぎるっ………!」
数分間に渡った『通り魔』のあまりの仕打ちに、周囲にいたメンバー達は倒れたままのフリックから目を背け、床やテーブルに顔を突っ伏せ、肩を震わせる。
「フリックさん………それで暫くはカイルさんに近づく事も出来ませんよ!!」
くるくると『獲物』を手の平で遊ばせる、カナタ………もとい、『通り魔』だ……。
槍を引き抜かれ、自由のみとなったフリックは、両手で顔を押さえて、低いうめき声を上げている…。
「これでカイルさんに近づく者がどうなるかよくわかったで……」
高らかに、そう言おうとした瞬間、背後から声をかけられた。
「カナタ、」
カイルが怒りを押し殺した表情で、立っていた…。
ひゅっと息を飲むと、『通り魔』は素早く、顔に巻き付けていたスカーフを外し、いつものように胸元に括り直す。そして、出来る限りの笑みを浮かべ、カイルの方を振り向く。
「はっはいvなんですか〜〜〜vvv」
「これ、カナタがしたの?」
カイルの胸には、ムクムクが抱かれていた。そう、『通り魔』の被害にあったムクムクが……………。
「「「ブッ!」」」
周囲にいたメンバー達は堪えきれなくなり、つい吹き出してしまった。
そう、ムクムクの顔には『最後の仕上げ』が施され、ゲジゲジ眉やらヒゲやらを特殊マジック(10日間は消えない優れもの!カナタ談)で書き込まれ、ものすごい事になっていたのだ………………………。
――――ゲラゲラと腹を抱えて転がりまくる同盟軍メンバー達は暫く回復しそうにないだろう。ちなみに言うと、フリック氏は『青二才』とデカデカと書かれ、パンダのような模様を入れられてしまっている。
それはともかくとし、カナタ少年はカイルからの無言のプレッシャーを受け続けていた…………。
「あのッ………(汗)」
「……………」
「その…………(汗)」
「……………」
「――――――ごめんなさいです………(汗)」
小さくなる身体と声で、カナタがついに謝罪した………。
こうして、この事件は終局を迎えたが――――――…………。
「かーーーーーっっ!コレ落ちねーなーーッ…!!」
「人騒がせもいいとこよっ!暫くそのままでいればっ!?(///)」
しょうもない事で悲鳴を上げてしまった自分自身に対して怒っているアップルだった………。
シーナの『スケこまし』と額に書かれ、昔の泥棒メイクの顔に驚いたのは当然と言えるだろう。
『通り魔注意』の看板は暫く立てられたままだったと言う事だ…………。
そして、『変質者注意』という看板もたてられたと言う………。
な、何やら、微妙にリクとずれちゃった気がします……っ
微妙どころではないのですがッ……(汗)
闇討ち?(泣)
そのような感じでごじゃいますっ(反省)
ごめんなさい………(汗)>脱兎