犬の瞳は100万ボルト
パタパタと絶えまなく振られる、ふわふわのしっぽ。
潤んだかのようにも見えるキラキラとした黒い瞳。
あたたかそうな茶色の毛…………
甘える視線がカイルに絡む…………
――――――無論、カイルに抵抗などできなかった。
「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…(怒)」
「くぅ?」
昼下がり、晴れ渡った空の下、カナタの不毛なガンとばしが行われている。
相手は小犬。カイルが拾って来たのだ。
まだ子供過ぎるのか、カナタの睨みに首をかしげるばかりである。
地面に座ったカイルの膝の上で、昇ったり降りたりと忙しそうであった。
「vvv」
ふわふわなその小動物をカイルは嬉しそうな目で見守っている。
くるりと巻いたようになっているしっぽ、少し垂れた耳、鼻と口の周りは少し濃い焦げ茶に染まっており………
「かわいい………v」
「きゅうんv」
「くぅーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!(怒)」
視線で殺す事ができると言うのなら、その小犬は即死していたかもしれない。
「きゅうv」
「ひゃ、」
茶色の小犬がカイルの胸の辺りに手をかけて精一杯伸び、カイルの頬をなめる。
カイルも声をあげたが表情は嬉しそうだ。
が、これにより少年からものすごい殺気が発せられた。
「――――――――――――――決闘です。」
「え?」
プツン、と何かが切れたのか、カナタはゆらりと立ち上がる…………カイルと小犬はそれをきょとんと見ている。
「そこの犬に申し込みますッ!!けっと………」
「ムムーーーーーー!」
ゴスッ!
後頭部に飛行物体が激突し、カナタの身体はスローモーションで地面に倒れていった………。
「あ、ムクムクv」
「ムム〜〜〜〜〜v――――――ムムッ!?」
ムクムクは驚きの声をあげる。――――――何故なら、いつもは彼がいる場所(カイルの腕の中)に他の生き物がいたからだ。
「?」
カイルはそんな事は知らず、いつもと様子の違うムクムクを心配げに見ている。
「ム、ムムムーーーー!!」
「きゅ?」
「ムムムムムーーーーーーー!!」
「くぅ〜ん…」
「むぐぐ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!(怒)」
最後のは、ムクムクではない。地面に倒れ込んだままの少年のモノだ。
険悪なムード(?)の2匹の間で身体を起こして叫んだ。
「だーーーーーーーーーーーっ!!!もう決闘です!!カイルさんの愛をかけて決闘です!!バトルロワイヤルですっッッ!!やるぞコラーーーーーッッッッッ!!!!(キレ)」
「ムーー!!」
「きゅ〜んっ……」
叫ぶ2匹(と戸惑う1匹)に、カイルの制止の声が響き渡るのだった。
「……………」
「……………」
「ム〜〜〜…」
「きゅ〜……」
地べたに正座したカイルの左右前に3匹がそれぞれくっついている。
「カナタ、」
「はうあ〜〜っっ…」
左から抱き着いているカナタにカイルは呼び掛け、引き離す。
それから、右肩にくっついているムクムクを無言で抱き取り、膝の上に移す。
「ム〜v」
「きゅうん」
前からへばりついている小犬の隣だ。
「…(コンチキショウッカイルさんの膝にッ!>怒)」
「何で喧嘩するの、このこの事嫌いなの?」
「む〜〜〜〜嫌いじゃないですけど……(汗)」
思わず正座で向き合う2人だ。
「わん」
ふわふわの茶色い物体に視線を落とす。無邪気な様子に、カナタは目を細めた。
自慢ではないが、この少年もよく動物を拾ってくる。それはもう、落ちている物は拾ってくる。
その辺りから、カイルはふに落ちないらしい。
「ムクムクとも友達ですけど〜」
「ム〜」
「うん、」
じゃあ、なんでと問いかける前に2匹は、すっくと立ち上がった。
「カイルさんが絡むと別なんです!!!!!」
「ムー!」
「?」
わからない様子のカイルだ。
「すべてがライバルなんですッッッッ!!!!!」
「ムー!」
叫ぶカナタに、同意の声をあげるムクムク。
「ゆえに決闘あるのみなんですーーーーーーーーーーーー!!!!!!(怒)」
「ムムーーーーーーーー!!!」
カーン!
第2R開始☆
〜同盟軍兵士のコメント〜
あれは、もはや誰にも止められない男の(?)戦いだった…………
数カ月後
「わん!」
「どりゃーーーーーー!!」
「ムムーーー!」
カイルの拾って来た小犬は成長し、立派にカイル争奪戦に参加できるようになったと言う……………
「も…、勝手にして……………(汗)」
少し『諦め』と言う物を覚えたカイルだった。
えんどぉ〜
や、もう、訳のわからなさ大爆発でした。
ばんざーい!
少しフォロー?
「……………」
暖かい風が草の匂いを運ぶ。
カイルは日溜まりの心地よさに目を細めた。
隣には『茶色の一団の塊』、
幸せのカタチ。
「カイルさ〜ん………」
「ムム〜………」
「きゅうん…」
一緒にいると、幸せ。