謎の騒動勃発事件

 

 

「あ〜〜〜暇です〜〜〜〜…。」

 

その日、同盟軍リーダーカナタはとてつもなく退屈していた…。

そう、それはもう、その境地に至るまではありとあらゆる騒動を起こしまくってからのこのセリフであるが…。

「なんか面白い事無いですかね〜?」

 

「ありましてよ」

 

カナタがそんなつぶやきを漏らした瞬間、ほほほほほほほ!という笑い声とともに突然部屋に高い声が響いた。

「はっ!あなたは……!!」

少年は一応お約束的に驚いた表情をして、その声がした方向…カーテンの影の辺りを見る。…ただし、椅子にもたれて、くつろいだままであるが。

「お久しぶりですわね」

――――――ふうわりとカーテンが膨らみ、そこに独りの女性が姿を現せた…。

そして、その姿に少年はビシィッと指差し、正体について語りだす。

「やっぱり!故ブタさん好きの狂皇子の妹で、一応僕のしんゆーであるような無いような優柔不断被害妄想癖抜群で暴走ぎみな婿養子男ジョウイの奥さんで僕の覗き仲間であるジル=ブライトさんですね!」

「その通りですわ」

長々と説明台詞を叫ぶ少年も少年だが、それにあっさり頷いてみせる方も見せる方だ…。

「所で、今日は何の用事ですか〜?覗きのお誘いですか?」

カナタは、かなりわくわくとした表情で尋ねている。

「いえ、実はわたくしの方も退屈で退屈で仕方ありませんでしたの…。そこで、ある企画を思い付いたものですから、お誘いに来た訳ですの☆」

にっこりと微笑むと、ジルはピラリと謎の紙を見せた。

少年は椅子を引き、ジルと席に座らせると、自分の席に戻ってその紙に目を通す……

そして、暫くして…

「……………面白そうですね。」

「でしょう?」

キラリ…と目を輝かす2人…。

すでに、企画は開催決定したようである。

 

「じゃあ、これはこーした方がいいんじゃないですか?ここの設計もこーこーこんな感じで……」

「まあ、いい案ですわねvでは、ここもこうしてこのように…v」

「おおっ!なんか残酷な中にも一種のロマンを感じさせますね、それは!じゃあ、それなら僕もこうこうこうこう…!」

「まあああ!」

…会議はかなりの盛り上がりを見せたらしい。

 

「………」

2人の暗躍を見つつも、しがない雇われ忍者であるカゲ(ジルを連れて来た)は見てみぬ 振りをきめるしかない…。

そうして、自分は参加しないでおこうと心に誓うのであった…。

 

数時間の熱の入ったディスカッションの後、2人の画策はすんだらしい。

「じゃあv建設の為の資材はこっちが受け持ちますから、人件の方はそっちに任せますね☆―――一日でグリンヒルあたりまで運ばせますから、三日後くらいに開催しましょうか?」

「ええv二日で完璧な物を仕上げさせてみせますわv楽しみにお待ちしていらしてね☆」

うふふふふ…vあははははvと恐怖を感じさせる笑い声が同盟軍リーダー自室から響いていた…。

 

 

 

そうして三日後―――…

 

 

どーーーーーーん…

「「「「「…………」」」」」

………そんな音が聞こえる程に高くそびえ立っている建築物を前に、両軍はそれを見上げたまま固まっていた…。

そう、巨大な悪の本拠地と言った造りの謎の岩の建物が、以前にはなかった場所に立っていたのだ…。

円錐型のそれは、どこかの絵本の中にある悪い魔女に閉じ込められたお姫さまのいるという塔を彷佛させる…。――――どこをどう見ても怪しい。

「いっ…いったいなんだぁっ!?」

まだまだ青い、青いフリック氏がまず最初に叫んだ。

何故だか同盟軍のものたちは戦いをするには、かなりの少人数でグリンヒルに向かわされたのだ…。(しかも、夜中に)そして、指定された場所にあったのがこの建物。

――――とてもではないが、展開についてゆけないのだろう。

ほとんどの物がいまだ呆然としている…。

そして、それはハイランド側も同じなのか、同じような表情で塔を見上げるばかりだ…。

 

そんな時、その建築物のてっぺん(ライトアップ付)から、かなり聞き覚えのある声が響いて来た。

 

「あはははははは!」

「ほほほほほほほ!」

 

この声は……!;と誰もが嫌な予感を覚えた。

そして、その思いを打ち消したくとも、うち消せなかった為に、両軍を代表して、フリックとジョウイがその声の主の名を叫んだ…。

「リーダー!?」

「ジルッ!?」

…なんとなくこの2人、貧乏くじを引くタイプであるように思われる。

 

「なんでカナタがっ!?」

「ああっ!大人しく天幕の中にいらっしゃると思っていたカナタ様がいつの間にか身替わり人形にっ!?」

「いったいなんでこんな所にっ!?」

「ジル様!?」

わーきゃー!と見事な程に、パニック状態に陥る両軍…。

そんな中、塔の上からは両軍の事態を意に介していない声が響いて来た。

「あーーーーあーーーー。皆さん良く聞いて下さい〜〜。今からゲームスタートですからね〜。」

「この『素敵にデンジャラス☆恋は迷宮ラビリンス〜命がけで燃えよ!〜』に皆さんで参加してもらう事になったのですわv」

ネーミングがチグハグなのは、おそらく2人の合作で作られた物だからなのだろう。

―――のんき…というかマイペースな2人の前に予想通り立ちふさがった物がいた。

 

「いい加減にして頂きたいッ!そんな催しに誰が参加すると言うのですかッ!!」

 

同盟軍胃痛持ち軍師シュウである。

その彼が堂々と正論を叫んでいるのだが………少年はまったく無視した

「なお!勝った方のチームには僕から『オレンジドラゴン軍主力配置部隊編成表とその力配分傾向』について書かれた書類をプレゼントですv」

「わたくしからは『城の見取り図』と『城内の兵の配置図』を進呈ですのv」

 

―――――どちらも、敵側に渡れば大打撃な代物だ…。

 

「わーーー!軍師殿が倒れたぞーーーーーっ!!(汗)」

「担架持ってこーい!」

「ジョウイ様が〜〜〜〜〜っっっ!!(汗)」

まさに地獄絵図だ…。

そして、それを高い所から眺めている2人はいたって呑気な物で…

「勝たないと怒りますよー!『クルシー愛の囁き100選』(ジル著)がかかってるんですからーーー!」

「あなた〜負けたら承知しません事よ〜!『主坊愛のメモリー集(R指定)』がかかっているのですのよ〜v」

やはり、本命の賞品はやはりそれらしい…。

「てっぺんにあるこの旗をとった方のチームが勝ちですからねー!」

「では、わたくし達はお茶の時間にしますので、これで失礼しますわv」

「いいですね〜」

あははははは!ほほほほほほ!と笑い声が暗闇の中に響く…。

呆然とするしかない一同ではあったが、事の重大さを理解するにつけ、再びパニック状態に陥る。

 

 

 

-ハイランド側-

「うっ…うう(汗)あ、後は頼む…」

担架に乗せられたまま、胃痛で苦しんでいるジョウイは最後の言葉とばかりにそんな事を言い残し、退場してゆく…。

それによって、俄然張り切っている者がいた。紅色の髪の青年…シードである。

「うっし!なんだかよくわかんねーけど行くぜ!!」

「まて、シード。不用意に動くな」

それをクルガンが止めようとするのだが、そんな事でこの猪突猛進なシードが止まるはずもない。

「とにかく行ってみねー事には始まらねぇだろっ!」

勢いこんで塔の中へと駆け込む。どうやら、シードのこの行動で、ハイランド側は突入する事になったらしい。

そして…

 

「ぎゃーーーー!!(汗)」

 

 

 

-同盟軍側-

ハイランド軍が謎の建築物の中に侵入しているのをみつつ、同盟軍側は取りあえずどうするか考え込んでいた…。軍師が倒れている事もあるし、中からどんどんと謎の怪音と悲鳴が上がっている事からの行動である。

―――しかし、幾ら危険とは言え、見ているだけではどうする事も出来ない。なんらかの行動に出なければならないとはしりつつも…

「で、どうするんだ?」

「どうするっていったってなあ…(汗)」

う〜ん…と一同は考え込む…。

あのリーダーの作ったダンジョンだ…。生かさず殺さずの卑劣な罠の数々が仕掛けられている事は間違いない。

 

「あの……外壁を登るのはどうでしょうか?」

おそろそると兵士Aがビクトールとフリックに声をかける。

「外、か…。そうだなぁ…」

「外か…(汗)う〜ん…」

しかし、その案にも渋い顔の2人である。

「?」

一体何を悩む事があるのだろうと兵士Aは思ったのだが…その疑問はすぐに明かされる事となった。

 

…そう、彼の同僚のギャーーー!!という絶叫によって。

 

「まあ、ベンジャミンv人肉なんて食べちゃいけませんわよ☆」

「へーあれ、ベンジャミンっていうんですかー。他のはなんて言うんですか〜?」

グゲエッ!と謎の怪鳥(複数)が鳴いているのを見て、呑気な声が塔の上から上がっている…。

どうやら、外壁からの侵入者を襲わせる為の鳥(?)らしい…。ついでに言うと、ジルのペットなのだろう。

「兵士Bーーーー!!しっかりしろーー!兵士B〜〜〜!!(汗)」

「もっ…もう俺はダメだ……最後に一つ頼みがある……っ!俺の生きざまを家族に伝えてくれっ…!」

……とりあえず、致命傷にはなっていないらしいが、塔の四分の一の高さで落とされた兵士Bは担架で運ばれて行っている…。

しかし…

「「「「「…………」」」」」

 

どうしようもないな…

 

そんな結論が早くも同盟軍全体に下されていた…。

「しょうがねえ…特殊コマンドに出陣願うか……」

 

 

 

―――――――特殊コマンド事、トランの英雄、カイル。

 

「………」

カイルは怒っていた…。

そう、事のあらましと、賞品(愛のメモリーの方)の内容について説明を受けて…。

後になってビクトールらの語った所によると、「解放軍時代並みだった…(汗)」という事らしい。

「フリック、ビクトール…」

ゆらりと陽炎の様なオーラが揺れ、カイルが口を開く…。

「な、なんだ、リーダー…じゃなくて、カイル。(汗)」

目が怖い…。誰もがそう思っていた…。

「中に入って囮と、シードさん達の救出よろしく」

「ああ…」

「わかった」

当然のような命令には、有無を云わさぬ迫力がある。

「ルックと…他の人たちは弓で援護を、」

「わかったよ。」

しぶしぶというか、嫌々というか…つまらなさそうな顔でルックは頷いて呪文詠唱の準備を始める。

「所で、何の援護をすればいいのさ?」

どこかわかっていて質問している、と云うような口調でルックは問いかけた…

「………」

 

カイルが目線で示したのは、塔の周りにいる怪鳥達であった…。

 

 

 

 

「っなんでこんなとこに網があるんだよっ!(怒)」

「………」

罠があるのは当たり前だろう、と口には出さずに、網にかかったシードを見つめるクルガンだった…。ちなみに、その手には『プレゼントフォーユー☆BYカナタ』と書かれたメモがあったりする。どうやら、シードの行動パターンは計算済みだったらしい…。

「あ〜…もうどうすっかな〜(汗)」

こんな罠だらけじゃ、てっぺんまでいけそーにねえし。とシードはぼやく。

「………外で何か動き始めているようだ。この分ならばもう時期事態の収拾がつくだろう。」

外の方へ視線を向けてそうクルガンは呟いた。

「へ〜…ってか!どうでもいいからまず助けろよっ!?」

「………そうだな」

口の箸だけで笑みを浮かべるクルガン……。

 

――――彼が何を考えたのかは、知る由もないと云っておこう。そうしよう。

 

 

 

一方塔の上…

 

「全然辿り着く気配ないですね〜。」

「そうですわね」

 

バサバサバサ!

 

呑気にお茶を飲んでいたカナタとジルの背後から大きな羽音が近付いて来た…。

「―――――カナタ」

そして、声。

「はうっ!その声はッ!!」

少年が振り返った先には、フェザーに乗って塔の上までやって来たカイルの姿があった…。

そして、その背後には風の紋章が発動している音や、矢が飛び交い、とんでもなく殺伐としたバックをつくっている…。

「え、えーっと…(汗)」

にこっと笑みを浮かべたままのカイルに、カナタは嫌な予感をひしひしと感じ、どうしようもない状況に陥っていた…。何も喋る事ができない…

そして、暫くしてから少年は口を開いて……

 

「飛んでくるのは反則ですよv(汗)」

 

―――――――――――怒りのライドオン攻撃が炸裂した結果、カナタがどうなったかという事は言うまでもない。

結局この勝負は引き分けとなったらしい。

 

「暇は潰せましたし、まあいいですわv」

 

…もとい、ジルの勝ちかもしれなかった…。