バレンタイン騒動
2月14日………………。
それはある意味、Xデーとも言えるかもしれない………。
「…………幸せなカップルが憎いです〜〜〜」
おどろおどろと地べたをはうように、低音なうめき声が、書類に埋め尽くされた幼い同盟軍リーダーの口から発せられる。
城内からはバレンタインデーと言う事で、甘いチョコレートの匂いと甘い恋人達のさわぐ声(一部絶叫あり)が聞こえてきて、カナタささくれたった神経を逆撫でしていた。
そしてついにプツンときれる現リーダーだった。
「何で僕だけイチャイチャラブラブできないんですかッッ!!大体子供にこんなにも仕事まわすなんてっ!!絶対児童労働基準法に引っ掛かりますよっ!!!それになんでカイルさん帰っちゃうんですかーーーッッ!!バレンタインデーだからずっと一緒に居てほしかったのに〜〜〜ッッ!!」(ワンブレス)
もともとは自業自得とはいえ、またもや部屋中に書類が山積みになってしまったカナタは死刑執行人と書かれた黒いローブを被っている者たち――ちなみに手には鎌を持っている――に見守られつつ泣きながら仕事を片付けていた………。
「絶対僕って不幸ですっっっ!!!カイルさんからチョコ貰えないとしても!せめて僕の方から渡したかったのにーーーッッ!!」
ぎゃーぎゃーと叫びながらも、『深夜にカイルさんの所に行って、カイルさん自身をプレゼント☆してもらうのもいいですよね〜vvv』とか『子供』にしては不穏な事を考える余裕があるカナタだ…。
そしてその頃のカイル。
「……………」
カイルはすっかりバレンタインの雰囲気に満ちた本拠地の前に居た。手に可愛くピンクのリボンでラッピングされた小さな箱を持って、
本拠地からはチョコレートの香りが漂ってくるが、それ以上に絶叫している声の方が多い気がして中に入れないのだ。
時間は昼過ぎ。
カイルは意を決して本拠地内に足を踏み入れる。それが正しい判断かどうかはわからないが………。
「フリックさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んvvvvvv」
「どわあああああああああああああっっっっ!?」
ニナに追い掛けられているフリックの姿がまず最初にカイルの視界に飛び込んできた。
他にもシエラがクラウスにチョコを渡そうとしていたり、ヒックスがテンアガールに『ほしいのっ?ほしくないのっ!!』と怒鳴られていたりもする………。
「………」
カイルは見なかった事にして階段へと足を伸ばす
「どうしよう…かな?」
今日が好きな人にチョコレートを渡す日と聞いてここまでやってきたが…………、
『カナタが喜ぶかな…?っておもっただけなのに…』
なにやらバレンタインと言う物を軽く見すぎていたような気がして、何故か階段を上る足が止まってしまう。
『やっぱりやめとこうかな……』
「あっ!カイルさ〜〜〜ん!!!!!」
そう考えた時に丁度3階の所からにナナミの声が聞こえてきた。
こんにちわ〜〜♪と挨拶され、それに返事を返しながらカイルはチョコレートを懐に入れる。さすがに見られるのは恥ずかしいらしい、
てくてくと階段を上がりきってナナミの側まで来た時、強いカカオ臭とアーモンドの香りがしてきた。そして、視界には『妙な物』が映る。
―――これによって、カイルはまた『バレンタイン』を軽く見ていた事を認識した…。
「………なに、してる、の?」
少し喉で声が引っ掛かったが、言葉はちゃんと発せられたようだ。
「え?バレンタインのチョコレートのラッピングっ!!!」
何か変かな〜?と首をかしげる姿は普通の女の子だが、その『チョコレート』が問題だった。
「『アーモンド』入れようと思ったの!でも『アーモンド』がなかったから『せいさんカリ』っていうの入れてみたのっっ!!アーモンドの香りがするんだって♪」
ぐちょぐちゃっ………
「そう、なの…?」
ぎゅめうめごにょ……
「そうなのっ♪」
うねうね…―メケメケーーーッッ!!
「……………」
『青酸カリ』は毒薬だということよりも、ナナミ曰く『チョコレート』だという生命体が包装紙の中で暴れている事の方が気になる(←当然)カイルだった。――それをナナミが平然とラッピングしている事も、
「もー!ちゃんとリボン付けさせてよーー!!―――あ、そうだカイルさんにも渡さないとv」
どうぞ♪とカイルに比較的おとなしそうなチョコを手渡す。
「ありがとう…」
少し心臓が嫌な脈を奏でていたが、カイルはなんとか礼を言ってその場から立ち去る。
手の平サイズのその生物をどうするか本気で考えてしまうカイルだった。
取り敢えず自分の持ってきたチョコと同じく懐にしまおうとするが、念のため自分の持っていたスペアの箱に詰めてからしまった。中身を考えるとかわいいブルーのリボンが異様に見える。
「…………」
今日は一体何の日だったっけ?
バレンタインデーってこういう日なの?
カナタの部屋からゾロゾロと黒ずくめの怪しい者達(しかも血のついた鎌を持って、死刑執行人と書かれた)が、山のような書類を引きずって出てくる。
黒ずくめの男一人が扉の前に立ててあった『面会謝絶』の看板を取り外し、別の黒ずくめの男が『どうぞ』とカイルに動作で示す。
特に危険じゃないと思うと判断したカイルは、頭を下げて通り過ぎた。
―――とんとん
「カナタ、入るよ?」
遠慮がちに声をかけると、音を立てないようにドアを開く。
「……………」
中は壮絶な風景が見えた………―――血の飛び散った床や壁。辺りに散乱する『おくすり』の空き瓶の山。死んだよう椅子にもたれている少年。
一見怪しい犯罪現場のようだが………まあその通りだろう。相変わらずよくわからない同盟軍だ…。
イヤ〜な汗が背中を伝うが、カイルは恐る恐る部屋に足を踏み入れた。
「―――カナタ…?」
肩を軽く叩いてやると、カナタの身体はズルっと机の下に滑り落ちた。
「くかーーーーーーーっっっっっ!!!!!くーーーーーっっっ!!!!!!!」
「……………」
そしてそのままいびきを上げはじめるカナタだ。
ほっぺたはインクで汚れ真っ黒だが、(ついでに服には多数の血痕。)生きてはいるらしい。
変な体勢で椅子に絡み付いているのを外して、カイルはなんとか少年を机の下から引きずり出し、頬の汚れを拭ってやる。
「……………」
何やら微笑ましい気分になるカイルだ。
「カイルさ〜〜〜ん…♪♪………」
「………」
ほっぺたに当てていた手を、ガシイッと掴まれしゃがみ込んだままの姿勢で動けなくなるカイル。
「どうしようかな…?」
起こすのもかわいそうなので、カイルは床に座る事にして腰を降ろす。
「…………」
する事もなくて、辺りを見回すと、明らかに書類ではない落書きの紙が飛び散っているのがみえた。側にあるものだけでも約十枚はある。
こんな物を書くくらいなら仕事をしろと言った感じだ。
カイルは何となくそれらを集めて目を通す。
『シュウ絶対コロス…』
血で書かれたようにぐちゃっとした字体が、相手の心の内をよく現していた。(評価)
取り敢えず見なかった事にして、カイルは片手で他の紙を取る。
『ちょこれーと…』
ぺら
『助けてーーへるぷみ〜』
ぺら…
『カイルさん!(イラスト付き)』
「…………」
紙を床に戻してカイルはカナタに目をやる。相変わらずよくわからない少年だと思いながら…。
「カイルさ〜〜ん…♪好〜きで〜す…vvv」
幸せそうな寝顔でわきわきと空を掴もうとするカナタ。
「…」
言われ慣れているとはいえ、頬が熱くなるカイル。相手が寝ているだけに顔が表情に出てしまうようだ。
床に背けた目に、取り残した紙が映る。そこにはデカデカとこう書かれていた…
『カイルさん(死んでも)愛してます!!』
「…………」
もう、なにやら負けた…といった感じだ。
「―――、」
誰にも聞こえない程の声で何か呟くと、カナタに顔を近付ける。
いつもは白い肌を真っ赤に染めて、カイルの唇がカナタに重なる………
「ええっっっっっ!!!!!僕にですかッッッッ!!!!」
夕方頃、目を覚ましたカナタが、カイルの姿を見て狂喜したのはもちろん。思っても見なかった物をプレゼントされもはや鼻血を噴き出しそうな勢いである。
「うん…、バレンタインて聞いたから…」
カナタに掴まれっぱなしで跡が残ってしまった手首をさすりつつ、カイルは照れて口籠る。
「わ〜いvラッピングも青くてかわいいです!!!!!」
「………え?」
たしか自分はピンクのリボンで包装したはずだとカイルは悩む、懐にしまったのは自分の物と―――
「開けてみていいですか〜〜〜♪♪♪」
「カナタちょっ…まっっ!!!!」
「は?」
カナタはカイルの制止を聞く前に、すでに開けてしまっている。
そう、禁断の箱(パンドラボックス)を……………
「うっぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!????」
その後、ナナミが同盟軍のメンバーに配ったチョコが合体のち、巨大化し、カナタが指揮を取るオレンジドラゴン軍と戦った…。その激戦は深夜までに及び、2/14が終わったころに仮死状態にまで追い込む事が出来た………。後に同盟軍メンバーはこう語った…『奴はハイランドよりも厄介な相手だった、』と………。
結局、毎度の事ながら幼い軍主がどうその料理(=生物)を処分したかは知れず、ただ『ぼっちゃんラブ』城の地下に記録として、Xファイルに書き込まれただけだった………。
完
☆あとがき=言い訳☆
いいたい事はたった一つ………『ごめんなさい』!!!!!
はう〜〜〜どこがどうラブラブなんでしょうね〜〜〜〜っっっっ!!!!!
めずらしく海月があとがきを書く時……そう、それは大謝りする時です☆(死)
坊→主、らぶらぶv → 生物兵器との戦い!
………どこがどうなってこうなったんでしょうね〜……いや、本当に。
―――――一応ラブラブっていう事でっっ!!ごめんなさいっっ!!>鬼ダッシュ!!
「僕も…」
たった一言 誰にも届かず消えた言葉――――…