ひな祭り

 

 

 「ひな祭りですー――――!!!!」

 大声で叫びながら自室に走りこんで来るカナタ(15)だ。

 桃の木を幹ごと引きずり、廊下中に泥や葉っぱを撒き散らしつつも、自室にいる愛しい人の元にやって来た…。

 

 「カイルさんっっ!!ひな祭りなんですよっ!!」

 「カナタ…それ…」

 カイルは今まで読んでいた本―――『年中の行事の全て』―――を閉じ、大木とまでは言わないが、木を担いだカナタの方を見る。

 「あー、これナナミに頼まれたんです。『桃の花とって来てっ!!』って。」

 別に木ごと持って来いと言っていないと思われるが、ナナミの事だ何を言ったかはわからない。

 「えーっと、そうそうっ!『ひな祭り』なんですっ!!」

 「『ひな祭り』って…女の子の祭りだよね…?」

 浮かれているカナタをカイルは疑問に思いつつも尋ねる。

 そうすると少年は彼特有の子供スマイルで答えた…。

 この少年がこういう表情をする時はロクな事が無いのだが、カイル自身気付いているのかいないのか…。

 最早諦めているのかもしれない。

 「えへへへへー――――v特別に参加させてくれるんです♪」

 「?」

 ゴソゴソとポケットを探るカナタ…。

 「『おひな様』として―――――♪♪♪」

 ズルッと取り出されたものは―――――

 

 「カナタ……」

 「はいvなんですか?あ、カイルさんはおひな様でー――僕がおだいり様なんですよ―――――vvv」

 煌びやかな衣装。

 ぞくに十二単というものだろう…。

 ポケットの容積と衣装の質量が全然違っているが、そんな事ぐらいはどうでも良い事のようだ…。

 更におだいり様の衣装までも出てきていたりする…。

 

 「着るの?」

 「はいvv」

 「僕が…?」

 「はいvvv」

 「帰って…」

 「ダメです♪」

 

 会話している間、カイルはじりじりと後退していたのだが、カナタに飛びつかれ、脱出は失敗した…。

 「ちゃんと鬘もあるんですよっ!!」

 なくても綺麗ですけど〜vvvなどとカナタは暴走している……。

 「僕がメイク(?)しますからっっ!!」

 カイルに抱きつき、ぐいぐいと頭をすり付けながら謎な説得を開始するカナタ、必死なのは確かだろう。

 「お願いですー――――っっ!!!」

 「………」

 「(あ〜v相変わらず腰細いな〜〜〜vv)」

 「………」

 観念したようにカイルは軽く溜息を吐いた。

 

 「は―――――――――――――vvvvvvカイルさん綺麗ですー――――♪♪♪」

 「………」

 うっすらと白粉と紅と鬘をつけ、日本人形のようにさせられたカイルだ。

 もう最近ではこんな事にも慣れつつあるカイルだったが…―――問題は十二単だ。

 

 「カナタ…」

 「はいvなんですかっっ!!」

 何でも言って下さい〜vと尻尾を振らんばかりに飛びつく。

 「これ…重いんだけど…」

 十二枚にも重ねられた衣装はずっしりとカイルの身体を押さえつけていた。

 慣れない衣装な上にこの重さ、どうにも動けそうになかった。

 「だいじょーぶですっっ!!」

 それを待ってましたと言わんばかりの同意語だ。

 

 

 

 「カナタ―――!おそーーいっっ!!あっ!カイルさんキレイッッ!!」

 「ごめ―――んっ!!そうだよね―――vvv」

 「………(汗)」

 

 おだいり様、おひな様をお姫様抱っこで運ぶの図…(+桃の木)

 

 何はともあれ、おだいり様がおひな様にくっつきすぎている以外、『ひな祭り』は桃の花が香る中、比較的平和的に行われたそうだ…。

 

 

 

おまけ

 カナタ:カイルさんv楽しいですね―――♪♪♪[あられを食べつつ]

 カイル:………うん。

 カナタ:どうしたんですか???

 カイル:…『ひな祭り』ってこういうのだっけ?(周囲の乱痴気騒ぎを見つつ)

 カナタ:あられ(つまみ)を食べて甘酒(酒)飲むんだからあってるんじゃないですか〜?

 カイル:………(途中でビクトール達が参加した事が間違ってたんだろうな…)

 カナタ:そんな事よりカイルさん『あ〜んv』[あられを持って]

 カイル:………あ〜ん…。[口を開く]

 カナタ:♪♪♪(かわいーですっっ!!次はカイルさんに僕がしてもらいますっっ!!)

 カイル:………(もういいやっっ///)(赤面)

 

謎のままEND  by海月