※この話は、ゴキを題材に入れた作品です。
 ヤツの話を見るのも嫌!聞くのも嫌!;
 そんな話を見てゴキが出てきたらどうすんの!という方は、退避してください。
 ちなみに、海月も書いててヤツが出たらどうしようっ;と怯えました。

 

 

 

 

 

彼と彼と彼の事情〜騒動編〜

 

 

その時、ヤツは現れたのだ。
真っ昼間から堂々と、山賊部屋の片隅に。

初めに見つけたのは少女だった。
少女はただのんびりと、自らの兄貴分と、この城のリーダーである王子の会話を眺めていただけだというのに…

 

「っ……きゃああああああああああああっ!!;」

 

「何だどうした!?」
「どうしたの!?」

突如上がった悲鳴に、2人は慌ててそちらを向く。…ちなみに、実兄は留守である。

「ロイっロイー!早くアレ倒してよ!!;」
「は?アレ…ああ、なんだゴキブリかよ…;」
「早くーっ!!;」

そう、
黒光りする身体を持った、ヤツが部屋をカサカサと歩いているのだ。

「まさかこんな小奇麗な城にも出るとはなぁ…前はしょっちゅう見てたけどな」
「絶対あの捨ててないゴミのせいだからね!?;」
「ロイ、ちゃんとゴミは捨てないとダメだよ?」

そのやりとりをほやんと見ていたカルム(表)も、部屋の片隅にまとめて置いてあるゴミを見ると、同意するように頷いた。
で、ロイは。

「…っ…(アンタの分のゴミも入ってんだよ!;)ッ…ああ、わかってるっての…!;」

カルム(裏)が遊びに来ると、その持参品でゴミが増える。(持って帰らないから)
しかも来るのが夜なので、朝までそれは溜まり、朝になればなったで捨てるのが面倒でそのまま残る。悪循環だ。
…しかし、それを今相手に言ったところで、どうしょうもないので、ロイはさっさとその不快な虫を倒しに向かう。

「何か潰すもん潰すもんっと…;」
「王子様…よく平気だね、苦手そうに見えるのに…;」
「え?何が…?」

フェイレンは避難を兼ねてカルムの横まで移動すると、そう言った。
…が、相手は首を傾げるばかりだ。
フェイレンの言葉を継いで、ロイが応える。…手にはこれでいいか、と木片が握られている。

「何がってゴキブリだよ、ゴキブリ。油虫。」
「ゴキブリって…その虫?」
「「………」」

きょとんと黒光りするソレを指差すカルムは…全く、普通の虫を見るような態度だった。

―――視察やら何やらで、ハエやらネズミやら蚊やらミミズやらは見ていたのかもしれない…いや、その中にはゴキブリもいたかもしれない…しかし、彼は知らないのだ。
生活の場に潜む奴らの恐怖を。

…いや、別にそれが悪いとかそういう訳ではないが、何か生活の差を見せ付けられた気分になっただけだ。

「は〜…;(何か疲れたぜ)…まぁ、とっとと倒すか…」
「っ!ロイ!!気をつけてー!!」

その時、フェイレンが敵の不穏な動きに気付いて、声を上げる。
そう…その時ヤツは――飛翔したのだ!

「え?」

カルムに向けて。

 

少女は悲鳴も出せずに硬直し、
カルムは目前に迫り来る虫に、本能的かつ生理的な嫌悪を爆発させた。
蒼い目に映る、虫…虫、虫…ッ!!

 

 

「ぴっ、ひ…ぃゃぁあああああああああああああああっっ!!;」

 

 

絹を裂くような悲鳴を上げた。
可憐な乙女のごとくの悲鳴だと、その場にいた2人は思った。
そして、そんな声には正義の味方が駆けつけるというのが、常套である。
ちなみに、ゴキも声に驚いたのか、空中で着地点を変更して床に着地した。
その時だ。

…ドドドドドド、バキィ――ッ!!

部屋の扉が蹴り破られたのは。
外から踏み込んできたのは、ミアキスだった。ドアを蹴り破ったままの体勢で、手に構えていた小刀を素早く投擲してくる。
1本は、ゴキに。そして、もう1本は…ロイの真横に。
全員が腰を抜かした状況だった。
無言のままでそこまでやったミアキスが、とても恐い…。

「…ロイく〜ん?王子の悲鳴が聞こえましたけど、何かしましたかぁ〜?」
「オレじゃねェ―――!!;」

 

 

 

で。

 

 

 

 

「じゃあ王子はゴキブリに驚いて悲鳴を上げただけで、ロイ君に何かされて――『今すぐ目の前から消えろこのゴキブリ野郎☆』…とか言った訳じゃなかったんですねぇ〜!勘違いしてすみませんでした〜ロイ君、危うくちょん切っちゃう所でしたね〜♪」
「うん、違うよ;」
「てか誰もそこまで言われたことねぇよッ!!;」
「それよりあの床に張り付いたゴキブリどうにかしてよ〜っ!!;」

 

一応の平穏は取り戻せたものの…この時から、カルムはヤツの恐ろしさを知ったという。

 

 

 

(何か王子がゴキとか知らなかったら可愛いなぁ〜と思って書いた。 
これから後、苦手になるともっとイイ。←オイ。 )