聖なる夜

 

 

ジングルベーーーー!ジングルベーーーーー

 

「すっずが!なるーーーーー♪ってゆー訳で、カイルさん!さあ!!」

「『さあ』?」

「これをv」

 

現在、城中にクリスマスムードが満ちあふれていた。しかもどうやって作ったのか、イルミネーションまでも謎な形に取り付けられ、色とりどりの輝きを放っている。すでに辺りは薄暗くなっている為に、その光は美しいとしか言い様の無い光景だ。

そんな中で、カナタが『これをv』と言って差し出した物は、違和感のあるもの(いや、ないものと言った方がいいかも知れないが)だった。

 

 

サンタクロース服何十着v

 

 

「着て下さいvどれか☆」

「………」

様々なデザインの赤い服(一応帽子は全部セットのようだ)……………しかもどう見ても女物…。

「カナタ……」

「ミニスカートのにしますか!?でも他の人に見せるのは嫌ですから部屋で僕だけに見せて下さいっvvv」

暴走気味な少年にカイルは無表情に問いかける。

「着る意味は…?」

「ないですvてか、僕の趣味で…」

「す」まで言わせないままに、カイルの棍がカナタにめり込んだ…。

「…冗談ですっ!本当は同盟軍メンバーinクリスマスだプレゼント(ちなみに、軍の予算から)大作戦の為の衣装ですっ!(泣)」

「………プレゼント配り?」

カイルは首を傾げて問う。少年が珍しくまともなイベントを行うと言っている為驚いたのだ。(しかし、その驚きにかまけて、肝心の『女物』という点を忘れさせられている…)

「そうです!日頃お世話になっている人に!プレゼントを配ってお礼参り……お礼をしたいんです!」

「………(御歳暮じゃないんだから…>汗)」

と思いつつも、カイルには既に抵抗する意志がなくなっていた…。

 

 

 

「…………」

結局着せられてしまった……。

カイルは疲れた表情で立ち尽くしていた……。

短く赤いふわふわとした外套(白いボンボン付き)…。そして、なんとか膝までは確保した上と同色のスカート…。裾の周りは白いふわふわがついている…。そして、赤いロングブーツ(わた付き)

完璧な格好だ…。(色々な意味で)

「…………」

「カーイルさんv」

シャンシャンシャン♪と鈴を鳴らし、配る為のプレゼントを取りにいっていた少年が戻ってくる。

しかし、その姿は……

 

「じゃーん!トナカイです!」

 

着ぐるみだった。しかも、顔が出ている為に、何となくトナカイに食われかけている姿にも見えない事もない。

「似合いますか〜♪」

「うん……」

むしろ、似合い過ぎている。涙が出る程に。

「じゃあ、出発ですーーーーー♪」

ガーラガーラとソリを引きずりながら、出発していった。

 

 

ざわめく人々の群…。

酒場である。そして、ターゲットはビクトールとフリックだ。

「ムッ!まだ寝てませんね……プレゼント受取人失格ですよ!早寝早起きの良い子にしか上げられませんよ!」

「…………(汗)」

それ以前に、年齢制限があるのではないのだろうか…

「しょうがないですね…」

そうカナタは呟くと、どこから取り出したのか、漬け物石を構えた。そして、それを大きく振りかぶる…

 

「てやーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!」

 

いい気分なビクトールに、手加減なく投石した。

そして、ゴツッと鈍い音とともに、その巨体は床へと崩れ落ちていた…。

 

慌てたのは、フリックだ。何故だか原因不明で、突然ビクトールが倒れたのだから。

「おいっ!?ビクトール!?」

「フリックさんも寝てもらわないと困るんですよ」

「なっ!?カナタッ!?」

その声に驚愕し、慌てて声のした方に振り向くが、そこには少年の姿はなかった。思わず恐怖に凍り付くが、それも一瞬ですんだ。

 

「とーーーーー!トナカイパーンチ☆」

 

ベキイ!

いい音がして、フリックの首は妙な方向へとねじまがった。そして、慣性の法則に乗っ取って、青年の身体は床へと倒れる。

「フッ………………」

少年は満足そうな笑みを浮かべると、くるりと後ろを振り返った。

「カイルさーーーーーんv今の内です!さあ!プレゼントを置きましょう!!」

「ムチャクチャしないっ!(怒汗)」

あまりの事に止める暇もなかったカイルだ。

何はともかく、ビクトールに熊の着ぐるみ(プレゼント)を着せ、泡を噴いて倒れているフリックの頭の上に毛染め(青色、メッセージはそんなに青いのなら頭も染めましょう☆という事らしい)を放置した。

 

 

他にも色々と配り、一応はサンタクロースのような役目を無事に行っていた。

 

 

「いやー、まさか、燃やされるなんて思いませんでしたーーー。」

「カナタがブライトのしっぽ踏むから………(汗)」

「まあ、それはおいときまして、一応ラストはシュウですねー」

「シュウさんにも?」

普段あれ程嫌っている態度を見せるのに、プレゼントを渡すと言うのは……いい意味での驚きだった。

「あはははは。一応は渡しとかないといけないでしょー」

「………中身は?」

棒読みのセリフに、カイルがちょっと首を傾げて尋ねた。何か裏があるかもしれない…

「『育毛剤』と『胃薬』です。」

「そう……」

一応、皮肉を込めたプレゼントだが、怪しい物ではなかったと安心するカイルだ。

しかし、この少年はそこまで甘くなかった。

 

ホントは『脱毛剤』と『青酸●リ』ですケド。

 

果たして、シュウがどうなったかと言う事は誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

「カイルさん、」

「?」

空のソリを引っ張っていたカナタは、不意に動きを止め、カイルに声をかけた。

「最後になりましたけど、コレ…」

何やら茶色のポケットを探って何かを取り出す。

「はい☆クリスマスプレゼントです」

差し出した物は、長方形の小さな箱、もちろんラッピングを施した物だった。

「……ありがとう…」

嬉しそうな表情を見せると、カイルも正方形の箱を取り出した。

「僕も…」

「プレゼント交換ですねvvvしかもこの匂いはお手製ケーキですね!!」

ぱあ〜〜〜っと表情を輝かせた少年は、嬉しそうにプレゼントを渡し、そして受け取った。ついでに言うと、勢いあまって、キスまでしでかしたカナタだ。

 

その光景はとてもほのぼの(?)とした物だったのだが……

 

 

 

 

 

「カイルさんvプレゼンと開けて下さいv」

頬に朽ち付けられながらも、カイルは言われた通りラッピングを苦労しながら解いた。

中から出てきたのはペンダント(カナタ作)だった。金色の細い鎖にハート形の飾りがついていると言うずいぶんと乙女チックな物だった。

「毎日つけて下さいね♪」

にこ〜〜☆とうれしそうにいうカナタだ。カイルはそれに躊躇いがちに微笑みながら、そのペンダントの飾りをいじる。

そして、器用な事に、それはロケットになっていた。カイルは何の気無しに、それを開けようとしたのだが………

カチャッ…と音がし、ロケットが開く。

「―――――――…」

 

中にあったのは、カナタの写真(しかもポーズ付)がハート型に切り抜かれた物だった。

「ちゃんとつけて下さいねv」

「…………」

「あ、ここ押したら、声もでますよ☆」

『カイルさん!好きです!!』

「…………」

「これでいつでも、一緒ですね!」

「…………」

 

カイルはこの日、本当にどうすればいいのか、そして、本当に毎日つけるべきかでとてつもなく悩んだと言う………(結局結果 は不明)

 

 

何はともあれ、クリスマスの夜は深ける……。

 

 

15年後v